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82.ダック・シーズン

temporada de patosメキシコのアカデミー賞、11部門を受賞した作品。
監督・脚本は、フェルナンド・エインビッケ。

メキシコの映画というと、目にも華やかな極彩色の饗宴、というイメージが自分の中では勝手にあったのだが(フリーダ・カーロの絵のように・・・)、この作品は白黒映画。
そして、ほのぼのとしたテイストの、心温まる逸品だった。


14歳のフラマとモコは、親友同士。二人は、停電の時に、ピザを注文するが、30分以内に来なかったことを理由に、支払いを拒否する。
配達員のウリセスは、代金を支払うまでは動かないと、居間に居座る。
隣の家の女の子、リタも、この家にオーブンを借りに来る。

偶然居合わせた奇妙な4人の、それぞれのストーリーが、少しづつ、明らかになっていく・・・


少し変わったテイストの、だが、観た人の心の中に、ずっと生き続けるような、良質のシチュエーション・コメディ。


ダック・シーズン偶然そこに居合わせた4人の交流も、無駄、無理なく描かれているのが、とても好感を持つ。
こういうのって、実は、自然に仕上げるのがすごく難しいんじゃないかと思うのだ。


張られた伏線も、決して難しいものではなく、ほわっと温かくて、だんだん心地良くなってくる。

優しい散文の、バラバラだったカケラたちが、なんとはなしに集まっていびつな1つの形を作りだす。

マリファナ入りのブラウニーを4人が食べてトンだ後の、この幸せ感ったら、ない。
私的には、今年で一番暖かで幸せな気持ちになった映画だ。


:::::::この先、ネタバレあり::::::::::


フェルナンド・エインビッケ監督←フェルナンド・エインビッケ監督。


 


 


 


 


 


 


フラマにとっては、苦い思いを与える対象でしかなかった、離婚した両親が取り合っている、一つの絵。
よくよく見ると、飛べないはずのアヒルが空を飛んでいる、湖岸から眺めた絵だ。


duck seasonそれぞれ思いを抱えてはいても、このアヒルを心象風景に刻むだけで、4人にとってこの1日は特別になり、これからの彼らは気持ちが変わっていく・・・。
そんな思いがふわり残る。


なんだか、言葉にするのがもったいないような、そんな素敵なかわいい作品だ。


ちなみに。
映画が始まって二人が登場した時に使われていた音楽、これMolotovの曲で、アルバムタイトルは”Donde jugaran las ninas”だ。
’97年の作品なのだが、自分はこの1作で、随分ハマって、毎日毎日ヘビロテしてた、メキシコ産ハードコア。

ヒップホップ、ラウドロック、チカーノ・ロックをごった煮にした、メキシコのレッチリと言ってもいい。’98年のグラミー賞にノミネートされた。
“ボヘミアン・ラプソディー”のメキシコ・カバーバージョンの1曲、”-Rap-Soda Y Bohemia”なんかもあって、面白い。


これ以来、自分、メキシコ、スペインのハードコアを随分探し回りましたね。
なかでも、このMolotvは、とんでもなく元気が良くて、レッチリの好きな人なんかには、是非とも聞いて欲しい、オススメ作品。
レッチリの最近の元気ない感じじゃなくて、一番元気でカッコ良かった頃の、スペイン語、めっちゃカッコいい!んも〜、面白いったらない。
“Uno, dos, tre, Quatro!!”て叫びたくなっちゃうから♪

 

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コメント(16件)

  1. 今年はメキシコ映画の当たり年?! 『ダック・シーズン』『カクタス・ジャック』など。

     今年は、メキシコ映画の当たり年で、4本もの新作が劇場公開されます(しかもすべて違うタイプの作品) 。
     そこで、日本で公開されたメキシコ映画をリストアップしてみました。
     1984年以降としたのは、私がリアルタイムで観られた作品に限定したからで、これ以前の日本…

  2. りょも、先日はコメントりょもでした。やはり10月から忙しくなるため、なかなか記事がかけない状況になります。でもこれからは格闘技だけでなく個人的なことも含めて書きつづけていきたいと思うんでヨロシクです。グルメネタも書いていくよ。

  3. ダック・シーズン

    TEMPORADA DE PATOS 公開中なので控えめに! 日曜の午前11時。 ママに留守番を頼まれたフラマ(ダニエル・ミランダ)と、遊びに来ていた親友のモコ(ディエゴ・カターニョ)。 お昼のピザ&コーラのお金をママからもらい、チップスにコーラを用意して、TVゲームで対戦….

