67.リブ・フリーキー!ダイ・フリーキー!
パンク・スプラッター・パペット・ミュージカル、というフレコミの映画(だけど、ソレって、何だろう?・笑)。
シャロン・テート殺人事件をパペットで映画化した、かなりグロ指数の高いキテレツ・オゲレツ作品。
チャーリー役の声優に、グリーン・デイのB.J.アームストロング、製作にランシドのティムが。そして、シャロン・テート役の声優には“オズボーン家の毒舌娘”ケリー・オズボーンが!
その他、blink182、Good Charlotteと来たら、もうパンク好きには、たまらないラインナップになってるだろう。
客のファッションを見ても、いかにも音楽ファンがたくさんいるような気がした。
去年のグリーン・デイの『American Idiot』のバカ売れぶりには、目をみはるものがあった。もう“彼らは今いずこ状態”の、過去売れたパンク・バンドになりつつあるかと思いきや、突然の完全復活。時流にも乗って、もはや一段とレベルアップを遂げた彼ら。
去年は、嫌というほどヘビロテされて、出す曲出す曲、大ヒットの嵐だった。
それが、いつのまにかこんな映画撮ってたのね。しかも、有無を言わさぬパンクの大御所、ランシドと・・・。
それから、彼らと1世代違う、これまた大人気のblink182と、Good Charlotte(←このアルバム達は、えらくカッコいいー)。
もう彼らも、人気が完全に定着しているから、音楽ファンであれば知らない人はいないかな、と思われる、強い人気を誇るパンク・バンド。
そんな訳で、なんと言ってもラインナップが、超豪華なんですね。
内容はスーパー・グロテスクなんだけど、逆に、このグロテスクさを、強調しつつも、キッチュなアンプリファイドされた世界なだけに、実写の生生しい世界観とは、一味も二味も違っている。
この人形のフィギュアが発売されたら、その筋のファンには、いかにも熱狂的にカルト人気を呼び起こしそうな、そんなビジュアルでもあるところが、この映画の、げに恐ろしいところ。
シャロン・テート殺人事件と言えば、私には、すぐさまNINE INCH NAILSを思い出してしまうんですね。
NINE INCH NAILSのトレント・レズナーが(と、言ってもNINE INCHは彼一人のプロジェクトな訳ですが)、アルバム『DOWNWARD SPIRAL』をレコーディングしたのが、この事件の張本人、チャールズ・マンソンの、自宅の地下室を改造して作った、レコーディング室。うわー、イカレてる!ってことで、この事件を知りました。
ところがこのアルバム、大ヒットしました。私も、ひたすら聞きまくりましたね。
その数年後には、彼自身のレコード会社から、第一弾アーティスト、マリリン・マンソンがデビューする訳です。
マリリン・マンソンの名前を初めて聞いた時は、うまいな〜、と思いました。
マリリン・モンローと、チャールズ・マンソン。“アメリカの光と影”って、訳ですか、と。
シャロン・テート殺人事件も、’69年、-と言えば、ウッド・ストック・フェスティバルが開かれ、ビートルズがアビー・ロードとホワイト・アルバムを発表し、ツェッペリンがファースト・アルバムを出したその年。
ヒッピー・カルチャー開花の、そのまっ只中に起きた、ヒッピー・カルト教団、チャールズ・マンソンを筆頭とする、マンソン・ファミリーによる、この血も凍るような惨殺事件。
当時のラブ・アンド・ピースな人達を、恐怖のドン底に叩き落としただろうと思われます。
そんな事件をこの、血みどろパペット・ムービーでやってしまっているのです、これはもう、悪趣味極まりない。
これが好き、なんて言ったら、友達失いそうです。
シャロン・テートを初めとする、マンソンファミリーの標的になった、中産階級。・・・これを、この映画がどう表現しているかと言えば・・・。
これまた、マンソンファミリーより更に醜悪極まりない、アンチ・エコロジストでエゴイストな、ハリウッド女優とそのゲイ友達として、毒舌極まりない描写がなされているのです。
もう、絶句。
乱交パーティーの最中に行われた、その殺人事件の、グロテスクで劣悪極まりないそのギャグ・テイストは、カラッと明るく描かれているだけに、逆にもう、言葉を失います。
ちなみに、この映画においてシャロン・テイトの苗字が、TがHに、つまりヘイト、HATEにされてます。
そのために、マンソンもMがHに、ハンソンにされている。この作品でシャロン・テイトがハンパなくブッタ切られているのかは、実際にだけではなく、象徴的な意味においても。
現在でも、ハリウッド・ミューズを初めとして、パリス・ヒルトンなんかが、「セレブ、セレブ」と、毎日のゴシップを賑わす昨今においての、この映画。
4ヶ月くらい前に、PINKが、シングル「STUPID GIRL」の中で、パリスや、ブリトニーなんかのセレブを、気持ちいいほどブッタ切った1曲があって、その時は思わず私、その怖いもの知らず振りに、喝采を送ってしまいましたが。
この作品も、実はそこら辺を意図されているようなのですね。
それって、まさに、パンクの精神が宿った、作品と言えるかも。
あ。音楽じゃなくて、精神がね、反抗精神、パンクの基本だなと。
2006/08/03 | :アニメ・CG等, :カルト・アバンギャルド シャロン・テート殺人事件, チャールズ・マンソン, マンソン・ファミリー
関連記事
-
-
『レッドタートル ある島の物語』 戻ってこないリアリティライン
心の繊細な部分にそっと触れるような、みずみずしさ。 この作品について語...
