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53.理想の女

理想の女スカーレット・ヨハンソンとヘレン・ハント、世代は異なるけれども美しい二人の女優による、人間と恋愛心理を深く掘り下げた、なかなかの佳作だった。

とても良くできた作品で驚いたのだが、見て初めて知りました・・・原作は、オスカー・ワイルド「ウィンダミア夫人の扇」。
大好きなスカーレット・ヨハンソンが出ていて、なおかつ、久しぶりのヘレン・ハント・・・彼女も、とても好きな女優だったのに、「なんだかドロドロしてそうで嫌だ」と友達に断られて、私までついつい見に行かなかった・・・ううう、後悔。
オスカー・ワイルド原作と知っていれば、絶対見にいったのに・・・。

とは言え、原作と違って、舞台は‘30年のイタリア、アマルフィ島に移されている。
ストーリーは・・・
ここにアメリカからバカンスにやって来た、ウィンダミア夫妻、メグ(スカーレット・ヨハンソン)とロバート(マーク・アンバース)。
まだ恋愛結婚して1年の彼らは、仲が良く、お互いがお互いを信用しきっている。
メグは21歳、ロバートは35歳。メグは純粋で、“何も知らない”女だ。
一方、ロバートは、熟女のアーリン未亡人(ヘレン・ハント)に出会う。彼女は、今までに数々の不倫を経験し、いつも結婚している男ばかり選ぶ、悪名高い女。おかげで社交界にあって、いつも噂の的である。言ってみれば正反対の、“何でも知っている女”であった・・・。

正直、途中はその内容にウンザリ、ゲンナリした。ロバートは簡単にメグを裏切り、アーリン夫人にお金を払って、関係を続ける。人々の噂の的になっているのに、・・・知らないのは本人のウィンダミア夫人だけだ。

だが、この二人を取り囲む周りの、脇役の人々を、様々に描き分けていて、好感が持てた。
双眼鏡でもって、常に周囲を観察し、常に人の噂ばかりしているプリムデール夫人なんかは、どこの世界にもかならずいる、下世話な井戸端会議の好きなオバチャンだ。
それから、金持ちで、いろいろな経験を今まで積んで来た、タヴィ(トム・ウィルキンソン)。老年において初めて出会ったアーリン夫人を、「理想の女」と言い、彼女の過去や、悪い噂を知りつつも、真剣に求婚する姿は、胸を打つ。

また、深い人間観察から得られる、恋愛や結婚に関する、金言がいっぱいで、それらがとても興味深く、ストーリー運びにゲンナリしながらも、なんとか見ることができ、救われた。
その上、面白かったのでついつい色々とメモってしまった(笑

「女が女を疑うのは、男のせいだ」と言われ、男は、
「男も女を信用しない。女も女を信用しない。つまり、誰も女を信用しない。
まるで宗教戦争だ」と切り返す。

「聖人に過去あり。罪人に未来あり」
これなんかは、私とても気に入りましたね。

「悪女は厄介、聖女は退屈。」

「涙は醜い女の言い訳。賢い女はショッピングに行くのよ」
・・・って、ま、それは、結婚相手が金持ちの場合に限りますが。

「この世に悲惨なことは2つだけ。
夢を見ることと、夢が叶うことだ。」
「でも、後者の方がもっと悲惨だ。
・・・夢が叶うと、あとあと苦労する。」
これなんかは、本当にそのとおりと思いますね。
ま、ただ単に、逆説を述べているだけですけれどもね。人生の真実ですな。

そのような中で、悪名高きアーリン夫人の結婚感は、次のようなものである。
「結婚は、日の差さない部屋のようなものよ。
初めは広く感じた部屋は、次第に、狭く感じられるようになっていく・・・
そして気がつくと、息さえつけないほどになってしまう。」

このセリフを撮るとき、彼女の背中だけを映すのが良かったですね。
いつも、嘲弄するかのように余裕たっぷりの笑顔で、アップを映すのに、このセリフを言うとき、急に、彼女の背中を突如映す。
そこで、彼女の真実が垣間見れたように、見ているものには感じるのだ。

そのあと、物語が進むにつれて、アーリン夫人、彼女の背中と、ウィンダミア夫人、彼女の背中を、まるで変わるがわる、映すかのように、カメラが追ってゆく、パーティ場面。これには実は、秘密があるわけである・・・

