24.プリシラ
そもそも、ドラッグクイーンのロードムービーなんて、当時は、そのアイディアにぶったまげた訳。
ドラッグクイーン自体、この映画にある様に、本当に理解されていた、とはまだ言えない時代で。
DQ、あるいはゲイ、オカマの、存在不確立感や、故郷を持たない孤独さ、なんて・・・なんだかまるで、ユダヤ人社会の持つ苦悩そのものだぞう!!
だけど、人種・民族じゃなくて、オカマさんのアイデンティティ・・・なんて、そんなの、考えたこともなかったから、もう私には衝撃そのものだった。
この映画の持つカリスマ性は、そんなパイオニア精神にあって、一部の人は、この映画が今だに大好きだったりする☆ 「ヘドウィグ&アングリーインチ」は、その点、この映画の正統派継承者だ、と思う所存だ。
それにしても。
いやぁ〜☆ なぁんて、かわいらしいお話なんでしょ。
話の構成に従って、色調統制がされている。
物語の始めに、普通のバスだった“プリシラ号”は、田舎町の人々の偏見によって、 “ゲイf**kersは家に帰れ” なんて、手ひどい落書きを書かれてしまう。
(オカマさん達も最初は“普通”のガサツな男。だけど、ゲイとバレた途端、偏見を受けるのと似ている。)
彼らが、ドキドキしながら行った、知らない田舎町のバーで、偏見と戦いながらも、それなりに楽しく一晩を過ごした後だったから、余計傷ついてしまう。
この田舎町の人間は、これまでの人生で、ついぞドラッグクイーンなんて、見たこともなかったわけである。
だけど、気の利いた罵倒のセリフを吐いたり、酒に強かったり・・・彼ら三人の本来の魅力によって、その場の人達は、それなりに楽しい酒を飲んだ。
だけど、見た目だけでレッテルを貼る、田舎の人達によるその言葉は、彼らに会った人が書いたのか、見ただけの人が書いたのか。・・・
そこら辺は分からないにしても、そのメッセージはキツく、彼らの心をえぐる。
「タフだなんて、自分の事を考えていたアタシだけど、やっぱり傷ついちゃうわ」
プリシラ号は、そんな事から機嫌を損ねてエンコしてしまう。
だけど、彼らをキチンと理解してくれる、“現代の本当の紳士”ボブの助力もあって、プリシラ号は、何とかまた、走り始める。
三人三様に悩み苦しむ中、プリシラ号はラベンダー色に上から塗られ、もう一度生まれ変わる。
「男が女になるのって、本当の覚悟がいるのよ」
ゲイだオカマだ、どんなであっても、自分の人生は、自分で背負って行く。
そんな覚悟で、風景が、“砂漠”から、“岩壁”を登るクライマックスになるとき・・・。
彼らは赤・白・青の、ド派手な衣装を身にまとっている。
岩壁の上で、風をはためかせた、ロングショットは、まさに圧巻だ。
岩壁は、人々の偏見を表してもいるし、あるいは“都会のジャングル”そのものでもある。
彼らが住むべきはここ。
冷たく感じた都会の壁も、同時に彼らを守っていると言える。
岩壁に登る彼らは、それら全てを“征服”したかのようで・・・とても素敵な画で、爽やかな風を受けるかのようだ!!
ドラッグクイーンは、現代という砂漠に咲いた、カラフルな仇花なのだ!!!
自然色じゃなくて、目にクラクラ眩しい、ド派手な仇花。
原題の逐語的邦訳;「プリシラの冒険・砂漠の女王」
私が前に見た時は、カラッと明るい、若いオカマのフェリシアが好きで。
この映画からずっと、私はガイ・ピアースが好きだ。
元恋人に先立たれた、人生に疲れた、歳取ったオカマのベルナデッド(テレンス・スタンプ)の良さが、当時の青い私には分かっていなかったとしか思えん。
今見ると、ベルナデッドの、威厳と人生の悲哀をたたえて、だが、すっくと顔を上げるその様が、とても心に響いた。
彼女は本当の勇気を持っていて、どんな時も、素敵な罵倒やセリフを吐くし、喧嘩も強い。オカマ特有の前向き感が、すごくいいのだ。
「泣いてばかりいたって、マスカラが剥がれ落ちて、パンダ目になるだけだから、旅に出るわ」
オージー英語のゲイしゃべり、本当楽しくって♪
特にベルナデッドのセリフは、無駄なものが全然ないね。
それから、ミッチ役、ヒューゴ・ウィービングの、舞台上でのパフォーマンスは本当に様になっていて、ブラボー!
