58.乱歩地獄
江戸川乱歩原作の短編が一挙4作品詰め込み〜!!
1.火星の運河/監督・竹内スグル
初めの10分程度、いきなり無声で始まるのに驚く。内面世界を無重力で描いていて、とても良かった。この作品は、短いものであるのだが、私には一番印象に残る作品だった。赤を強烈に描かれると、見ているものには落ち着かない感じがあるのだが、この作品ではとても効果的で、強烈だった。
2.鏡地獄/監督・実相寺昭雄
何故急にこの作品では、名探偵・明智小五郎や小林少年(少年というより青年だ)が出てくるのだろう?原作には出てこないんですが・・・。
何も江戸川乱歩だからと、無理やり探偵の明智を出す必要がないのに・・・。(-_-;)ふぅぅ〜
この作品、原作がとても完成度の高い作品であるだけに、ちょっとガッカリだ・・・・。1人称で描かれた作品なので、それを作品にするには難しい思うが、この“改変”がどうも・・・。
でも、成宮寛貴は、とても魅惑的。ジゴロっぽい風貌で、妖艶に演じていた。こんなにイイ男が目の前にいたら、それこそ女はコロッと騙されそうで、吐いて捨てる程モテちゃうんだろうな。それ故、女に飽きて自分の美に囚われてしまってもおかしくない(笑)
3.芋虫/監督・佐藤寿保
実は私は、江戸川乱歩はほぼ全作品読んでいる。それこそ、貪り尽くすかのように読んだ。乱歩作品は、全てが美の狂乱世界というわけではなく、割と気が抜けたかのように完成度の高い、とは言えない作品が多々ある。
しか〜し!!!
この作品、私は一番好きな作品だ。乱歩の数ある作品の中でも、最高にイカレていて、ヘドがでそうなくらい、倒錯世界を存分に味わわせてくれる、究極の耽美・妄想爆走世界。
見たくない人間の異常性愛が、文面から、行間から、異常なまでに匂い立ってくる、・・・とにかくクラクラするほど、イカレた世界なのだ。
それなのに、これまた悲しいかな、とんでもない改変が。
ちょっとこれだけは見逃せないので、ストーリーを述べさせていただく。
名誉の負傷で手足がなくなり、辛うじて生還した須永中尉。そしてこのもはや人間とも思えない、生きた肉の塊と化した姿の廃兵を、3年という長い月日の中、介護を続ける、貞淑な妻として、“今の世の美談”として知られる須永の妻・時子。
初めこそ確かに、彼女の犠牲的精神やら稀なる貞節を讃えられたにしても、時と共にだんだん忘れられてゆき、元彼の部下であった、鷲尾老少尉の離れで世話になり、ヒッソリと世間から隔絶された生活を続けている。
だが実際は、貞淑な妻であった時子は今や、身の毛もよだつ情欲の鬼が心に巣くっていて、哀れな片輪者の亭主を、-かつては忠勇なる国家の干城であった人物を、彼女の情欲を満たすケダモノのように、一種の道具、肉ゴマのように、扱っているのであった・・・。
・・・と、強烈な話の始まり出しから、さらに、人の心の奥深くに潜む病的なモノの実体を、これでもかと暴き出すそ、のヘドロまみれな醜さ、哀しさ・・・
そんな作品であったのだ。
::::::::::::この先、完全ネタバレ::::::::::
なので、この作品はそのままに描くだけで、十分オエっと来るほどの倒錯世界だ。
それなのに、さらによりをかけて、原作に改変を加え、時子が須永の手足を切った・・・とする必要は全然感じない。
その上、歩けない、這うしかできない芋虫のような肉ゴマー須永を、母屋に住む鷲尾家の青年(松田龍平)が、わざわざ鏡を見せたり、古井戸のところまで引きずって行く、・・・という設定は、余計なものとしか感じなかった。
この監督は、きちんと原作を理解しているのかすら、疑問に思う。
・・・では、原作では、どんな終わり方をするか。
それは、せっかくの楽しみを奪ってしまうと思うので、もしよろしければ、是非原作を読むことをオススメする。
25pというとても短い短編の中に、これほどまでに変態エッセンスが凝縮されているのに、皆様は驚かれることと思う。
4.蟲/監督・カネコアツシこの一番最後の作品の監督は、私はよく知らないのだが、漫画家であり、初監督作品なのだそうだ。
このカラフルポップな色使い!!