この彼らの人間関係が、実は意外に入り組んだものになっていて、物語展開を飽きさせないものとしている。
この、ただ単に、悪女と思われたアーリン夫人の、意外な真実。

ラスト、扇子というアイテムで、話が切り替わってゆくところは、本当にウマい作りになっていて、圧巻だ。

また、ここにきてようやく、ヘレン・ハントの面目躍如である。
さすがヘレン・ハント!!ウィンダミア夫人、スカーレット・ヨハンソンがロケットを手にするシーンで、ヘレン・ハントの表情、“間”の取り方は、もう、素晴らしいとしか言い様がない!!!
最後の飛行機のシーンも、トム・ウィルキンソン、ヘレン・ハントは、本当に良かった。

ウンザリすると思ってみていた前半を、見事に裏切ってくれた。

ところで・・・。
余計なお世話だけど・・・、なんだか、ヘレン・ハント、久しぶりに見たら、・・・だいぶ、老けた?初め、エッ!!と言うほどの老けぶりで、ビックリ。
キャスリーン・キーナーが出てきたのかと思っちゃった・・・。
今をときめくスカーレット・ヨハンソンが、大理石のようなキメ細かい肌で、完璧なまでに美しいから、余計・・・。
でも、やはり最後を見て、さすがは!!と、納得できて、ただ単に悪女ではなかったから、納得。

だけどね。ちょっと、納得いかないことが一点だけあって。
::::::この先、完全ネタバレ。これから見る人は、決して読まないで!!!:::::::::

 

 

 

 

アーリン夫人、娘と分かっていて、その夫と、体の関係になったの!?それはまた一体、ナゼ!?
もう、ビックリなんですけど。イタリアの金持ちの載っている雑誌を見て、その隣にスカーレットが載っているのを見て、次のターゲットを決めた訳でしょ。
なんでなんで???
自分の娘の相手が、正しいのか、そうでないかを、判断するため???
だとしても、自分の体を使って、試すこたぁないでしょ!!

そんなお母さん、自分を生んですぐ捨てたお母さん、いくらなんでも、最悪!!
プロットは良く出来ているし、最後感動しちゃったけど、それがどうしても納得いきません。

原作を読んで、確かめようっと。

 

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コメント(19件)

  1. 理想の女(ひと)

     結婚は神様が創ったジョークである!粋な金持ちじいちゃん三人衆の戯言が面白いぞ!

  2. 良い女・・・誰が一番理想の女性なのか、見る人の判断に委ねるところがいいですよね。
    とらねこさんの唇も良い女の条件にピタリと・・・・

  3. kossyさんへ
    うひゃひゃ〜、やたっ!げっちゅ〜

  4. 『理想の女』

    ——これまた時代色豊かな映画だね。
    原作がオスカー・ワイルドなんだって?
    彼って確か「唯美主義者」と言われてるよね。
    「うん。彼のセリフに
    『私は生きた時代の芸術と文化において象徴的な存在だった』
    と言うのがある」
    ——かっこいいニャあ。
    「実際にオスカー・…

  5. 理想の女(ひと)

    全てを知り尽くした女と、何も知らない女

  6. TB,コメントありがとうございました。
    あら・・・
    「完全ネタバレ」のくだり。
    わたしは、「如何にもそう見えるけれど、実はそうじゃなかったのよ」、ということだと思ってたんだけど。
    原作は如何なんでしょう。
    そこまでの悪女だったら本当に嫌な人間だわ…

  7. 悠雅さんへ
    そうなんですよね。
    まず、アーリン夫人が「いつから」知っていたのか、・・・“ウィンダミアが彼女の素性を調べて初めて分かった、「何しろ20年も会っていない娘だったので」”と来るのかなぁ・・・と、思ったのですが、それもありませんでしたよね。
    映画では描かれないままでしたので、そこのところがよく分からないままでした。
    一人しかいない娘の幸せを邪魔しに来たのかと、思うと、いくらヘレン・ハントが素晴らしくても映画の印象が違ってしまいますよね。・・・

  8. 理想の女

    19世紀ヴィクトリア朝時代の風俗喜劇『ウィンダミア卿夫人の扇』の舞台を、ロンドンの薄暗い室内から、1930年代の南イタリアの海岸リゾート地へ移して先ずは成功。
    邦題『理想の女』は最初、同じオスカー・ワイルド戯曲つながりで、『アイデアル・ハズバンド Ideal Hus…

  9. 『理想の女(ひと)』を観たよ。

    シェアブログminiに投稿
    ※↑は〔ブログルポ〕へ投稿するために必要な表記です。
     酔いましょうよ、麗しくも慎ましい、矛盾したこの世界に。
    『理想の女(ひと)』
    原題:”A GOOD WOMAN”
    2004年・イギリス&スペイダi

