39.ロシアン・ドールズ
前作、『スパニッシュ・アパートメント』(’01年)の続編に当たる作品。
前作ではバルセロナに留学し、国籍がそれぞれ異なる7人と、共同生活を送る、という青春映画だった、『スパニッシュ・アパートメント』。
セザール賞ノミネートその他、フランス本国でも大ヒットを飛ばしたそうで。この続編に対する期待は、とても大きかったようだ。
このセドリック・クラピシュに見出だされ、前作において主演を抜擢された、ロマン・デュリス。セザール賞新人賞を受賞した、イザベル役、セシル・ド・フランスに先立って、いまや売れっ子、飛ぶ鳥を落とす勢いのロマン・デュリスだ。
なんだか、こうして今見ても、俳優としての風格が出て来たと言うか、前作において、“そこら辺にいそうなお兄ちゃん”だったのに、なんだか、アップになった時のカメラ映えが、以前より数段増して来ているかのようで、頼もしい限り。
フランスでの人気もすごいらしいので、特に今作品の注目度は高かったんじゃないかな。
“多国籍な共同生活”が、この上なく魅力あった前作。なにかと悩み、苦しむ時期に、留学、旅でリセットし、いろいろな国の人々と本音でぶつかり合い、カルチャーショックを受けながら、そこで得た全て・・・これよ〜!こういうのが、見たかったのよ〜!と言いたくなるような、みずみずしい作品、それが前作『スパニッシュ・アパートメント』だったのだ。
20代だった彼らも、今作では30歳。混乱と激震の20代とは言わないまでも、まだまだ社会の歯車に、すんなり溶けこむことはできず、理想と現実の狭間で、揺れ動いている。そして、恋も・・・。
監督、セドリック・クラピシュの思いの込められた、自伝的要素の強い、主人公、グザビエ。小説家を目指す彼だが、恋愛小説を書くのに、恋愛のエキスパートとは言えない。ただ一人愛する相手を探しているのに、まだそこまで確信の持てる人はいない。
ドラマチックにのめり込んだ相手も以前はいたが、現在は、モテない訳ではないのに、これと言う一人の見つからない、どこか埋められない孤独。
等身大に描かれたグザビエの姿に、自分を見出だす人はきっと多いはずだ。友達から言われ、図星だった一言を、周りの人にまるで、自分からの忠告の様に与えたり・・・。
良い関係が持てそうだ、と感じた相手を見つけたその時に、踏み込む直前に、また別の誘惑に釣られてみたり。 等身大で、混乱そのものを描いているのは以前と同じではあるけれども、“旅”が、魅力的にストーリーに結び付いていない分、ちょっと地味な印象ではあったようだ。
それでも、「恋の始まりは、旅の始まりに似ている」と言う一言や、《最後の一人》を探す、というモチーフは、心を捉える。
私的には、前作で、不協和音を奏でていた、ただ一人の、嫌な奴・・・ウェンディの弟ウィリアムが、成長し、変身を遂げていたのに、目をみはった。
イザベル役セシル・ド・フランスは、前作では爽やかな魅力で素敵だったのに、今作では、ちょっとコワモテなレズの立ちになってしまっていて、がっかり・・・化粧も濃い。
それから、どうにも男運の悪いウェンディ、ダメ男の、完璧でないところを愛してしまうウェンディに、ちょっと自分を投影してしまった私でした。・・・はぁ〜(ΘoΘ;)
だけど、自分にとって利益になる、と言う理由で、相手を選ぶ、グザビエのお母さんよりは、ずっといいよね・・・。
2006/06/08 | 映画, :青春・ロードムービー
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コメント(26件)
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やはり、前作を見ないとわからないないようなのかしら?
ケーコさんへ☆
正直に言っちゃいますね!
前作の方が、ずっとオススメですよ!
あ〜、言っちゃった〜
とらねこ@管理人さんはじめまして。
僕は満点つけちゃいました。
「スパニッシュ〜」は見ていた方が
絶対楽しめる作品ですよね〜。
千幻薫さんへ
はじめまして、コメントありがとうございます!!
