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78.ウォーク・ザ・ライン 〜君に続く道〜

ウォーク・ザ・ラインカントリー・ロカビリー歌手であった実在の人物、ジョニー・キャッシュを描いた物語。


本年度アカデミー賞、主演女優賞をリース・ウィザースプーン(ジェーン・カーター役)が受賞。
主演男優賞をホアキン・フェニックス(ジョニー・キャッシュ役)がノミネート。
その他、ゴールデングローブ賞、主要3部門を受賞している。


ストーリー・・・
1944年、ジョニーの一家は貧しく、子供の頃から綿花栽培を手伝うなどしていかなければ、生計を立てることが出来なかった。働いてもなかなか暮らしの楽にならない生活に、父親は母に暴力を振るうこともあった。
そんな時、ジョニーの慰めは、優しい兄ジャックと、ラジオから聞こえてくるゴスペルやカントリーミュージックであった。
だが、良く出来た兄のジャックが事故死してしまったことから、家族間、特に父親とジョニーの親子の絆に、決定的なまでにダメージが与えられてしまう。・・・


リース・ウィザースプーン。彼女くらい、順調なキャリアを持つ女優さんは、本当に運命の女神の恩恵を得ているのだろう。
『キューティー・ブロンド』1作で、ものすごい出演料が跳ね上がり、2作目も大ヒット。常に出演料のバカ高い女優さんに、その名を連ねていると思ったら、今回のこの、ただ単に軽いコメディではない、シリアス物で、アカデミー女優賞もゲット。


これでまた、その順調さぶりは、今後何年も続くことに太鼓判を押されたようなものだし、・・・本当に同業者にとってみたら、羨ましさに悔し泣きするくらい、そのキャリアの安定ぶりなのではないかなあ。
どうも、写真で見ると単なるデコッパチに見えるんですけど・・・、これが映画では、本当に感じ良く、人の良さそうな、愛嬌のある顔をしていると思う。


で、今回の役は、ジューン・カーターという実在のカントリー歌手で、子供の頃からの歌手、ジョニー・キャッシュも会う前から彼女の事はファンだった。
映画の中でも、ジョニーのバンドが売れ始めて、ツアーをやり出した頃から、ジューン・カーター、それにジェリー・リー・ルイスとツアーに回っている。


このジューンとの恋愛話がこの映画の大部分を占めているのだ。
ジェーンは、奥さんのいるジョニーにキッパリと距離を置くが、彼らの友情は日に日に厚いものになってゆく。
ずっと友人として彼を支え続け、ジョニーは彼女にずっと長い間、片思いをして、押しまくる姿が、なんともいじましい。


:::::::::::この先、ネタバレを含みます:::::::::


 


 


 


 


 


ドラッグ漬けのジョニーは、しっかり者のジューンに比べて、ずっと子供のような、素直な人として描かれている。
人間としての生身の悩み・・・ーどうしてもうまくいかない父親との軋轢、ドラッグに溺れ続ける弱さ。


だが、何故か憎めない、ミュージシャンとしては才能に溢れる、人間としては欠点だらけの、一人の男。
こういったジョニーの、生身の一人の男の姿は、鮮やかに浮き彫りにされている。
そして、彼の作る本当の、心からの詩もまた、ジョニー・キャッシュというミュージシャンの深さを表していて、心に残る。

>一人の男が、一生に一度、作れるか作れないかは分からない、それぐらいの心のこもった、人の魂に触れる一曲・・・。そんなものに初めて、人は耳を傾ける。


これは彼が初めて会った、レコード会社の人間に言われた言葉だったのだが、彼は、その時そう言われたことを、頭のどこかで忘れなかったのだろう。

彼の作る歌詞は、刑務所にいる囚人達に、絶大なまでに支持された、というエピソードもまた素晴らしく良かった。
彼がドラッグの所持によりキャリアを失いそうになった時、一番辛い時期に、逆にその囚人達からのたくさんのファンレターにより彼の心の支えとなる。
実際にレコーディングされた、フォルサム刑務所でのライブは、なんとも言えない感動的なものだった。


それから、なかなか彼の気持ちを受け入れようとしない、ジューン・カーターもまた、とてもカッコいい女性だ。
彼に助力は惜しまない一方で、情に流されることなく、頑として彼を拒み続ける。
そのようなジューンだからこそ、本来は女好きであるジョニーもまた、少年時代のような純粋な愛情で、彼女に対する愛情が日々、大きくなってゆくのだ。

その彼女に対する気持ちのおかげで、弱さを克服することが難しい彼をして、一段、人間として大きくなってゆくことが出来るようになる。


一個の人間を描いたとしても、ミュージシャンを描いたとしても、佳作のこの作品。一見の価値がある。

 

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コメント(65件)