異常なまでに人との距離感を取り、清潔で神経衰弱であった青年が、最後、蛆と汚濁にまみれるまでの異常性愛・妄想世界。これはこれでとても満足できるものであったように思う。
それから、音楽が、ゆらゆら帝国。
フジロックに続けて出演したり、今ではもはやカルト人気のロックバンドとは言えないかもしれないが、まだまだおそらく知らない人も多いであろう、キモカッコ悪いルックスの、サイケで極上テクを誇る、素晴らしいバンド。
私はかなり好きだ。
ルックスをケナして申し訳ない。だが、アフロと言うよりオバサンパーマの、ギターボーカル、坂本は、いつもぴったりしたVネックのトップスに、乳首が立っていて。パンツはいつも、「いつの時代?」のベルボトム(パンタロン、とか言うべきなのか?)。
ベースの亀川千代(千代ちゃ〜ん)は、さらさらロングヘアーの姫子カット(横髪は、ザックリ姫子切り)。いつも寡黙で、何を考えているのやら(笑)
こんな3ピースなので、ドラム(柴田)は普通に見えるという(爆)
・・・まあそんな、とにかく素敵過ぎるサイケなロックバンド。
ライブは異常なまでに恍惚・スペイシーで、宇宙の彼方まで連れて行かれる。
その上いつもオールスタンディングなライブハウスで演るので、“ライブハウス以外はライブと認めない”私には、これまた最上級に賛辞を捧げるべきバンド。
天才って言葉は、普通ちょっと軽々しく使わないが、彼らこそ天才だと思う私。
余計な話が長くなりすみません。
とにかく、ゆら帝を音楽に使う、ってのが素晴らしかった。
あの妙に二次元的なセットも、実はちゃんと理由があったし。
乱歩の世界観はとてもエキゾチックで映像化しやすいと思うので、これに懲りずにどんどんやって欲しいと思う私であります。
とりあえずもう一度「蟲」が読みたくなった。
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2006/07/16 | 映画, :文芸・歴史・時代物
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コメント(22件)
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乱歩地獄
ぼっ、ぼっ、ぼくらは浅野忠信団♪
こんにちは。
いま気づきましたが
山上たつひこの「光る風」は、
この「芋虫」が元ネタだったんですね。
確かに、これはひどい改変ですね。
『乱歩地獄』
—-この映画のキャスティングはスゴいね。
舞台挨拶付きだったんだって?
「うん。カメラ・クルーも入って会場は超満員。
浅野忠信、成宮寛貴、松田龍平が並ぶんだから圧巻だ。
あっ、もちろん監督も挨拶に立ったよ(笑)」
—-江戸川乱歩って、ときどき映画化されてるよね…
えいさんへ
えいさんこんにちは!!
コメント有難うございます
山上たつひこの「光る風」・・・??
すっすみません!勉強不足ゆえ分かりません
えいさん、「デビット・リンチやクローネンバーグで乱歩作品を見てみたい」って、それすごくいいですね
にゃ〜是非実現して欲しい〜!!
乱歩地獄
【映画的カリスマ指数】★★★★☆
不快感の美学。
こんにちわ!
この作品は、初日で鑑賞しました。んで、この時期に猛烈な勢いで乱歩を読みまくって・・・若干頭がおかしくなっていたような気がします(苦)
やっぱ・・・いいよねえ、乱歩ワールド。大好きだっ!!
おいらとしては、鏡地獄の成宮くんが素晴らしかったなあ・・と思う。あの物語が一番分かりやすかったし・・・(笑)
芋虫も最高。気色悪さ満点・・・。
ちなみに、おいらは身長170センチなのに、足は23.5くらいしかないようです・・・(泣)26センチには遠く及ばない・・・(笑)
睦月さんへ私も昔から乱歩好きです。あの舌を喰らう瞬間なんか、たまりまへん・・・おっと、ヨダレが私は163cmで足は24cm・・・もし24で行けそうなら、靴送りますが、いかがでしょうか?一度も履いてないですよ。
睦月さんも乱歩好きなんて、最大級に嬉しいなぁ
浅草辺りを歩いていると、乱歩を思い出す瞬間があります。
成宮くんはカッコいいですにゃぁ
あれ、結構足小さいですね
『乱歩地獄』
江戸川乱歩の小説を初めて読んだのは大学生の頃だったでしょうか?
本屋でバイトをしていたにも関わらずあまり小説を読むことがなかった僕を乱歩の世界へ導いてくれたのは大槻ケンヂのエッセイでした。どの本だったかは忘れた(でも大体の本で乱歩はネタにされているの…
こんばんは!
良いですよね、乱歩!エログロで!
『蟲』の映画化では極彩色でポップな色調が全然合っていないような気がしましたが、実際映画を観ると違和感が無かったことに驚かされました。
妄想の世界はいつだって美しいって事なのでしょうか?
そうそう乱歩といえば石井輝男大先生の『江戸川乱歩全集・恐怖奇形人間』はとても素晴らしいですよ!
多分東京なら年に一度くらいは観る機会が有ると思います。是非!
蔵六さんへ
ぃやあ、蔵六さんの記事は濃いなあ(爆)うひ
ちなみに、私のスケジュール帳には、「蔵六オススメコーナー」(敬称略ですまん)というもんがあって、もちろん↑この作品がトップに並んでいます。ところが近所のレンタル店では、悲しいかなあまり良い品揃えではないのです。なのでわざわざどっか大きい所まで行かねばならない様子。大きい店ではいろいろ見たいのが目白押しだったりして・・・
と、言う訳で、せっかくのオススメは少しづつ消化して行こうと思っています。それもまた一興ですしね。
この作品は、人によっていろいろと感想が違って面白いですよね。(でも実は私も「火星の運河」がちょっと思い出せないのです・笑)
「蟲」が好きな気持ちは良く分かります。
やはり乱歩は自分のイメージが強すぎるのか、文体の美しさが強烈なのか、どうも難しくていかんね。
初めまして。お邪魔させて頂きまっす。
江戸川乱歩の『芋虫』私も大好きな作品なので、読んでて嬉しく成りました!