  10.  とらねこさん、こんにちは! 今更ですが観たので、トラバさせていただきました。
    >見て初めて知りました・・・
    >原作は、>オスカー・ワイルド
    >「ウィンダミア夫人の扇」。
     私も観たあとに知ったんですよ……。なんで原作をもっと表に出した宣伝をしなかったんだろう、と不思議になりました。
     撮影時のヘレン・ハントの歳になっても、ああいう背中あきドレスを余裕しゃくしゃくで着られる自分でいたい! なんて思いました。目標だけは大きく(^^;)

  11. 香ん乃さんへ
    こんにちは〜☆コメント&TBありがとうございました!
    そうですね、原作を前面に押し出してなかったような・・・というか、自分ほとんど情報収集しないので、こういう時に困る、っていう奴なんですが
    ヘレン・ハント好きなんですよ〜♪
    爽やかで素敵な人だと思うんですが、こういう嫌なタイプの女性を演じても、嫌味にならないところが素敵っ。

  12. あのスカーレット・ヨハンソンが。。。。

    今日、スカーレット・ヨハンソン主演の「理想の女」を見たよ
    スカーレットが清き正しき新妻を演じててびっくりした!!
    てっきり愛人役かとばかり思ってたよ。
    スカーレットの化粧と衣装が抑え目でかわいかった。
    ヘレ??/tb.ph

  13. 理想の女(ひと)

    理想の女(ひと)
    監督:マイク・バーカー
    出演:スカーレット・ヨハンソン、ヘレン・ハント、トム・ウィルキンソン、スティーヴン・キャンベル・ムーア、マーク・アンバース、ミレーナ・ヴコティッチ…
    「いい女は2種類

  14. 映画「理想の女(ひと)」

    原題:A Good Woman
    同一原作で「ウィンダミア夫人の扇」が、1927年に公開されているという・・今回の舞台は1930年代の南イタリア避暑地ながら、現代にしても十分耐え得る・・・
    ロバート・ウィンダミア(マーク・アンバース)とメグ(スカーレット・ヨハンソン)…

  15. 「理想の女(ひと)」★★★★☆

    ’04年製作 主演スカーレット・ヨハンセン、ヘレン・ハント 共演トム・ウィルキンソン、スティーブン・キャンベル=モア、マーク・アンバース他によるオスカー・ワイルド原作「ウィンダミア卿夫人の扇」の映画化。 1930年代、イタリア。富豪のアメリカ人ロバ…

  16. とらねこさ〜ん、こんばんは!これ面白かったです!オスカー・ワイルドは、「理想の結婚」も、とっても面白かったので、これも期待しつつ観たら、やっぱり!ラストも素敵で、ジーンときちゃいました。
    >金言がいっぱい
    >「聖人に過去あり。罪人に未来あり」
    わたしも、そう思いました。特にこの一文が印象的!やっぱり、文豪の書くセリフは違いますね〜。
    このヘレン・ハントはたしかに老けてみえました(笑)でも、素敵でした。後半は彼女が主役でしたよね!ところで、ロバートとは関係持ってないですよね!?おそらく、母親とバラされたくなければ、お金を渡せ、と言ったのだと思います。いずれにせよ、ダメダメな母親ですが(笑)でも、途中で改心したのではないかと・・・素敵な話でした。実は原作持ってるので、読んでみようと思います!

  17. JOJOさんへ
    こんばんは〜♪コメントTBありがとうございます。
    JOJoさんもご覧になりましたか〜!そして、私の記事を探し出してくださり、とっても嬉しいです〜☆
    そうですね、ヘレン・ハントって、素敵な女性ですよね!私大好きなんですよ。
    私も、この後、原作読みました。そしたら、ここで感じてた謎が全て解けましたよ。
    そしてそれは、JOJOさんの読み通りです。
    ただ、映画だと証拠がないんですよね。
    原作の方が、私はずっと好きです!素晴らしい原作でしたよ!期待しちゃってください。
    オスカー・ワイルドの人生を調べてみると、文豪という名より、もっと奇妙な人なんです。そこが私は好きなんですよ!

  18. 理想の女(ひと)

    いい女は2種類しかいない。全てを知り尽くした女と何も知らない女。

  19. 理想の女(ひと)

     『いい女は2種類しかいない。 全てを知り尽くした女と 何もしらない女。』
     コチラの「理想の女(ひと)」は、オスカー・ワイルドの「ウィンダミア卿夫人の扇」を映画化したラブ・サスペンスです。主演は、スカーレット・ヨハンソンとヘレン・ミレン。美しい2人が、….




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