80.ハッカビーズ
『ハ
カビーズ』なんて言う名前に釣られて、かわいらしいコメディかと思うと、大間違い。・・・と言うかそもそも、“コメディ”なんて謳っているのが全く違うし。
人にススメることは、決してできない、この作品。
だけど自分が嫌いか、と言われると、決して嫌いではない・・・
今回、ネタバレです。
ストーリー・・・
大手のスーパーマーケット、ハッカビーズのヤリ手営業マン、ブラッド(ジュード・ロウ)は、CMのモデル、ドーン(ナオミ・ワッツ)を恋人にし、人生は上々。
一方、アルバート(ジェイソン・シュワルツマン)は、このスーパーの新店舗反対ののろしを上げることに。
アルバートは、哲学探偵(ダスティン・ホフマン他)のところに行き、とあるアフリカ人と偶然出会ったが、このことは人生で、何らかの意味があるのかどうかを調査依頼する。
だが、哲学探偵のセラピー(“寝袋療法”?)を受けると、彼の心の中には、どうやら、ハッカビーズの営業マン、ブラッドに対する心理的葛藤を見出す。
哲学探偵の執拗な調査が進むにつれ、次第に彼らを信用できなくなったアルバートに対し、哲学探偵は、同じ哲学探偵のクライエントであるトミー(マーク・ウォルバーグ)を、彼の成長の助けとなると考えられるとして、彼らを“一対”の組にさせる。
トミーもブラッドと同じく、石油を使うことに対して大反対の、環境保護の考えの持ち主であった・・・
この作品は、おそらく、「訳が分からん!」と、怒ってしまう人がいそうだ。
展開を理論的に片付けようとする人には、ちんぷんかんぷんとしか思えないだろうと思う。
シンクロニシティ、という言葉を思い出した。
この世のある種の偶然を、何らかの運命的なものと位置づけ、そこから意味を捉えようとするなら・・・
このブラッドにとって、敵のように毛嫌いしていたブラッドとの、ある種の関連性を、彼の心の中で積極的に、それに対する受け入れ手段を、見つけることができたら。
・・・そうすることによって彼は、一つ成長できることとなったようだ。
それまで行えなかった、意識の中での、ブラッドと、手と手を繋ぐ連想。ブラッドが初めて絶望している姿を目にして、世界がぐるぐると回るように感じる映像は、なかなかに効果的だった。
そして、ブラッドにとっても、それはメビウスの輪のように連環している。
哲学探偵にとっても全て計算の上ではなくて、それは偶然を信じ、見出し見守る力のようなもの。
これを映画にするというのは、本当に可笑しいものだから、敢えてこういったテーマを選ぶことに、なんだか妙な可笑しさを感じる。
なので、これがコメディと思うなら、そこがコメディテイストであるように思う。
だけど、シンクロニシティって、言葉にすると何て陳腐なんでしょう。
出来ればこの感想は書きたくなかったぐらいで、なんと書き出すまでに、1週間もかかってしまいました。(そして実は、今まで書き溜めたやつを順番にUPしていただけでした。)
だけど、私はこういうものを信じる人間です。
非常にユング的な世界観だった(ブランケットの理論などは、ユングは言ってないが)。
関連記事
-
-
『沈黙』 日本人の沼的心性とは相容れないロジカルさ
結論から言うと、あまりのめり込める作品ではなかった。 『沈黙』をアメリ...
記事を読む
-
-
『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』 アメリカ亜流派のレイドバック主義
80年代の映画を見るなら、私は断然アメリカ映画派だ。 日本の80年代の...
記事を読む
-
-
『湯を沸かすほどの熱い愛』 生の精算と最後に残るもの
一言で言えば、宮沢りえの存在感があってこそ成立する作品かもしれない。こ...
記事を読む
-
-
『ジャクソン・ハイツ』 ワイズマン流“街と人”社会学研究
去年の東京国際映画祭でも評判の高かった、フレデリック・ワイズマンの3時...
記事を読む
-
-
『レッドタートル ある島の物語』 戻ってこないリアリティライン
心の繊細な部分にそっと触れるような、みずみずしさ。 この作品について語...
記事を読む
コメント(26件)
前の記事: デッドマンズチェストDS
次の記事: 夏バテ・・・
ハッカビーズ
公開中なので、控えめに。 環境保護運動をしている詩人のアルバート(ジェイソン・シュワルツマン)は、自分の身に起きた偶然や宇宙の謎を解くために、哲学探偵ベルナード(ダスティン・ホフマン)&ヴィヴィアン(リリー・トムソン)に調査を依頼。あからさまな尾行や盗聴….