とらねこさんの文を読んで『乱歩地獄』がますます観たく成ったです(観よう観ようと思って観れてない)。
折角なのでTBもさせて頂きますね☆
舞さんへ
コメントありがとうございます!!
「芋虫」好きとは嬉しいですね。
ただ、この作品では最後のユルスが成立しなくなっていますので、それがとても原作ファンには残念ですね。
おそらくこの映画の全ての作品では、原作そのままにやるのでなく、何かしらの改ざんを加えて自分らしく語るというのがポイントだったようです。
それが見えてしまったので、映画館で見る気の起きなかった私です・・・。
この世には不思議なことなど何もないのだよ
58.乱歩地獄
ワンバンコ!(←臭っ!)
おおっと、アブネェ危ねぇ!
単館上映時チェックしていたものの、
見逃してしまい、又もやスルーするトコでした。
まぁ白髭、デリケートなんで
当然といえば当然なんですが、
初めて本を読んで吐き気をモヨオシタ「芋虫」・・・
繊細なワタクシは果たして耐えられるのでしょうか?
不安ながら、カネコアツシの漫画好きとしては
とらねこさんの気合の入ったレビウもある事だし
ゼヒ、見なきゃ!
白髭さんへ画たろ王。
あはは!!そうですよね、芋虫結構、変態ワールド振り切ってますよね・・・あれが好きってカミングアウトしちゃったなんて、この作品を見なかったらきっと言わなかったに違いありません、ワタクシ。
もう・・・お恥ずかしい
でも、最後は結構、泣かせるつくりに原作はなっていたと思うんです・・・。
カネコアツシご存知ですか、さすがは漫
初監督ながら、頑張っていたとは思います・・・でも、内容的に白髭さんが胸キュン★な作品ではないかもしれんのがチョット不安であります。
乱歩地獄(DVD)
世にも美しいスウィートな地獄
CAST:浅野忠信/成宮寛貴/松田龍平 他
■日本産 135分
江戸川乱歩は小学生の頃、怪人二十面相シリーズは読んだ覚えがある。
内容はさっぱり忘れたけど。
この映画は、エロくてグロくてよくわからなかった。
凡人のワタシにゃ〜、わからな…
乱歩地獄:僕はこの世とは共存できません シネセゾン渋谷
江戸川乱歩の『火星の運河』、『鏡地獄』、『芋虫』、『蟲』の4本を映画化。 『火星の運河』 男(浅野忠信)が裸で荒野を歩いている。ずっと歩いていくと沼があった。 沼に写った自分の姿は・・・ 『鏡地獄』 お茶会で女が変死した。明智小五郎(浅野忠信)が出動して捜….
「乱歩地獄」
乱歩地獄 デラックス版
「乱歩地獄」 ★★★
(2005年日本)
原作:江戸川乱歩
衣裳: 北村道子
エンディングテーマ:ゆらゆら帝国 『ボーンズ』
⇒ 公式サイトへ
⇒ 乱歩地獄@映画生活
原作からはかなり変わってましたね。
でも「火星の運河」で悪夢の世界に浅野が入っていくので、「蟲」で覚醒するまで浅野をエピソードの脇に置いて悪夢の当事者としての役割をさせたようにも思います。
鬼畜な愛情の形というテーマだけは共通してますが、乱歩ファンには受け悪いでしょうね〜
自分も「蟲」が最高でした。白ブリ一丁で白昼堂々すいませんでしたっ!ってなかなかできないっすw
『乱歩地獄』★・・・・
これこそ感じ方は十人十色「乱歩地獄」公式サイト制作年度/国;’05/日本 ジャンル;サスペンス 配給;アルバトロス・フィルム 上映時間;90分監督;竹内スグル/実相寺昭雄/佐藤寿保/カネコアツシ出演;浅野忠信/成宮寛貴/松田龍平/大森南朋/緒川たまき観賞劇場:サン…
linさんへ
こんばんは★
そうですね、最初に火星の運河で覗き込む描写でしたが、それをうまく嵌めこんで全体像に繋げたlinさんはさすがです。
途中で嫌気が差してしまいました・・・。
自分は、最近昔の作品『黒蜥蜴』深作作品だとか、『盲獣』増村保造作品だとかを見ましたが。この’60〜’70年代作品の完成度の高さに舌鼓を打ちました。
なので、この作品に関しては、残るものはない、というのが正直な感想ですねー。
乱歩地獄
ものすご??く邦画な気分だったので
2本いきましたヽ(´ー`)ノ
1本目はあまりのグロさに途中で停止したままの■
殺し屋1
そんで2本目が
乱歩地獄
いやァ??予想はしてましたが
どっちも、かなりのエロ・グロの変態っぷりで
おなか一杯になりました…(…