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81.ラビナス

ラビナス雪山で遭難した移民が、仲間の肉を食べて生き残ったという、実際に起こったドナー・パス事件を元に描かれた作品。
監督は、アントニア・バード。ガイ・ピアース主演、ロバート・カーライルも見物だ。
音楽は、マイケル・ナイマン&Blurのデーモン・アルバーン(でも、近年ではhiphopミクスチャーもありの彼の別プロジェクト、Gollirazの方が、本家Blurより売れている。これって、どうなのか・・・)


1847年のメキシコ・アメリカ戦争中、ボイド大尉(ガイ・ピアース)は、死体の山で死んだ振りをして生き延び、“戦争の英雄”として帰還する。
帰還を祝う席で彼は肉を見て吐き、辺境のスペンサー砦に赴任させられる。司令官ハート大佐を始め砦の連中は一癖ある男ばかりだ。


そこへ凍傷で死にかけた男(ロバート・カーライル)が迷い込む。男は、一緒に旅していたガイドが雪で遭難した時、互いを殺し合ってその肉を食べ、自分はそこを逃げて来たと語る。


一行は生存者を救うため、洞窟に向かうが、その洞窟には、綺麗に肉のなくなった死体の骸骨が5体吊るされていて、つまり、生き残ったこの男こそが、全員を殺し食したのだ、と気づく。・・・


ネイティブ・アメリカンのウィンディゴ伝説では、人肉を食した者が、相手の魂を取り込んで、その強さを得るという。しかし、一度カニバリズムを行った者は、その渇きに耐えることが出来なくなり、死ぬまでそれを止めることが出来ないとか・・・。


極限状態に追い込まれた人間の行動を描いた問題作、というよりは、それを扱ったサスペンス・スリラー。


正直、あまり現実感はないけれども、それなりに見て面白い。
つまり、あまりに現実感がないので、罪悪感もこちらに伝わってこないというか。
なのでファンタジーとしてこの世界を楽しめてしまうんだよね。これって、いいのか悪いのか。


特に見所は、ロバート・カーライルのキレた演技で、追い込んでいく者としての怪演ぶりで魅せる。
ガイ・ピアースの、迷いながらも人格が変わっていく様や、葛藤の有様なんかも上手い。


::::::::::この先、ネタバレです::::::::::


 


 


 


 


 


結核患者でうつ病でもあったアイブス大佐(ロバート・カーライル)。斥候の人肉を食すことにより、力がみなぎり、重度の結核も。うつ病も克服して、ほぼ不老不死伝説のようだ。
ネイティブ・アメリカンのウィンディゴ伝説では確か、無駄な殺戮を行うものではなく、魂を尊ぶものだったと理解していたが、誤解する人も多そうで、そこがちょっと不安要素だったりもする。

日本の’89年の宮崎勤の事件なんかも頭によぎった。
近代社会では一番のタブーとされているこのカニバリズムを扱うには、正直あまり生々しくその是非を問うものより、この映画のように、完全なるファンタジーにされている方が、逆にいいとも思ったり。

 

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