51.ヴェニスの商人
新解釈「ヴェニスの商人」と言うより、「シャイロックの悲劇」と名づけるべき、シェイクスピアの意図を無視した作品。
でも、正直、仕方ないのかな・・・とは思う。
時代により、文化のあり方や人々の嗜好性も変わるものであり、なおかつ人種差別を思いっきり前面に押し出しちゃってるから・・・。
そういったものを無視して、この作品を本来のシェイクスピアの時代に演出されたように、そのままの形で映画化する事は出来なかったというのは理解できる。
シャイロックを“受難の人”という解釈で、舞台が行われてきたのはしばしばある事だった。
人々の意識の違いはさて置き、セリフを省いたり、シーンを大幅に少なくするなら、せめてタイトルも変えて欲しかった・・・いや、これ私のブログなんだから、好きな事を言いますよ。:::::::::この先、完全ネタバレ注意報:::::::::::私、当初友達に、「この映画、一体何が言いたかったの?原作読んでないんだけど、カットされてる部分があるのかな・・・ポーシャとかいう女はなんであんなに腹黒くて、底意地が悪いの?」・・・なんて言われてビックリしました。
聡明で美しくて、何百年も人々に愛された、あの知的で素晴らしい女性を、何と言いました?
・・・でもこのDVDを見て、納得することしきり・・・。
当たり前の話なのですが、これはそもそも悲劇、ではないし・・・薄いブルーの色調が印象に残り、逆に人種差別を前面に押し出したユダヤ人の帽子の真っ赤な赤を、嫌でも印象付けることとなっている。
高い金利で高利貸しを商売とすることが、その時代に置いては悪とされたことは、現代ではあまり理解ができないのは、私も同じだし、・・・仕方がないことではある。
その上、人種差別、と来たら、もう救いようがないというか、・・・平安時代の文化風土、好みの女性像の変遷・・・そんなカワイイものではないし。
だけどこの作品を“喜劇”に描いた、楽しいダイアローグの、良いところ全て総じて、削除されているのは、もうどうにも悲しくて・・・バッサーニオ、ポーシャ、ネリッサを初めとする、恋人達の楽しい会話、バッサーニオがポーシャに出会った時、逆にポーシャがバッサーニオに出会って恋に落ちるところ。
若く美しい恋人達ーバッサーニオとポーシャ、ロレンゾとネリッサ、グラティアーノとジェシカ・・・達の、楽しいやりとりが・・・
この作品を楽しいものとする、全てのシーンが、減らされたり、抑えられたり、変な演出にされてしまっていて・・・。
ショックで、悲しい気持ちでいっぱいになってしまった・・・。
ほとんど、底意地が悪いとしか言えないポーシャに、度々ガックシ。
最後の、ポーシャとネリッサ、女性側の、軽くて、少しだけ真摯なおふざけも、
「ひえええ〜、こわっ!!」って言うくらい、寒すぎる感じを与える。
あんなんじゃ・・・結婚生活、お先まっ暗でしょう。
そして、当然ながら・・・この作品では、アル・パチーノが、主役なんですね。
普段から卑屈な精神丸出しで、腰をかがめ、裁判そシーンでは、泣いたり叫んだり、崩れそうなまでに膝をつき、浅ましく懇願するはずの場面で、パチーノのシャイロックは、堂々たる断固な姿勢で、喋る、喋る、大声で権利を主張する。
少しもへりくだった意地汚さは見られない。
アントーニオの苦難も、さらっとカットされちゃって、まるでこの作品の全くの脇役状態に、吹けば飛びそうな、印象の薄いジェレミー・アイアンズ。そういう演出だから、仕方がないけど・・・。
色男バッサーニオ(ジョセフ・ファインズ)も、同様に、薄い印象しかない。(カッコイイのは彼のルックスだから当然なんだけど・・・やっぱ、ロンゲの方が似合ってる)
アル・パチーノが大好きなので、殺意は覚えなかったけど。
とりあえず、もう一度「リチャードを探して」が見たくなりました、ワタクシ。
・・・う〜ん、むむむ・・・ご、ごめんなさい。私真面目に語れないです、もうこれ以上。
とりあえず、私の教授に、これをどう思うか、恐ろしいけど聞いてみたいもんだ・・・
2006/07/04 | 映画, :文芸・歴史・時代物
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こんばんは!とらねこさん♪
私も去年観ましたよ!「ヴェニスの商人」!!なんと言うか…母に無理やり連れられて(笑)アル・パチーノの演技は素晴らしかったですよね。
みた後、後味が悪かったんですが、とらねこさんのおかげで、やっと理由が分かりました。ポーシャが計算高い女に見えちゃうからなんですネ、きっと。もっと、愛する人を助けるためにひた向きって感じにすれば、まだ、後味はよかったのかも。下手したら、最後はシャーロックいじめ?
Pamyさんへ
こんばんは!