>この世のある種の偶然を、何らかの運命的なものと位置づけ、そこから意味を捉えようとするなら・・・
この映画も、明確な意味を求めようとする人にとっては、ちんぷんかんぷんでもあり、いい議論のネタでもあり・・・(笑)
哀生龍は、ストレートにそのまんま“映画”として楽しんじゃいました。
“とてもイギリスのコメディのようなシニカルさがあるのに、アメリカ人の作ったアメリカ映画だ”と言う部分は、ちょっと意外な感じがして嬉しかったですよ!
哀生龍さんへ
おはようございます♪
そうですね、イギリス的なシニカルテイストが、私もすごく好きでした。
この作品を、哀生龍さんの感想の中で発見した時は、すごく嬉しかったです。
アルバート役のジェイソン・シュワルツマンが、良かったと思いました。
ちんぷんかんぷんに思われそうな作品が自分には一番合っているとらねこです。
ナオミ・ワッツさんが出ていたので映画館に行って観ましたが、変な感触の映画でしたね!
哲学とか心理学に疎い私でも、まあ、こういう映画も、あってもいいんじゃないかとは思いました。
ボーBJジングルズさんへ
ボーさん♪おはようございます。朝、早いですね(笑)
そうですね、変な感触の、オカシナ映画でした。
*^^*
でもなぜか私は好きなのですヨ。
「ハッカビーズ」
(c) 2004 Twentieth Century Fox. All rights reserved.
例によって、ほとんど予備知識を入れないまま観に行った。ただナオミ・ワッツ嬢が出ているからというだけで。
パスカルは「われ思う、ゆえにわれあり」と言
ハッカビーズ
【I Heart Huckabees】2005年/アメリカ
監督:デヴィッド・O・ラッセル
出演:ジュード・ロウ、ナオミ・ワッツ、ジェイソン・シュワルツマン、ダスティン・ホフマン
ビックリするほどおかしな作品でした。
例え
初めまして。
最近私もこの作品の感想をUPしまして
>人にススメることは、決してできない、この作品
というの言葉に妙にうなずいてしまい
思わずご挨拶を・・・と思った次第です。
友達に薦めるにもどんな内容で説明したらいいのか
簡単にまとまりません。
とにかく変な映画でしたね(^^;;;
ジュンさんへ
初めまして、こんばんは!TB&コメントありがとうございます。
そうですね、この映画、本当に説明しずらくて困ってしまいますよね。
なので、困ったあげくに、書くときに、訳の分からないギリギリのところを表現してしまおう、と思ったので、読んでいただいた方にもあまりよく分からないところがミソなんです(笑)
今後もどうぞ、よろしくお願いします。私も遊びに行かせていただきますね。
『ハッカビーズ』
真理なんてないのだ。自分探しは続くよ、続くー。
豪華キャストがコメディに体当たりっていうのは見どころ。
ポピュラーな笑いじゃないみたいだけど・・。
環境保護運動家のアルバートは、哲学探偵の所へに相談に行き・・・。ハッカビーズというスーパーマーケットを舞…
ばんー。
諷刺ネタなコメディも好きだし、ハチャメチャ系も好きなので、かなり好みな路線でした。
『銀河ヒッチハイクガイド』もおもしろかったし。
と、シンクロニシティって、大好きですよ。
好きとか嫌いの話じゃないか・・・。
信じているというか経験アリというかやっぱり好き。
『マグノリア』とか偶然の一致を描いた映画もスキスキ。
かえるさん
おはよーございます♪
そうですね、私も『マグノリア』好きですね。
人生って、よくわからない深さで偶然がシンクロしている、みたいなこの捉えどころのユルイ感じで紡いでゆくストーリーは、私も嫌いではないですね。
己を知らずして敵を知ることは出来ませんが、敵を知って己を知るというのも面白いと思ったり♪
「ハッカビーズ」
なにやら、ひらりんの知ってる俳優さんがいろいろ出てるみたい。
しかし、主演格がジュード・ロウ・・・っていうのが、チョい心配。
いつもどうもです。
この映画・・
とっても可笑しそうなDVDジャケットなのに・・・
実存主義?哲学?なんかが出来て・・・
とっても、ちんぷんかんぷんで笑えませんでした。
こういう映画の感想記事書くのって、ホント大変・・・でした。
ひらりんさんへ
コメントありがとうございます。
イザベル・ユベールの役は実存主義でしたね。
確かに私もあんまり笑えなかったです。
でもこんな風に、あまりないタイプの映画もたまにはいいな、と思ったりもしました★
よくこういうの作りましたね。
気づき《ハッカビーズ》
今日、奈良から東京へ戻ってきた。途中、奈良県庁で
「宅地建物取引主任者」の登録をおこなう。平成7年、
その時の上司に「資格手当20万円もらえるから、取って
みろ」とそそのかされ、お金欲しさに取った資格。仕事
に全く関係なかったのに。今考えるとほんとよく勉強し…
嫌いな路線ではありませんが思いっきり宣伝と予告に騙されたクチです(苦笑)
コメディタッチとコメディには大きな差があると思います
またもやTBが反映されないようです…
最近、はてなとライブドアには相性が悪いみたいです。
arudentな米さんへ
こんばんは!
