47.プルートで朝食を
「ぼくを探しに」。
はみだしっ子“キトゥン”の自分探しの旅。
綺麗なものや、かわいいものが好きで、アイルランド内紛戦争も、IRAも“どこ吹く風”な、自称“キトゥン”。
周囲の現実世界にではなく、自分の内面世界を体現する。
いつでも、どんな時でも、【自分としてしか】生きられない彼・・・いや彼女。
男性にこの気持ち、分かってもらえるだろうか・・・?
【ストーリー】
’70年代アイルランドの小さな町、タイリーリンで生まれたパトリック(キリアン・マーフィ)。
彼は、教区司祭のリーアム神父(リーアム・ニーソン・・・名前が同じだ♪)が、若い家政婦の体を奪って出来た、“不義の子”。
母親は彼を産むと町を去り、父である神父は、近所のブレイデン家に彼を養子に出す。
青年になったパトリックは、綺麗なものに興味を持ち、女性の服を好んで着る少年になっていた。
しかし、町中の人に変わり者のレッテルを貼られ、ブレイデン家の人々は、孤児であることをパトリックに告げてしまう。
そんなパトリックは、自分で造った神話の中に登場する聖パトリックの従者“キトゥン”こそ、本来の自分であると、キトゥンの名を名乗るようになる。
“名前を自ら名乗る”のが《アイデンティティーの芽生え》であるなら、キトゥンが母親を探す旅は、そのまま自分探しの旅にあてはまる。
ヒッチハイクをしたり、いろいろな人に出会ったり、別れたり・・・キトゥンの旅は、何を見出だし、どこを終着点とするのだろうか?・・・
キトゥンはまるで、周りの現実世界に背を向けるかの様に、反抗するかの様に、自己主張する。
いつでも“自分自身”であり続けようとする。
《究極の楽観主義者》と呼べるような、何が起きても自分の世界を維持し、周りを笑い飛ばすキトゥン。
IRAの活動が激化し、小さな町にまでその覇が及んでも、友達がそれに傾倒していく様を見ても、愛や、綺麗なものしか見ようとしない。
変わり者であるかもしれない、実際に周りに居たら、このキトゥンの様に、嫌われたり、気が狂ってるとしか思われなかったりするかもしれない・・・。
::::::::::この先、ちょいネタバレ:::::::::
キトゥンは、母親探しをする間、母親を“幻の女”と呼ぶ。
“幻の女”-Phantom ladyは、ウィリアム・アイリッシュ作“幻の女”かと思われるが・・・。
ウィリアム・アイリッシュの“幻の女”では、幻の女は、主人公にとって、殺人罪を晴らす唯一の存在。
だがなかなか見つからず、主人公は、次第に、自分の見ている世界が現実なのか、妄想なのか、区別がつかなくなり、半狂乱に追いやられる。
キトゥンにとっての幻の女であった母親に実際に遭遇する時、キトゥンは、母親が等身大になり、現実の世界での父親を探し当てることになる。
美しいもの、綺麗でかわいいものを愛し、“真剣さ”を笑い飛ばす、ふわふわ生きるキトゥン。
男性に、このような気持ちが分かってもらえるだろうか?
・・・ 思想や哲学を持たず、楽観主義を固持するのは、逆に、ものすごく強い意思が必要だ。
周りの現実世界が、自分の好きな場所でなかったとしたら・・・?
自分を曲げてまで、周囲に溶け込もうとする人には、決して理解らないだろうと思う。
こんなキトゥンを、無理なく、美しく見せる、ニール・ジョーダンの手腕には圧巻だ。
浅くなりがちなキトゥンのキャラクターを、詩心と愛情たっぷりに表現し、楽観主義の裏にある悲哀を見え隠れさせる。
また、’70年代ファッションに身を包む、キリアン・マーフィが、本当に綺麗!!
ガリガリに痩せてて、手足も長くないと、ウェストで絞ってあるPコートが、あんなに素敵に着こなせそうにない・・・(ほわん)
“キトゥン”というのは、“Kitty”をもじった、“ねこちゃん”みたいな感じなのかな。
そんなおバカなキトゥン、“とらねこ”と自分を呼んでる私には、嫌が上にも自分を投影せざるを得ませんでしたよ(笑)
ぃよ〜しッ・・・キリアンを目指して、冬までに究極のダイエットだぁぁ〜!!!
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コメント(36件)
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プルートで朝食を
BREAKFAST ON PLUTO 公開中なので、控えめに! アイルランドのタイリーリンにあるリーアム神父(リーアム・ニーソン)の司祭館の前に捨てられた男の子パトリックは、近所のブレイデンおばさん(ルース・マッケーブ)の養子、そしてキャロライン(シャーリーン・マッケンナ….
>いつでも“自分自身”であり続けようとする。
キトゥンの凄いところ(素敵なところ)は、自分らしさを貫きつつも周りの人を傷つけないところ!
更には、周りの人まで幸せにしちゃうところ!!