もしよろしければ、TBも下さいませ(笑
私、前作の「スパニッシュ・アパートメント」がとても好きで、劇場で見て、DVDも買いました
この作品は、30歳の男性の心情吐露が、嘘偽りなく、等身大に描いているなぁ、と思いましたよ。
クラピッシュももう40代ですから、きっとすぐまた続編が作られるのでは??なんて勘ぐっているのですが(笑
『ロシアン・ドールズ』
縷映画『スパニッシュ・アパートメント』の続編 『ロシアン・ドールズ』行ってまいりましたっ獵(>Д<)ゝ” 最高囹秊 『続編はつまらないもの』と言うのが通説ですが、 『ロシアン・ドールズ』は見事覆してくれま….
とらねこさん
TB打たせていただきました。
ヽ(^o^)丿
朝は何度か挑戦したのですが送信失敗になったので…。
グザヴィエ君のダメ男ぶりが共感できるんですよ〜。
フルチンで走るところじゃないですよ(笑)
自分に当てはまる部分ってあるじゃないですか〜。
モテまくるのは反感と言うか妬み持って見てましたけど…。
千幻薫さんへ・・・なんてことも、言いませんよ〜(爆
TBありがとうございました。
フ○チンで走ってましたよね←とても言えないッス・笑・・・イヤもちろん、食い入るように見てしまいましたよ
>モテまくるのは反感と言うか妬み持って見てました
そうですね(苦笑)
モテた時にこそ、自分が本当に愛している人が誰なのか、あまり考えない、と言うのは真実かもしれませんが・・・(苦
ロシアン・ドールズ:本当に大事な人は失わないと気が付かない シャンテシネ
前作のスパニッシュアパートメントから5年。バルセロナからパリにもどったグザヴィエのその後の話。「真夜中のピアニスト」「愛より強い旅」のロマン・デュリスがダメダメ男を演じている。 僕グザヴィエ(ロマン・デュリス)は小説家になりたくて物書きになった。小説は….
ロシアン・ドールズ:主観と客観のせめぎ合い
★原題:Les Poupée Russes ★監督:セドリック・クラピッシュ(2005年 フランス作…
こんにちは♪
まあ、こういう感覚って持ってるほうが普通なのかなと思ったりもするこの頃。あははー
自分もかなりヘタレなの。笑
と言いながらさっさと22歳で結婚しちゃった私はこういう感覚はわからなかったりもするわけでして。爆
○チンんは思いっきり引きましたー。
もうそろそろ羞恥心ももつ大人になれーってエールを送るワタクシでございます。
ロシアン・ドールズ
バルセロナのアパートを舞台にした作品「スパニッシュ・アパートメント」から5年後・・・30歳となったフランス人青年グザヴィエが主人公の「ロシアン・ドールズ」
パッとしない人生・・・恋も仕事も。
等身大である30歳のグザヴィエの姿にはとっても共感できるし、きっと私…
charlotteさんへ
charlotteさん、こんにちは
charlotteさんの文を読んでいると、なんだかだんだんとcharlotteさんのことが少しづつ、分かっていくようで、すごく嬉しい私であります
charlotteさんは白鳥マニアだということも分かったし。。。
グザビエはちょっとね、もう少し頑張って欲しい気はするんですよね
うーん、気持ちが分からなくはないんですが。
等身大過ぎて、勉強にはならない生き方というか。
でも、非難をする気にはなれませんよね。
ロシアン・ドールズ
相性の悪いロマン・デュリス。『スパニッシュ・アパートメント』という作品の続編でありながら、前作は未見。……こういった悪条件にもかかわらず、
劇場『ロシアン・ドールズ』
監督:セドリック・クラピッシュ 出演:ロマン・デュリス、オドレイ・トトゥ、セシル・ド・フランス、ケリー・ライリー、ケヴィン・ビショップ、エフゲニィア・オブラツォーヴァ他 『スパニッシュ・アパートメント』の続きです。お話的には5年後とゆーことになってますですが…
おはようございます。コメント・TBありがとうございました。
私は本作のほうを『スパニッシュ〜』より先に見たのですが、ウィリアムとイザベルは二作とも注目キャラでした。脇役の設定にも手を抜かないところは、クラピッシュらしいなと思いました。
>完璧でないところを愛してしまうウェンディ
このあたりは私もリアリティを感じました。いや、完璧でない自分を愛してくれ!という願望の裏返しかも(汗)。
おはようございます。コメント・TBありがとうございました。
私は本作のほうを『スパニッシュ〜』より先に見たのですが、ウィリアムとイザベルは二作とも注目キャラでした。脇役の設定にも手を抜かないところは、クラピッシュらしいなと思いました。
>完璧でないところを愛してしまうウェンディ