  4. >優しい散文の、バラバラだったカケラたちが、なんとはなしに集まっていびつな1つの形を作りだす
    子供たちだけなら大して珍しくない光景ですが、そこに混じった大人が一人。 それも会ったばかりのアカの他人(爆)
    不思議な一体感が出てくるところが、心地良いですね♪

  5. ジュンさんへ
    こんばんは!
    そうなんですかー。ブログも頑張りすぎると、いろいろ考えるところがあったりしますよね。
    自分の好きなことを、のんびりやるのがいいと思ったりしますね。
    グルメネタも、よろしくですー。
    寒くなると、ラーメンとかもいいですよね。

  6. 哀生龍さんへ
    ウリセスも、本気になって遊んでたところがいいですよね♪
    初キスを遂げたモコに比べて、オヤジと語るおいしくないフラマがかわいそう(笑)・・・なんて思っちゃいましたけど、フラマの抱えてるものはモコより大きかったですよね。
    ウリセスの、ヒヨコビジネスも、うまく行くといいなあ。
    でも、小さい子と本気で遊べるウリセスなので、ヒナを育てるのはうまいかもしれません。

  7. 『ダック・シーズン』

    すっとぼけたまったり感が愛おしい。
    メキシコのジャームッシュなお気に入りテイスト。
    停電が起こったとある日曜日、部屋で留守番をする14歳のフラマと遊びに来ていた親友のモコ、そこに同じアパートに住むリタ、ピザ宅配人のウリセスが加わって・・・。こういうタッチ…

  8. あひるバンザイ。
    ラブリーな映画でした。
    私もこの中にまじりたかったです。
    メキシコだからって、タコスを食べるわけじゃなくってピッツァとブラウニーなのねー。

  9. かえるさんへ
    かえるさんが「あひるバンザイ」言っていますうふ
    私も混ざりたかったです!
    他人と何かを共有する、って何かそれだけで幸せな気持ちになれるのね。・・・て思っちゃいました。
    そういうのがあるからコミニュケーションてやめられないんですよね。

  10. 【映画】ダック・シーズン

    “Temporada de Patos” 2004年メキシコ監督)フェルナンド・エインビッケ出演)ダニエル・ミランダ ディエゴ・カターニョ エンリケ・アレオーラ ダニー・ペレア満足度)★★★★☆ (満点は★5つです)シアター・イメージフォーラムにて メキシコ・シティーのアパー…

  11. 『ダックシーズン』

    「こういう映画って、好きな人にはたまらないんだろうな」
    —-おやおや、いきなりだね。
    「監督はメキシコのフェルナンド・エインビッケ監督。
    エンドクレジットで
    ジム・ジャームッシュと小津安二郎のふたりの監督に
    感謝が捧げられている。
    その一方で彼自身、
    この映画の…

  12. こんばんは、TBありがとうございました!
    いやー、この映画は大当たり。
    こういうシンプルな作りで想像力がガバーッと広がる作品、大好物です。
    煎じ詰めればマンションの一室でダラダラしてる4人を撮ってるだけの作品なんですけどね、うん、はまりました。

  13. Kenさんへ
    こんにちは!コメントありがとうございました。
    私も、この映画とっても大好きになりましたよ。
    ほのぼの・だらだらした映画ですが、すごく幸せ感があって。
    おかげでしばらく幸せな日々を過ごしてしまいました。

  14. ダック・シーズン

    ダック・シーズン

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    あらすじある日曜日の午前11時。フラマとモコは14歳、小さい頃からの大親友。フラマの母親は2人に留守番を頼み外出した。テレビゲームを楽しむ二人を邪魔するように隣に住む年上の女の子のリタが、オーブンを使わせて欲しいとやって来た・・・。感想メキシコのアカデ…

  16. ダック・シーズン

    こういうの大好き。地味だけどいい〜〜。。。。
    メキシコ映画はやっぱり来てるね。
    公式サイト
    ダック・シーズン@映画生活




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