私は、アル・パチーノが好きなんですが、この作品に関しては、私はちょっとモヤモヤが残る感じなんですよ。
納得できない気持ちでいっぱいです。
正直、んんん〜と言う感じでしたねぇ
文句たらたらです
ヴェニスの商人
民話「舌切りスズメ」はこの『ヴェニスの商人』がオリジナルだったのか!?などとつまらぬことが頭の中を駆け巡る・・・
『ヴェニスの商人』
—-これってアル・パチーノがシャイロックを演じて話題になってるんだよね。
「うん。彼はシェイクスピアには造詣が深いからね。
自分で『リチャードを探して』という映画も監督しているくらいだ。
そうそう。実はぼくも子供の頃、シェイクスピアが好きで、
『尊敬する人は…
「ヴェニスの商人」
ひらりんのフェイバリット俳優のひとり・・アル・パチーノ主演。
原作はもちろん、シェイクスピア。
タイトルは知ってるけど、どんなお話かは知りませーーーん。
文学少年じゃなかったので・・・
英題は「THE MERCHANT OF VENICE」。
2004年製作の文学系ドラマ、1…
「ヴェニスの商人」
ひらりんのフェイバリット俳優のひとり・・アル・パチーノ主演。
原作はもちろん、シェイクスピア。
タイトルは知ってるけど、どんなお話かは知りませーーーん。
文学少年じゃなかったので・・・
英題は「THE MERCHANT OF VENICE」。
2004年製作の文学系ドラマ、1…
ヴェニスつながりで2本のTBありがとうございます。
ヴェニスつながりでいけば・・・
「幸せになるためのイタリア語講座」でもヴェニスに行きます。
もちろん現代のお話ですが。
よかったらDVDでチョイスして見てください。
ひらりんさんへ
こんにちは!ご訪問ありがとうございます。
「幸せになるためのイタリア語講座」、ご紹介有難うございます。
「フレンチな幸せの見つけ方」では、ちっとも幸せになれなかったので(笑)、こちらでは期待して見てみようと思います!!
ヴェニスの商人
シェイクスピアの書いた37の戯曲の中で最も人気が高く、この作品が日本では初演。ロマンテックなラヴストーリー。スリリングな法廷劇。人権と復讐。…INTRODUCTIONより *かなりのネタばれ含みます
時は16世紀の末。そしてヴェニス。貿易商のアントーニオの元に、若い彼の…
こんばんわ こちらにもTBさせていただきますね。
この映画,脚色のしすぎで、シェイクスピア原作の意図からはずいぶんかけ離れたものとなってしまったのかもですね。
観る人によって,いろいろ受けるものが違って面白いです。私は,ブログにも書いていますが,バッサーニオとアントニオとポーシャは三角関係に見えました。
バッサーニオとアントニオはおホモだちに見えたのですよ。・・・んん?
ポーシャが意地悪に見え,バッサーニオはお調子ものに見え,アントニオはヘタレ男にも見えました。
あの格調高いシェイクスピアを,このように模様替えするなんて,ある意味この監督はすごいです。
ヴェニスの商人
文豪シェイクスピアの「ヴェニスの商人」のストーリーは,はるか(?)昔の小学校時代,道徳の時間に紙芝居で見た記憶がある。・・・このストーリーのどこが道徳的なのか今思い返しても おおいに謎だ。欲を出すとひどい目に遭いますよと言いたかったのかな?まさかねぇ。担…
ななさんへ
こんにちは〜♪コメントTB、ありがとうございました!
そうなんですよ、そうなんですよ〜!!
いや〜この映画、腹が立ってしまいました。アルのオヤジが好きなので、それでも怒りが尾を引く程ではなかったのですが、それにしても酷かったです。
おっしゃる通り、アントーニオとバッサーニオは、モロにそういう関係に描かれてましたね。ただそうした指摘は、これまでも中にはあったので、目新しいものって訳ではないんですよね。
全く、ななさんのおっしゃる通りだったと思います。私も、ポーシャは意地悪女、バッサーニオはお調子者の向こうみず、アントーニオは根暗のヘタレに見えました・・・(悲)
ヴェニスの商人
『心に宿して美しいのは、 憎しみよりやさしい愛。』
コチラの「ヴェニスの商人」は、ウィリアム・シェイクスピアの喜劇用の戯曲をマイケル・ラドフォード監督が、アル・パチーノ主演で映画化した重厚なヒューマン・ドラマです。
元々は喜劇、しかも勧善懲悪モノ….
『ヴェニスの商人』
シェークスピア原作の「ヴェニスの商人」をアル・パチーノ主演で映画化。脇にもジェレミー・アイアンズ、ジョゼフ・ファインズらを配した豪華キャスト。
映像の叙情性が美しくはあるんだけれど、イマイチ感情移入を許さない作りになっているようにも感じたかな。
作ろうと…
社会を冷笑したい時に 12 「ヴェニスの商人」
「ヴェニスの商人」 悲劇のシャイロック
【原題】THE MERCHANT OF VENICE
【公開年】2004年 【制作国】米・伊・ルクセンブルグ・英…