これはコメディではないと私も思いますね。
映画館に観に行ってたら、私も怒っていたと思います。
宣伝の仕方が本当に苦し紛れで・・・
【洋画】ハッカビーズ
A+ 面白い
A ↑
A-
B+
B 普通
B-
C+
C ↓
C- つまらない
『評価』
B+
(演技3/演出3/脚本4/撮影3/音響3/音楽4/美術3/衣装3/配役3/魅力3/テンポ3/合計35)
『評論』
「ハッ
映画評「ハッカビーズ」
☆☆★(5点/10点満点中)
2004年アメリカ映画 監督デーヴィッド・O・ラッセル
ネタバレあり
TB有難うございます。
私は日本でも数少ない映画評書きです。映画関連ブログは多いですが、ピンからキリまで、殆どが感想ですね。純然たる映画評は映画の中に余り踏み込まないんです。
作者の狙いは何か主題は何かを把握し、それが如何に上手く映像化されているかを探るのが映画評であると思っているので、どうしてもそういう観点で映画を見ます。主題が高尚であっても作りが下手なら駄目映画です。
そういう角度で観ると余り褒める気にはなれない作品でした。コメディ風哲学映画なら、ルイス・ブニュエルの「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」「自由の幻想」などが素晴らしい映画です。
オカピーさんへ
コメントありがとうございました。
おっしゃるように、映画関連ブログは、ほとんどが映画感想であります。
・・・で、それが何かいけないでしょうか?
この作品は、確かに、作り方もあまり一般受けするやり方ではないとは思います。
私は、正直、これが哲学であるかどうかすら疑っています。
哲学探偵、というのも全く哲学とは思いませんでした。ほとんど、亜流派の心理カウンセリングのようでしたね。
出てくる実存主義者も、「この世界みな物事繋がっておらず、別個に存在し、意味は何も成さない」・・・なんかすごくデタラメな思想家ですよね。その癖、変に肉体を感じるとか、セックスに励んでみたりして。まるで変な宗教のよう。
でも、ここで表現されている、個々の存在が底流でその心理のうちに繋がりを持つ、という考え方は、フザケた演出の中でも、ここは一貫して表現出来ていたように私には思いました。
バッサリ評価するでなく、いいところを見出そう、としてみている方は、批評家でなくてもいると思います。
いえいえ、私が映画評の立場を取っているということを予め行った上で、論評を進めたのであり、一言も感想文が悪いとは言っておりませんよ。だから、<ピンからキリ>まで表現したわけです。ただ、感想文なのに批評だと思っている人が、プロの評論家の中にも多いのではないかと思っています。
とらねこさんの文章は映画研究文と思います。
それから、私は映画からあら捜しをしようなどと思ったことはないし、この映画もそうした観点では述べていませんよ。そのせいで私が一番信頼しているさるベテラン女性から「プロフェッサーは温厚ね」と言われてしまいました。
演出がふざけているとは思いません。かなり真面目な部類でしょう。ただ、自分が表現したいと思っていることが観客に十分伝わっているとは思わないのです。
オカピーさんへ
こんばんは!
再びコメントありがとうございます。
そうですね、オカピーさまからしてみたら、こうしてブログという媒体がどんどん一般化してきて、いろんな人が映画について、それこそ「プロ気取り」で盛んと論駁している姿について、何か一言言いたくなる気持ちは、理解できます。
でも、ブログというのは私、クチコミみたいなもので、見た映画について、あれは良かった、これは良かった、と一般の人が言うもののような気がしています。ネタバレも含めて。
ま、ちょっとズレますが一応。
この映画の表現したい部分というもの、そのものが一般的でなかった、と私は思っています。
ユングを読んでいる人なんかには、無理なくスンナリ理解できるものでしたよ、実はこのテーマは。
ハッカビーズ
コチラの「ハッカビーズ」は、巨大スーパーマーケット・チェーン”ハッカビーズ”を舞台に様々な個性的な面々の思惑が入り乱れるシュールでシニカルな群像コメディです。監督は、「スリー・キングス」のデイヴィッド・O・ラッセル監督。主演は、「ダージリン急行」のジェ…