それに、化粧を落とした素の顔でも、顔の表情筋の細かな動きと、抑えたセリフ回しで、心情を的確に表現していて、私は、何度も滂沱してしまった(T-T)
舞台衣装は、田舎町の、天井の低いバーだろうが、本当のホームタウンである都会のショーパブだろうが、見ててすんごい楽しくて、その度、爆笑してしまった。
オーストラリア映画であるので、その衣装も、ダチョウだったり、サラマンダーだったり(きゃはは☆)←←音楽に合わせて、エリマキ部分がドバッと開くんよ!!(T▽T)
病院のシーンの、その場に思いっきし、そぐわない、全身電球ルックも笑いまくれるし。ゲタを繋げただけの、変なドレス(髪型が楽しいんだまた)もゲヘゲヘ笑った!
最初っから最後まで口パクなのが本っ当オカシくて!
私的に、“I WILL SURVIVE”のダンスは覚えたので、今度カラオケでやろ〜〜っと☆゛
2006/05/08 | 映画, :崇拝映画, :青春・ロードムービー
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TB&コメント ありがとうございました!
優しさと、潔さと、かよわい乙女心を併せ持った3人に、見ている方も励まされるような素敵な作品ですよね♪
TB&コメント ありがとうございました!
優しさと、潔さと、かよわい乙女心を併せ持った3人に、見ている方も励まされるような素敵な作品ですよね♪
哀生龍さんへ☆
コメント&TB返しありがとうございました!
そうですね、この映画って見ると元気になっちゃう、ラブリーな作品ですよね☆
哀生龍さんの言うように、オープニングのヒューゴ・ウィービングには、やられましたね!ビビッと来ました☆
最初のワンシーンで違う世界ですもん、ヒューゴさすがです。
あ、ところで私、ガイの主演作は、「メメント」をオススメしたいです。
こんばんは。
TBありがとうございました。
最初はただ面白おかしいお話なのかと思っていたら、
なんて素敵、なんて可愛い、でもちょっとほろっ…なお話。
気持ちの切り替えの台詞や、前を向く原動力が彼女たちらしくて、1回で大好きになりました♪
プリシラ
砂漠をゆく、愛しのドラッグ・クィーン
悠雅さんへ☆
コメントまで、ありがとうございます!!
そうなんですよね、ドタバタコメディではなく、きちんと人物像が描かれていて‥
一人一人のエピソードも、とても丁寧でしっかりしているところが魅力なんですよね!
オカマさんの話だけではなく、一個人、一人一人が、個性を持って、輝く人生を送る‥
そんなメッセージがとても響きました。
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・スタン??.
とらねこさん、こんにちは。
この映画、かなり前に観てやっと感想アップしました〜。TBさせて下さいね。
「ヘド」がこの映画の正統派継承者、って言えてる〜、座布団一枚!
「DQは、現代という砂漠に咲いたカラフルな仇花」う〜ん、上手い! 座布団もう一枚!
あ〜、私もあの「ビーサンドレス」には大受けしたのに、書くの忘れた〜悔しい〜。。
ホント、いい映画でしたね♪ こういう映画大好きだ〜と叫びたいです。
私も、彼らみたいに強く逞しく生きたいな。。
ではでは、また来ます〜。
真紅さんへ
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
おお、真紅さん、これ見てくれたんですね・・・
嬉しいです、嬉しいです!と〜〜〜っても!!
これ、すっごく好きな作品なんですよー。
昔からこれ、大好きなんです!
『ヘドウィグ〜』がこの作品の正統派継承者、に納得していただけますか!
こんなに温かくて素敵なDQ作品、なかなかないですよね(感涙)!
何か辛いことがあったら、この作品を時々見返したいな・・・。
それぐらい、自分の中では大きい作品だったりします。