68.サロメ
原題:Salome
監督・脚本: カルロス・サウラ
製作総指揮: サウラ・メドラーノ、アントニオ・サウラ
撮影: ホセ・ルイ・ロペス・リナレス、テオ・デルガード
音楽: トマティート、ロケ・バーニョス
キャスト: アイーダ・ゴメス、ペレ・アルキリュエ、パコ・モラ、カルメン・ビリェナ、ハビエル・トカ
アイーダ・ゴメス主演、カルロス・サウラ監督によるこの作品『サロメ』は、半分はまるでノンフィクションであるかのような舞台裏を覗かせるつくりになっていて驚愕する。
聖書に出てくる人物を(『ヨハネの福音書』)モチーフにした現代の古典、O.ワイルドの原作の戯作『サロメ』と合わせて鑑賞。
この作品の監督、ペレ・アルキュリエには、フラメンコ3部作と呼ばれる作品群があり、(『血の洗礼』、『カルメン』、『タンゴ』)その中の二つ、『カルメン』と『タンゴ』はアカデミー賞外国語作品映画賞にもそれぞれノミネートされている。
今作品、『サロメ』は、フラメンコの楽劇で、その内の前半半分は、まるでノンフィクションのような作り、後半部分では舞台全てを見せる、という大胆な作り。“監督”役まで登場し、この監督の顔を知らない者にはすっかり騙されてしまう。
前半では、『サロメ』の舞台を作るにあたり、舞台裏のシーンを、演出する。
監督が振付師に指示を与えるところ、衣装をどのようなものにするか話し合っているところ、舞台装置を話し合っているところ、等等・・・。
ダンサー達が暗い照明の中、音もなくシンプルに振付の練習をするところなどはとても迫力があって、いよいよこれから始まるという期待を高めさせる。
そもそもこの『サロメ』の話は、おそらくはキリスト教の国々では、当たり前のように有名な話なのかもしれないが・・・
私は以前より気になっていたが、詳しくは知らなかったので、ワイルドの戯作『サロメ』を先に読んでみた。
左は、ワイルドの名を一気に下落させた原因の一つである、オードリー・ビアズリーによる奇怪な幻想画の一つ(素敵じゃない?)
ストーリーは・・・。
王ヘロデの心を、ここ最近、一心に掴む異父の子サロメ。
ヘロデの后、ヘロデアの連れ子でもある。
サロメは王に、目の前で踊りを踊るように要請される。「代わりに何でも望みを叶える」と言われ、踊った後に、自分に振り向いてくれなかったヨカナーン(バプテスマのヨハネ)の首を所望する。
ヨカナーンは、預言者であり、現王妃ヘロデアについて知られざる過去を語るため、井戸に幽閉されていたのであった。
王は、そのため、ヨカナーンを殺すのは背徳行為であると思い、ためらうが、人々の眼前で誓ってしまったため、仕方なしに遂行することに。
自分の恋が破れたために、王の誘惑を利用して、その神をも恐れぬ行為をする、サロメであった・・・。
情熱が悲劇を呼ぶ、短くはあるが心に残る、物語だ。まるで神話の中の1挿話のように、力強い。この物語1つで、O・ワイルドの名を世界に知らしめた作品だ。
この『サロメ』の内容を、この映画では、全て舞台のシーンとして描かれる。音楽のみでセリフはなく、フラメンコの踊りのみで表現されるのだ。
とても力強く、フラメンコの踊りが、とても現代的なものに感じられる演出が、見事だ。
前半部分で紹介されていた、サロメの衣装が、特殊なシルクを用いてそれを7層に重ね着している。
ユダヤの王、ヘロデのたっての願いでもって熱望された、絶世の美女、サロメの踊り。ヘロデの欲情を煽る、重要なシーンで、この舞台の一番の見所でもある。
一体どのように、それが表現されるのだろうと、とても楽しみであった。
7枚の衣装を、次々に脱ぎながら踊るサロメは、鼻血モノであった。音楽も、次第次第に加速してゆく・・・。
嫌でも盛り上がる、見ている私達。
ダンスの素晴らしさもさることながら、演出もとても良かったように思う。
最後は、・・・見てのお楽しみだが、まぁ一瞬ですけど。
首を切られたヨカナーンが、舞台でどの様に表現されるかと思ったが、おそらく古典的な用いられ方なのであろう。
しかし、それらも「こうでなければ、舞台でない」という手法。
前半の、実験的な擬似フィクションがとても効を奏していて、まるで眼の前に舞台を見るような気にさえさせた。
やはり、本物を見るのはすごい迫力があると思うが、こんな風に、間近でダンスが見られる映画はいいなぁ。とても素敵でした。
2006/08/04 | :音楽・ミュージカル・ダンス カルロス・サウラ
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コメント(5件)
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こんばんは、遊びにきました。てくのです。
その映画は見過ごしちゃったヤツですわ。
映画見た気分になれちゃいましたww
リュック・ボンディ演出のR・シュトラウスのオペラ「サロメ」もオススメですよ。楽劇サロメの決定版はコレです。やっぱり脱ぎます(笑)難なのはオペラはレンタルビデオ屋には置いてなぁい!有名な舞台なんで運が良ければ近所の図書館で借りれます。詳しくはアマゾンで<http://www.amazon.co.jp/gp/product/B0000CD85H/503-0498976-5911109?v=glance&n=561958>
ほぼ毎日制作背景までレポートされた画像付きの長文を書くバイタリティはすごいです。しかも凄いわかりやすい!NINが一人バンドでだったとは知りませんでした(遅っ!)。そういうつながりでマンソンが一緒にPV出演してたんですね。勉強不足です(;^v^)これからもお勉強させてもらいま〜す。
てくのさんへ
てくのさん、コメントありがとうございます!!
誰も見ない映画を、一生懸命記事書いているので(爆)、コメントもらえてとても嬉しい私です
なんだか文がどんどん長文化してく傾向にあり、自分の文は読みづらいかなと、ちょっと考えていたところだったので・・・。
シュトラウスのオペラをご存知のてくのさんには、この『サロメ』はどう映るのか興味津々であります。
私もこれ、映画で見たかったのですが、誰も一緒に行ってもらえず・・・。
てくのさん、私と「気が合うかも」って言ってもらえて、とても嬉しいです。私もそう思ってました!
サロメ
*あらすじCINEMA TOPICS ONLINE
2002年/スペイン/86分
脚本・演出・監督:カルロス・サウラ
振付:ホセ・アントニオ、アイーダ・ゴメス
音楽:ロケ・バーニョス
特別協力:トマティート
出演:アイーダ・ゴメス/ペレ・アルキリュエ/パコ・モラ/…
こんばんは〜!!
緊張感が途切れることなく続く映画でしたよね。フラメンコでどうサロメを描くのかと興味津々で見始めて、サロメのクライマックスの踊りの所で気分は最高潮。映画館で観たかった〜。
rubiconeさんへ
こんばんは★コメントありがとうございます。
この作品、なかなか面白かったですよね。
ダンスで全てを表現するのって、難しいかなと思いきや、この手法もなかなかでした。
ダンスが好きな人には必見の映画でしたよね♪
私も、こういう映画って、映画館で見たい方なんですよ〜。