70.テシス
アレハンドロ・アメナーバル監督23歳の時の、デビュー作。
監督・脚本、音楽も携わっている。
スナフ・フィルムを扱った映画ではあるが、暴力的で残酷なシーンはないのに、怖さを味わえる佳作。
ストーリー・・・
芸術学院に通うアンヘラは、「映像における暴力について」と題する卒業論文のために、実際に暴力描写を扱った映像を探していた。彼女のために図書館の奥にあったビデオを見ていたフィゲロア教授は、事故死(ショック死と判断)してしまう。第一発見者となってしまった彼女は、思わず、その場にあったビデオを持ち去る。
暴力映像のコレクターであったオタク青年、チェマ(フェレ・マルチネス)と一緒に、この映像を見ると、暴力のあげくに実際に殺された、“スナフ・フィルム”だった。
だが、もっと重要なことに、この被害者が、この学院で2年前に失踪したままになっている、女生徒であったことに気づいてしまう。
危険な事実を知ってしまった彼女に、実際に魔の手が・・・。
普通のミステリーの展開であれば、犯人探しが主になるところにあって、あっと驚く間に怪しげな人物、もしや犯人か、と思われるボスコ(エデュアルド・ノリエガ)に接近する。だが、その後の展開が二転、三転する。
何と言うか・・展開は、シツコい。
当たり前の展開にはさせたくない、という、若いアメナーバルの気概が感じられる。
この後の作品、『オープン・ユア・アイズ』の方が私は好きだが、このデビュー作にも、この作品と共通するものが見て取れる。
練り上げられた『オープン・ユア・アイズ』ほどではないにしても。
映像における暴力と殺人、実際にそういったものに遭遇する機会が与えられたら、人は見たいと思うかもしれない。
映像作家であれば、そんなタブーがどこか頭の隅にあってしかるべきなのかも。
アメナーバル作品には、死を頭のどこかに捉えたものが多いようだ。
展開のさせ方が、少し物足りなく感じる部分は確かにあるかもしれない。
だが、丁寧に描き、且つ当たり前の展開を全然させないところが、私はこの監督の23歳の作品として、とても素晴らしいものだと思うんですよね。
暴力映像を集めるオタク青年、チェマ役のフェレ・マルチネスは、黒縁メガネをかけて、ガイコツのTシャツを着てたりしていて、いかにも「僕、変人です」と言った風貌で、笑ってしまう(笑)
だけど、顔のラインがすっきり美しくて、あれ?もしかして、これがフェレ?と言う感じ。ずっとこの映画の間中、そのままの風貌だった・・・。(ま、いいんだけどさ)
エデュアルド・ノリエガは、この映画ではやけに怪しくて、かっこいいー。
「ハンサムだから、信じちゃうんだろー」なんて、ヘソを曲げる、オタク青年のフェレ(笑)ちょっと、かわいい。
犯行に使われた撮影のシーンでは、『SAW』の1シーンに似ていて、あ、この映画を使ったのだナ!?なんて今思った(この作品は、’95年)。
2006/08/08 | 映画, :サスペンス・ミステリ
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コメント(13件)
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テシス 次に私が殺される
マスコミ情報学院に通うアンヘラ(アナ・トレント)は卒業論文のために、放映できなかったぐらい酷い内容の暴力的なビデオを入手したいと考え、指導教授に相談した。教授ならライブラリーから借り出してくれると考えたのだ。 それと同時に、彼女自身もチェマ(フェレ・マルテ…
>練り上げられた『オープン・ユア・アイズ』ほどではないにしても
上手にまとめられている所は“オープン・ユア・アイズ”の方が完成度は高いですが、“テシス”には荒っぽいけど勢いが感じられて好きです♪
>あれ?もしかして、これがフェレ?
海外作品も色々見ていますが、哀生龍の好きなキャラクターと言う意味では、未だにチェマを超えるフェレには出会っていません!!
と言うことで、フェレ的にもアメナーバル監督作品的にも、一番好きな作品で思い入れも強いです(笑)
>アメナーバル作品には、死を頭のどこかに捉えたものが多いようだ。
アメナーバル監督の死生観は、なかなか興味深いですね。
スペイン映画は、キリスト教の影響を受けているせいかもしれませんが、独特の死生観が描かれている作品が多いように感じます。 特にホラー系は・・・
哀生龍さんへ
コメントありがとうございます!
>未だにチェマを超えるフェレには出会っていません!!
ちょっとちょっと、ちょっと待ってください!タンマタンマ。
『バッド・エヂュケーション』のフェレは??
忘れて・・・いらっしゃらないのでしょうね、きっと
私には、あちらはこのフェレより、200倍カッコイイと思いますが、・・・
哀生龍さん’ズ チョイスでは、チェマが勝ってしまうのでしょうね
どわぁぁぁぁぁ
すいません。壊れてしまいまして。
気を取り直して。
アメナーバルは、こういったミステリーにしても、それをただのミステリーに終わらせない魅力があるのは、こうしたアメナーバルの死生観が効いていたり、深い掘り下げから来ている作家性だと思います。
その時、その時の、彼の全てを、作品の中で昇華されている所以なのでしょうね。
>忘れて・・・いらっしゃらないのでしょうね、きっと
>私には、あちらはこのフェレより、200倍カッコイイと思いますが、・・・
もちろん忘れてはおりませんよ(笑)
“フェレがカッコイイ”かどうかではなく、“フェレが演じた”登場人物としての“キャラクター”で比較した場合、チェマほどフェレの持ち味が生かされているうえに面白く可愛い男はいません♪
もちろん“哀生龍さん’ズ チョイス”では・・・ね(笑)
どれぐらい好きかと言うと、いつもは映画1本に対し1作しか書かないショート・ショートなのですが、チェマは2作も書いてしまいまったぐらいです♪
テシス
この映画について内容には全くというほど期待していませんでした。エドゥアルド・ノリエガが見たかっただけ(笑)しかし、かなり拾いもんだったかもしれません。最後の最後まで、誰が犯人かがわからず、こいつも怪しい、あいつも怪しいと、もう、誰も信じられない状態になり….