>楽観主義の裏にある悲哀を見え隠れさせる
悲哀を感じさせるけれど、本人が自分から“私って可哀相でしょ?”と言ってこない所がキトゥンの魅力ですよね♪
出来すぎたキャラなのに、ちっとも嫌味な感じを与えないところも、哀生龍がこの作品が好きな理由です。
>冬までに究極のダイエットだぁぁ〜!!!
とらねこさん、一体どの部分を痩せようと仰るのですか?
TOP&バトンの画像を拝見する限りでは、充分魅力的ですよ!!
哀生龍さんへ☆
TB&コメントありがとうございます。
そうですね、キトゥンは、自分らしさを貫きながらも、周りを傷つけず、逆に幸せにしていますね*^〇^*
そうですよね。誰もそのたもに傷ついたり泣いたりしていませんもの。
かわいそうな境遇なのに、みじめったらしくないし、顔あげて生きていますよね‥
ありがとう‥
はみだし者に対する温かい言葉‥心に染みます‥(滂沱)
ダイエットはしますけど‥
やばいなあ。精神力も体力も年々衰えてるオイラです。ってかダイエットもしなければ昨日は飲みすぎたぁ!!
ゴルフやってきたよ。一応日記に書きました。後でごらんあれ。それからその後は飲みに行っておりました。その模様も後でのせるよん!!
ジュンさんへ☆
おぉ、お帰りなさい!!
ゴルフは、楽しかったですか?
サッカーもあるし、睡眠時間もマバラだろうに、その上、飲み行って、次の日、朝からゴルフ‥
そりゃ、どんなゴリラだって、倒れますばい☆
あ、いや、ジュンさんが“ゴリラ”って訳ではなく(爆)
とにかく、言いたかったのは、ジュンさん、頑張りすぎ〜!!
本当、倒れないで下さいよ、それ年じゃなくて、無茶しすぎですよ〜。
こんばんは♪
伊豆旅行楽しかったですよぉ〜。
一泊旅行だと、あっという間に帰宅という感じですね(笑)御殿場のアウトレットぐらいにしか行かなかったのでほとんどショッピングツアーという感じでした(爆)
私もジョニー来日までにダイエットしたいよ〜(涙)スタイルの悪さに愕然の毎日…。痩せたいけど、もう時間がないようですね…
Pamyさんへ楽しかった??
お帰りなさい〜!!
温泉旅行、満喫されたようですね
御殿場のアウトレット!
私も仕事で行ったことありますが、思いっきり買い物に走ってました(笑
Pamyさんもダイエット?
一緒に、頑張りませう〜
プルートで朝食を
【映画的カリスマ指数】★★★★★
哀しく過酷・・・それでも人生は愛おしい
ニール・ジョーダン監督「プルートで朝食を」
ニール・ジョーダン監督(「クライング・ゲーム」「インタビュー・ウィズ・バンパイヤ
TBありがとうございました!!
確かにキリアン・マーフィ、ほっそ〜いですね〜
COLOR of CINEMAさんへ
わざわざご訪問有難うございました。
この映画、COLOR of CINEMAさまのハンドルネームのような・・・
まさにカラフルな映画でしたね〜
プルートで朝食を
原作はパトリック・マッケーブの同名小説。舞台演劇「キャンディード」風に作ったとニール・ジョーダン監督は言っているそうだが、このキャンディードの序曲(バーンスタイン作曲)はかなりイカシタ曲なのよ♪
テンポがよく、音楽で引っ張っていく導入部の曲のイメージからする…
こんにちは!
そうか、トラネコさんはキトゥンか・・・かわいいわね〜
混沌とした時代を軽快な音楽でも描いていて、ただのコメディでもなくヒューマンドラマのようでもありました。
私にはおじさん達が皆魅力的で、うはうはです。爆
マスターも女には弱いのね…(^^ゞ
Charlotteさんへ
Charlotteさまは、音楽にだいぶハマったようですね〜
とらねこは70年代のロックが大好きなんですが、Charlotteさまのところで見る限り、お恥ずかしながら、私にはTレックスしか分かりませんでした
でも、この時代の洋服!!
かっわいいですよね〜
豹柄のコートは持ってますが、蛇柄も欲しいですね〜。
ケバかわいいですよね
『プルートで朝食を』
明るくてラブリーなキトゥンの魅力にあふれるファンタジックな物語。
アイルランドの小さな町で教会の前に捨てられた赤ん坊は、美しく中性的な青年“キトゥン”へと成長してカミングアウト。70年代、アイルランドの独立運動まっただ中、キトゥンは母親を捜しにロンドンへ…
「プルートで朝食を」レビュー
「プルートで朝食を」についてのレビューをトラックバックで募集しています。 *出演:キリアン・マーフィ、リーアム・ニーソン、スティーヴン・レイ、ブレンダン・グリーソン、ルース・ネッガ、ローレンス・キンラン、イアン・ハート、ブライアン・フェリー、他 *監督:ニー….