  1.  とらねこさん、こんにちは。遅ればせながら、やっとこの映画を観ました。TBさせていただきましたm(_ _)m
     ブロンドではない、ダーク・ブラウン・ヘアのリース・ウィザースプーン、歳相応に落ち着いている知的な女性に見えたので、「髪の色って、影響大きいんだな……」とどうでもよい点で感心したりなんかもしちゃいました。

  2. 香ん乃さんへ
    こんばんは〜♪(香ん乃さん・・こんにちはって・・・ま、いいか・笑)
    そうですね、リース・ウィザースプーン、この作品でダークブラウンの髪なんですけど、ちょっと地味に見えるんですよね。やっぱり、それだけ髪って、大きいんだナ、と思いますよネー☆
    もともとそんなに美人、ていうタイプじゃないですもんね。金髪だからこそ、というのも大いにあるのかしらん。
    TBありがとうございましたー。
    今から行きます〜♪

  3. ウォーク・ザ・ライン-君につづく道-

    この映画、ラッキーなことに飛行機の中で観たのです。
    なかなか面白かったのですが
    強行軍の旅だったので途中でどうしても眠気に勝てず。
    起きたら映画は当に終わっていて、目的地に着く所。
    というわけで、随分経ってからDVDで観ることに。f(^^;)
    1932年アーカンソ…

  4. シネマ日記 ウォーク・ザ・ライン

    この映画を観て、「better half」という言葉を思い出しました。
    神は1人の人間を2つに裂き、半分にしてこの世に誕生させました。それで、人はもう半分の自分を求め、妻とし夫と

  5. 映画館「ウォーク・ザ・ライン 君につづく道」

    実在の人物、ジョニー・キャッシュの物語。
    お話的には、スターの成功・転落・復活というお馴染みにパターンなのですがそれに加えて憧れの女性でもあったジューンとのエピソードがいつものサクセスストーリーとは違った味を出していました。2人の長い長い恋愛の道のり…

  6. TBありがとう。
    単なる、ミュージシャンの成功物語ではないですね。どちらも、美男美女ではないけれど、40回目のプロポーズが実り、観客もよかったなと、感情移入できるといったところでしょう。

  7. kimion2000さんへ
    こんばんは!コメントありがとうございます。
    40回目のプロポーズは、確かに、ドラマティックでしたね。
    そこまで待たされたら、男としてはよっぽど好きなんだなあ、と思いますよね。
    羨ましいです・・・そんなに愛されてみたいなあ。

  8. TBありがとう。
    本当にリースはでこっぱちですよねぇ。
    けど、温かみのある表情がいいんですね。
    美人じゃないのに、役作りがうまいんでしょうね。

  9. kimion2000さんへ
    おはようございます★
    戻って来てくださったのですね〜♪
    そして二度も“美人じゃない”発言(笑
    よっぽど好みじゃないのでしょうかw
    でも、『キューティ・ブロンド』から、確かアメリカの女優のドル箱スター、年収がバカ高い女優さんに名を連ねているんでしたっけ・・・
    恐るべし人気なんでしょうね。どこが人気の秘訣なんでしょうね。

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  11. とらねこさん、こんにちは!
    WOWOWで鑑賞したのでTBさせて下さいね♪
    私はジョニー・キャッシュという人も、彼の歌も全く知りませんでした。
    ホアキン&リースの歌は上手かったですね〜ビックリです。
    この映画を観て、ジョニー&ジューンってソウルメイトだったのかなぁ。。。と思いましたが、奥さんや子どもが可哀想にも思えました。
    難しいですよね。。。人生って。自ら選択したり、流されたりして、思わぬ方向へ進んでいく。
    ジョニーの場合は、紆余曲折あっても、信頼出来る相手と知り合えて人生を歩めたのだから羨ましい限りです。

  12. 由香さんへ
    こんばんは〜☆コメント&TB,ありがとうございました!
    私も、この映画で初めてジョニー・キャッシュの歌を知りましたヨ☆
    >この映画を観て、ジョニー&ジューンってソウルメイトだったのかなぁ。。。と思いましたが、奥さんや子どもが可哀想にも思えました
    そうなんですよね。初めの奥さんの立場で考えると、とてもかわいそうでした。
    なんか、複雑ですよね・・・。素直に、全員が感動できるか、と言われれば、そうではないのがこの作品でしたよね。
    でも、ジョニーもいろいろあったんだなあ、と思いますよね。

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    これ、実話だったんだ。
    全然知らず、まぁありがちな話だよな…と思ってたけど、
    エンドロールで実在の2人と知り、涙してしまいました。
    遅いって?(笑)
    それまで、ステージの上で、Yesというまで歌わない、
    なんてプロポーズするなんて、ずりぃ男だな、
    と思っ…

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