記事を読む
-
-
『君の名は。』 スレ違いと絆の深さとピュアピュア度合いについて。
今夏の目玉映画として期待されていた訳でもないだろうに、残暑の中、なんと...
記事を読む
-
-
『ファインディング・ドリー』 冒険も人生、帰ってくるも人生
『ファインディング・ニモ』は当時大好きな作品だったけれど、最近はピクサ...
記事を読む
-
-
『パディントン』 心優しき子ぐまの冒険
大人も童心に戻って楽しめるファミリームービーで大満足。めちゃめちゃ笑っ...
記事を読む
-
-
イジー・トルンカ『真夏の夜の夢』 陶酔!夏の夢まぼろし
イジー・トルンカの長編「真夏の夜の夢」 (1959年/73分) 今回初...
記事を読む
コメント(8件)
前の記事: ※9.『ドランのキャデラック』
次の記事: 68.サロメ
リブ・フリーキー!ダイ・フリーキー!(2006/アメリカ/ジョン・ローカー)
【シアターN渋谷】
69年に起きたチャールズ・マンソン・ファミリーによる女優シャロン・テート惨殺事件をパンク・ミュージカル仕立てのパペット・アニメで再現したスプラッタ・ムービー。
3069年、地球は荒廃し、飢えと渇きに苦しむ人々は救世主を待ち望んでいた。そんな…
リブ・フリーキー!ダイ・フリーキー!
【映画的カリスマ指数】★★★☆☆ グロッキー!トリッキー!フリーキー!!
とらねこさん、こんばんわ。
TB&コメントありがとうございます!!
あんなに毛嫌いしていたシアターNに行ってきたのね!頑張ったねえ・・・。
とらねこさんの記事で初めて知ったことが多いです。なんせ、睦月はこの事件のこと・・・何一つ知らないんですもの。
でもマンソンファミリーの名を聞いたとき、マリリン・マンソンとは関係があるのかなあ・・と少し気になってました。やっぱ・・・関連はあったのね。
ちなみに、マンソンは万年勃起男だったらしいです。この作品を観たときのトークショーで話してました。だからあんなに下エピソードが派手なのかな?と・・・(笑)
睦月さんへ
おー!睦月さんはトークショーにも行かれたんですね。私の時は、ポスターを先着20名に配ってました。知ってれば超早めに行ったのに・・・残念です!!
私は、記事で、余計な事ばっか書いてしまいました。この映画に出てくる音楽そのものは一つもパンクはないのに・・・なんか誤解を招きそうな書き方だったかと、考えています・・・
チャールズ・マンソン、年中勃起男だったとは、知りませんでした。教えてくださり有難うございます。
なんだかこの映画、エグイのですがすごく良かったですね。ストレートにそう言うと趣味を疑われそうですが。
じゃあ今度はこちらの部屋に♪
とらねこさん、洋楽詳しいんですね。
なるほど、人間椅子に辿り着くワケだ(笑)。
人間椅子のライヴって(話変わってますが)、
単純に“人間椅子が好き”ってファンと、
洋楽が好きでそれで人間椅子の評判を聞いて、
って層とに二分されるとこがありますけど、
それがライヴ終盤にはチャンと混ざり合っている、
あの独特の一体感がたまりません。
アルバムはイカ天で出したヤツから持ってます。
彼らを見てるとその高い音楽性以上に、
続けるって凄いことだなぁ〜と感心するんです。
いい感じに“なまけ者”だからなんですかね?
とくに鈴木氏(笑)。
こちらこそ、仲良くさせてくださいネ。
♪空には虹 俺には夢 なまけ者の人生バンザイ
稀代の“クリミナル・グループ”をパペット・ミュージカルに! 『リブ・フリーキー!ダイ・フリーキー!』
もう必ずといっていいぐらいに、
10代を中心とした青少年による猟奇的な殺人事件が起きると、
世間が狭くて物を知らない識者風情がやれ教育に悪いだ悪趣味だと偉そーにのたまっては、
ここぞとばかりに残酷な内容のTVゲームやスプラッター映画を槍玉に挙げて、
とく…
栗本東樹さんへ
〜♪朝には唄 夜には恋 怠け者の 人生ドンマイ
椅子ファンは最高ですね!!
あちらにコメント返しで書いていた、『人間椅子倶楽部』の歌詞をもじって“今じゃ、ホステルマニア〜”これにも、大ウケしましたよ!!!!
私は実はイカ天時代は知らなかったんですよ。
『羅生門』から入りましたが、私のピンポイントにツボでしたね☆
歌詞の文学性というのは確かにありますが、それだけで聞くには、少し音楽が重いと思うので、栗さまのようなタイプは珍しく自分には感じちゃいます〜♪
でもでも、文学趣味と猟奇趣味の合わさり具合は、なんだか他のブロガーさんより、栗さまが一番自分に近いって気がします!!
で、で、今度って、人間椅子って、いつぐらいにライブやるんでしょうね?
ご存知でしたら、教えてくださいましね〜♪
リブ・フリーキー!ダイ・フリーキー!
ぇえ〜っ!?
残酷描写よりもSEX描写のほうがすごいですよ。ノーカット、大写しw
リブ・フリーキー!ダイ・フリーキー! デラックス・エディションposted with amazlet on 07.06.01デックスエンタテインメント (2006/08