2009年12月02日
戦場でワルツを ▲169
'08年、イスラエル・ドイツ・フランス・アメリカ原題:Waltz with Bashir
監督・脚本・製作:アリ・フォルマン
プロデューサー:セルジュ・ラルー、ヤエル・ナフリエリ、ゲルハルト・メイクスナー、ロマン・ポール
美術監督・イラストレーター:デビッド・ポロンスキー
アニメーション監督:ヨニ・グッドマン
編集:ニリ・フェレー
音楽:マックス・リヒター
アカデミー賞外国語映画賞ノミネート、ゴールデングローブ賞外国語映画賞受賞他、様々な賞をかっさらっていったという評判のこの作品。これまた突出したアニメーションの登場だ。
まず目を奪われるのは、映像の突出したセンス。ビビッドな色使いに、大胆で太めな線でクッキリ明暗を浮かび上がらせる、劇画タッチの人物の輪郭線。
さらに、CGを駆使して背景画像に疾走感を感じさせる。人物が走るその背景が、気持ちよく歪んで後ろに流れていく。絵とCGとの混ざり具合、これが音楽にピッタリ合っているのだから、たまらない。しかも、音楽がまた最高に格好イイのだ。このセンスにまず痺れる。
物語は、アニメーションでありながら、フィクションではなく、ドキュメンタリーであるということに、今更ながら驚きを禁じ得ない。
実写であったなら、そこに感じていたであろうはずの圧倒的なリアリティを、このアニメからは感じることなく、その代わりに別の惑星にいるかのような浮遊感をそこに伴っている。
これはまるで、今まで自分が一度も見たことのない映像のように感じさせ、いや、もしくは無意識の底から沸き上がってくる、自分自身の夢に似たようなデジャヴ感というべきか。
この相反する二つの感情を、同時に感じさせるこのアニメーション、これは・・・そうだ、きっとドラッグをやったことのある人間ならば「トリップ感」と呼ぶのだろう。
これにもし似ているものがあるとすれば、私はリチャード・リンクレイター監督の手がけた、素晴らしいロトスコープアニメの作品、『ウェイキングライフ』を挙げたい。映像技術でもちょっと類を見ないような、一風変わった奇妙な作品に、当時度肝を抜かれた。不協和音のヴァイオリンの音に誘われて、まるで別世界を旅するかのような、実写をアニメーションにトレースするという特殊な方法を取り上げた意欲作だ。
そしてこちらの作品も、『ウェイキングライフ』のように、自分の夢と記憶を旅する物語だ。
「記憶は、そこになかったものまで蘇らせ、同時に何かを隠す」。
だんだんこの謎が明かされていく中、その記憶の正体の分かったラストに、酷く大きな衝撃を感じるかもしれない。
それにしても、初めこそ刺激的に思えたアニメーション技術であるが、
次第にこれがアニメーションであったことすら忘れて見てしまう。そこにもう一度驚いてしまう。
まるで実写と見まごうようなカメラワークが、あまりに自然になされているのだ。
最後になるにつれ、アニメであったことにすら忘れてしまう程であった。
ストーリー・・・2006年のイスラエル。映画監督のアリは、友人のボアズから26匹の犬に追いかけられる悪夢の話を打ち明けられる。若い頃に従軍したレバノン戦争の後遺 症だとボアズは言うが、アリにはなぜか当時の記憶がない。不思議に思ったアリは、かつての戦友らを訪ね歩き、自分がその時何をしていたかを探る旅に出る。 やがてアリは、ベイルートを占拠した際に起きた「住民虐殺事件」の日、自分がそこにいたことを知る・・・
・戦場でワルツを@映画生活
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1. 「戦場でワルツを」アリ・フォルマン [ Mani_Mani ] 2009年12月10日 04:21
戦場でワルツをVALS IM BASHIR
2008イスラエル/フランス/ドイツ/アメリカ
監督・脚本:アリ・フォルマン
アニメーション監督:ヨニ・グッドマン
音楽:マックス・リヒター
アニメ大国的観点からするとやや荒いつくりに思えるアニメーションであるけれども、アニメは...
2. 虐殺行為を告発するだけで反省の無い映画だ、戦場でワルツを [ オヤジの映画の見方 ] 2009年12月14日 14:32
アニメーションで表現したドキュメンタリーで、実写より不気味な感じが良く出ている。しかし、この映画は単に戦争で封印した自分の記憶を蘇らせるだけに終わっている。意図的にサブラ・シャティーラの大虐殺を防がなかった反省がまるで無い。
3. 戦場でワルツを [ サムソン・マスラーオの映画ずんどこ村 ] 2010年01月09日 23:49
= 『戦場でワルツを』 (2008) =
2006年冬、友人のボアズがアリに対して、毎夜みる悪夢に悩まされていると打ち明けた。
ボアズは、それがレバノン侵攻の後遺症だという。 しかし、アリの記憶からは、レバノンでの出来事が抜け落ちていた。
記憶から失...
4. 戦場でワルツを [ 墨映画(BOKUEIGA) ] 2010年01月14日 08:10
「抜け落ちた記憶」
思い出したくない記憶。封印された記憶を取り戻すため。
【STORY】(シネマ・トゥデイ様より引用させていただきました。)
元兵士のアリ・フォルマン監督が、自身の経験を基に製作した自伝的なドキュメンタリー・アニメーション。1982年にレバノン...