プルートで朝食を
シネスイッチ銀座で「プルートで朝食を」を鑑賞してきました。公開から何週間も経つのに、満席でした。
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☆プルートで朝食を・・・・!
京都みなみ会館にて8月12日よりロードショー早速観てきましたニール・ジョーダン監督の最新作です。ニール・ジョーダンの映画を観るのはこれで三本目になります。やはり「クライング・ゲーム」が有名ですよね1992年の作品です。14年前です。記憶も薄っすら・・・・。そ…
プルートで朝食を
キトゥンに薔薇とチョコレートを!
「プルートで朝食を」逃避と悲しみ
ストーリー: 親から捨てられた乳飲み子のパトリック(キリアン・マーフィー)は、リーアム神父(リーアム・ニーソン)に助けられブレイデン家の養子になる。美しく中性的な青年“キトゥン”へと成長したパトリックは、アイルランドの田舎町では浮いた存在だった。あるとき….
>男性に、このような気持ちが分かってもらえるだろうか?
うーむそう言われると僕はわかってなかった気がしてきました。「それほどの映画かぁ?」とブログでほざいてしまいましたが良い映画だったかも^^;
ということでTBありがとうございました〜。
nappaさんへ
こんばんは、nappaさん、ちょっとダケお久しぶりです♪
いやいや、nappaさんの気持ち実は私も分かります。
周りがアイルランドの民族紛争、革命で友達が死んでいるのに、かわいらしいものしか見ようとしないキトゥンは、私には少しだけ理解できませんでした。
女らしく、かわいらしく生きたい気持ちは分かるのもあり・・・てなわけで、私もそれほどまで好きな作品、というほどでもないですぅー。
ところでコメント省略してしまってすみません。
ご丁寧にありがとうございました♪
プルートで朝食を
オカマの主人公を気色悪いと言ってたインディアンのバンドメンバー達であったが、彼らのバンド名が“モーホーズ”というのはどういうわけだ?!
「プルートで朝食を」
「プルートで朝食を」ヤマハホールで鑑賞
性同一性障害を持った男の子が自分の母親を探しながら成長し自立していくストーリー。たくさんのストーリーが組み込まれ彼の生い立ちから物語が進んでいきますが第○章「……」という手法がわかりやすく何故か新鮮に感じました…
親を探して
「トランスアメリカ」
「プルートで朝食を」
「プルートで朝食を」
アイルランドものです。
オカマちゃんものです。
主演は、キリアン・マーフィー。
原題は「BREAKFAST ON PLUTO」。
>ぃよ〜しッ・・・キリアンを目指して、冬までに究極のダイエットだぁぁ〜!!!
・・・って、どうなったの???
キトゥンちゃん・・いや、とらねこちゃん!!!
ひらりんさんへ
こんばんは〜☆TB&コメントありがとうございます!
>とらねこちゃん
わーい、ちゃんづけだー★
えと、実は、夏は、激ヤセしておりましたぁ。
でも、また太って元のもくあみに、なりました。
今また、痩せたいモードのとらねこです・・・
夏の私を見せたかったですー
『プルートで朝食を』
プルートで朝食を
CAST:キリアン・マーフィー、リーアム・ニーソン 他
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惚れられキトゥンの半生
『プルートで朝食を』を観た。
母親、恋人、居場所…自分探し。
第36章からなる彼(彼女)の生きる道。
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『プルートで朝食を』’05・英・アイルランド
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とらねこさん、暑いですねぇ〜
最近感想を書いていると、途中で頭が真っ白になります・・・セミもウルサイし(汗)
という事で、とっても力を抜いて感想を書きましたが、この映画は気にいりました。
キリアンが可愛らしい女性(?)を上手く演じていましたね。映画の全体的な雰囲気も好みでした。
とっても暑い日が続きますがご自愛下さいね〜♪
由香さんへ
こんばんは〜♪コメントTBありがとうございます!
そうですね、由香さんは、今夏休みで、お忙しいのでしょうか?
本当毎日アツくて嫌になりますね。
仕事する気が起きません・・とほほ
この映画は、なかなか面白かったですが、
私は立ち見になってしまって、階段に座って見るハメに・・
実は割と、不機嫌な中での鑑賞となりました。
立ち見はやっぱり、出来るだけしたくないです!
映画『プルートで朝食を』
原題:Breakfast on Pluto
太陽系の遥か彼方の準惑星、冥王星はローマ神話の冥府の王であるプルートに由来する、地球から星々を廻り火星に立ち寄りプルートで朝食を摂る物語・・
イギリスでIRAの爆弾テロが盛んな頃、パトリック・"キトゥン"・ブレイ…
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『プルートで朝食を』を観ました激動のアイルランド現代史を背景に、女の子の心を持つ一人の青年の波乱の人生を軽妙なテンポで綴るコメディ・ドラマです>>『プルートで朝食を』関連原題:BREAKFASTONPLUTOジャンル:ドラマ/コメディ上映時間:127分製作国:2005年・アイ…