このあたりは私もリアリティを感じました。いや、完璧でない自分を愛してくれ!という願望の裏返しかも(汗)。
こんにちは!お久しぶりです〜★
おお、では『スパニッシュ』は見ましたか!面白い作品ではありませんでしたか?スパニッシュの方!私、実はこちらの方がだいぶ好きで・・・正直、そのためにこの作品はあまり大した感想にならなかったのかもしれません。
で、お。ウィリアムとウェンディ、アメリカ人兄弟に注目の朱雀門さんですか。
私は、イザベル(セシル・ド・フランス)がすごく興味を持っていたので、なんか全然出てこなくて、つまらなかったでぇす。
完璧な人なんて、つまらないですよね。うんうん。
私も、そうですね、相手の欠点を愛してしまう女ですね。
ロマン・デュリス Romain Duris 俳優特選
Date of birth (location),28 May 1974,Paris,Franceロシアン・ドールズ Poupees russes, Les (2005)
真夜中のピアニスト De battre mon coeur s’est arrete (2005)
ルパン Arsene Lupin (2004)
愛より強い旅 Exils (2004)
カー・キーズ Clefs de bagnole, Les (…
オドレイ・トトゥ Audrey Tautou 女優特選
Date of birth (location),9 August 1978,Beaumont, Puy-de-Dome, FranceEnsemble, c’est tout (2007)
Hors de prix (2006)
ダ・ヴィンチ・コード The Da Vinci Code (2006)
ロシアン・ドールズ Poupées russes, Les (2005)
ロング・エンゲージメント Un long…
この映画の30歳のグザビエ、ブロークン・フラワーズの50過ぎのドン、これにハイ・フィデリティのジョン・キューザック(40前くらいかな?)加えたら「ダメ男三部作」ですね(爆)
このダメ男映画に何故か心ひかれるんですよね〜。自分を投影しながらも、「これじゃいかーん」という反面教師にも。
それにしてもダメ男三部作、改めて考えてみると秀作揃いじゃないですか・・・そして女性にウケが悪いというところも全てに共通してるし(笑)
それと勝手ながらこちらのブログ、私のブログリストに加えさせていただきました。事後報告ですみません・・・今後ともよろしくです!
ロシアン・ドールズ スパニッシュ・アパートメント2
「ロシアン・ドールズ スパニッシュ・アパートメント2」を観た。
『スパニッシュ・アパートメント』のメンバーが再結集し、7人の学生たちの5年後を描いた青春群像劇。学生生活から5年、30歳になり小説家への足掛かりを掴ん
baohさんへ
おはようございます〜♪
おお!『ハイ・フィデリティ』も、ダメ男3部作に加えますか♪
うんうん、納得です★私もこの作品、大好きなんですよね〜。
baohさんの最近のテーマは、どうやら“ダメ男&
ダメ大人”って感じですか(笑
baohさんのレビュー読んでて、そのあたり、如実に感じるので、面白いです(爆
リンク報告ありがとうございます♪
私も、早速リンク返しさせていただきましたー★
映画『ロシアン・ドールズ』
原題:Les Poupees Russes
You are perfect Guy!・・あなたは愚かだから・・不完全なるものを愛するのが私、だからパーフェクト、スパニッシュ・アパートメントから5年の月日で得たもの・・・
マトリョーシカ(ロシアン・ドールズ)、それは幾重にも重なった人形、…
ロシアン・ドールズ
『25歳のあのときから、君の人生はどうなってる? 20代のスペインでの出会いから5年、ヨーロッパの若者たちの恋、仕事、そして人生を描いた物語。』
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『ロシアン・ドールズ』’05・仏・英
あらすじバルセロナのアパートで、他国の留学生仲間と共同で暮らした、はちゃめちゃな学生生活から5年。30歳になったグザヴィエは、夢だった小説家への足がかりはつかんでも、満足いくものは書けず理想の恋人にも、まだ出会えていない・・・。感想DVDの副題に、スパ…
ロシアン・ドールズ
『25歳のあのときから、君の人生はどうなってる? 20代のスペインでの出会いから5年、ヨーロッパの若者たちの恋、仕事、そして人生を描いた物語。』
コチラの「ロシアン・ドールズ」は、「スパニッシュ・アパートメント」の続編となるR-15指定の青春群像劇です。
…