とらねこさん、こんにちは!
こんなところでフェレ談義が読めるなんてうれしいです♪
哀生龍さんのチェマ好きは、有名ですよね(笑)
ちなみにさち’sチョイスでは、地味目ではありますが、ダークネスのフェレが一番好きです♪
BEのエンリケについては、あんなカッコいいフェレはフェレじゃな〜い、なんて未だに思っています。
>『SAW』
そっか!確かに似たシーンありましたねー!
全然気づきませんでした。
Tesis
テシス・次に私が殺される
監督:アレハンドロ・アメナーバル
出演:アナ・トレント、フェレ・マルティネス、エドゥアルド・ノリエガ
1996年 スペイン
「オープン・ユア・アイズ」で知られ、「アザーズ」を撮ったアレハンドロ・アメナーバルの23歳での長編デビュー作…
哀生龍さんへ
>“フェレがカッコイイ”かどうかではなく、“フェレが演じた”登場人物としての“キャラクター”
あははっ。了解しました!
>哀生龍さんのチェマ好きは、有名ですよね(笑)
↑さちさんに教えていただきました(爆)
そして哀生龍さんよりショートショートにお呼ばれされているような(爆)
今日は『レイヤーケーキ』を見て来たのですが、この記事上げたら見に行きますね〜
さちさんへ
こんばんは!初めまして!TB&コメント、ありがとうございました!
フェレのつながりでコメントをいただけて、嬉しい私です
『ダークネス』まだ未見なんです。すみません
それは是非見なければ!
私はあまり一人の俳優さんを追うことがないので、こういった風にどなたかに教えていただくと、よーし!見なきゃ!!と言う気持ちになります。
見たらまた遊びに言って是非ともまたお話がしたいです
「テシス/次に私が殺される」
テシス
「テシス/次に私が殺される」 ★★★☆
TESIS、SNUFF (1996年スペイン)
監督:アレハンドロ・アメナーバル
脚本:アレハンドロ・アメナーバル、マテオ・ヒル
キャスト:アナ・トレント、フェレ・マルテむ
とらねこさん、こんにちは(^○^)
この映画、誰も見てないよなぁ〜っと思ってたら、とらねこさんがレビューを!!嬉しいな。
>だけど、顔のラインがすっきり美しくて、あれ?もしかして、これがフェレ?と言う感じ。ずっとこの映画の間中、そのままの風貌だった・・・(ま、いいんだけどさ)
ここに爆笑。
私も後半、衣装・ヘア変えがあるんでは?と思っていたけど、変わらずでした。
私は、この俳優さんは、アルモドバルの映画で、ガエル君といい仲だったあの人・・・って知って、ぶっとびました。
>「ハンサムだから、信じちゃうんだろー」なんて、ヘソを曲げる、オタク青年のフェレ(笑)ちょっと、かわいい。
私はルックスといい、やや好みでした。
PS アバターのレビューも拝見させていただいたのですが、恥ずかしながら難しくて(私ってば、中学の国語の読解問題も解けないようなヤツなんです・・)
でも、とらねこさんが、3Dを歓迎しているわけではないってことはやんわり伝わって来て、ちょっと嬉しくなりました。私は別に3Dじゃなくても普通のやつで良いかな・・って思っているので。
「テシス 次に私が殺される」感想
「海を飛ぶ夢」や「アザーズ」のアレハンドロ・アメナーバルの初監督作品でもあり、「みつばちのささやき」のアナちゃんことアナ・トレントの..
latifaさんへ
こんにちは〜♪コメントありがとうございました!
わーー恥ずかしい!この記事、ブログをやり始めの頃に書いたものだったんですよ・・・。まさかこんなマイナーな作品で、誰かに反応してもらえるとは思わなかったので、コメントをいただいて、とっても嬉しく感じたのを覚えています(照)
>私は、この俳優さんは、アルモドバルの映画で、ガエル君といい仲だったあの人・・・って知って、ぶっとびました。
なるほどー。私は、フェレ・マルチネスは、その『バッド・エデュケーション』を見に行った時に、友達(男)が、「フェレが、フェレが・・・」と言っていて、「誰だっけソレ?」なんて言ってしまったのですが、『トーク・トゥ・ハー』にも『オープン・ユア・アイズ』にも出てたじゃーん!もう!と怒られましたw
バッド・エデュケーションの時のフェレ・マルチネスはそれはもう、カッコいいですもんね〜
この役のルックスがやや好み・・?w
ん?もしかしてlatifaさん、こういうタイプがお好きだったんですか?
おー、それは知らなかった!
そうですね、私3D映画に関しては、今後増えてゆくだろうけど、特に歓迎はしない、という感じです。
アバターの記事、分かりずらくてごめんなさい><