5. フラッシュバックによろしく アリ・フォルマン 『戦場でワルツを』 [ SGA屋物語紹介所 ] 2010年01月19日 21:00
本日は昨年のアカデミー賞外国語映画賞を、『おくりびと』と争ったこの異色アニメを。
この記事へのコメント
1. Posted by あかん隊(アビアント) 2009年12月03日 00:30
この映画、個人的にはすごく気に入りました。
公開されている間にもう一度観たいです。さすが、映画に詳しい とらねこ さん、納得のレビューですね。自分は、「ワルツ」の曲がかかるシーンに圧倒されました。
2. Posted by とらねこ@管理人 2009年12月04日 00:30
あかん隊さんへ

こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
こちらこそ嬉しかったですー、ありがとうございました。
この作品、なかなか難しい作品ではありましたけど、私はこういうアプローチが結構好きでした。
>ワルツのかかるシーン
まさしく「ヴァシールでダンス」のシーンですよね。あれは本当に印象深かったです。
お褒めの言葉ありがとうございます。
気に入った、と言ってもらえてとても嬉しいです。


こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
こちらこそ嬉しかったですー、ありがとうございました。
この作品、なかなか難しい作品ではありましたけど、私はこういうアプローチが結構好きでした。
>ワルツのかかるシーン
まさしく「ヴァシールでダンス」のシーンですよね。あれは本当に印象深かったです。
お褒めの言葉ありがとうございます。
気に入った、と言ってもらえてとても嬉しいです。
3. Posted by manimani 2009年12月10日 04:24
>この相反する二つの感情を、同時に感じさせるこのアニメーション
そうそう。そういう作用でしたよね。アニメーションを選んだ理由がそこにあるのでしょうね。
そうそう。そういう作用でしたよね。アニメーションを選んだ理由がそこにあるのでしょうね。
4. Posted by とらねこ@管理人 2009年12月11日 14:21
こんにちは〜♪コメントありがとうございました。
そうなんですよ。ふと思い出して、確かmanimaniさんとは、『スキャナー・ダークリー』の時に、お話したなあ、と思って探したところ、『スキャナー・ダークリー』で初めてお話したんですね!
ちなみにその時と、まーにーさん同じことおっしゃられてて。懐かしいですw
まーにーさんには是非、私の好きな『ウェイキングライフ』を見てもらいたいですね。
5. Posted by de-nory 2010年01月14日 08:09
とらねこさん。こんにちは。
私には残念な結果の映画になってしましました。
絵や手法は面白いと思ったのですが、どうも伝わってきませんでした。
事実としては受け止めるべき映画。「観るべき映画」だったと思います。
私には残念な結果の映画になってしましました。
絵や手法は面白いと思ったのですが、どうも伝わってきませんでした。
事実としては受け止めるべき映画。「観るべき映画」だったと思います。
6. Posted by とらねこ@管理人 2010年01月16日 09:19
de-noryさんへ
おはようございます〜!コメントありがとうございました!
そうですね、これは意見が分かれる映画だったと思います。
政治的な内容を描いた、社会派の作品として見れば、そのように感じるのも当然だと思います。
が、私は、「非人間的な残虐行為を、集団として行った、あるいは行なわざるを得ない状況に追い込まれた人間の心理を、その内側から描いた作品」だと思っています。
このような状況に陥った時、人は何が起こっているのかさえ知覚していなかったり、もっと酷いことにまるで覚えていなかったり、人の「意識」がそれを忘れさせるように働く。
そんなことを描いた映画だと自分は思っています。
おはようございます〜!コメントありがとうございました!
そうですね、これは意見が分かれる映画だったと思います。
政治的な内容を描いた、社会派の作品として見れば、そのように感じるのも当然だと思います。
が、私は、「非人間的な残虐行為を、集団として行った、あるいは行なわざるを得ない状況に追い込まれた人間の心理を、その内側から描いた作品」だと思っています。
このような状況に陥った時、人は何が起こっているのかさえ知覚していなかったり、もっと酷いことにまるで覚えていなかったり、人の「意識」がそれを忘れさせるように働く。
そんなことを描いた映画だと自分は思っています。
7. Posted by SGA屋伍一 2010年01月19日 20:59
こんばんは
へえ・・・ おクスリで旅をすると、世界はこんな風に見えるんですね・・・ 未体験の者としてはリスクを犯さずトリップできて、非常に貴重な経験でした。むかしプラモデル用の溶剤で悪酔いしたことだったらあったけど
しかしどんなドラッグといえど、いつかは覚めるもの。いい加減気持ちよくなってたところに、バシャーンと水をかけて起こしてもらうような、そんなENDでありました
外国語映画賞を逃したのは残念ですが、アニメーションがそこまで来たことだけでも大したことだと思います。ちなみにわたし『おくりびと』はまだ見てないんすよ
へえ・・・ おクスリで旅をすると、世界はこんな風に見えるんですね・・・ 未体験の者としてはリスクを犯さずトリップできて、非常に貴重な経験でした。むかしプラモデル用の溶剤で悪酔いしたことだったらあったけど
しかしどんなドラッグといえど、いつかは覚めるもの。いい加減気持ちよくなってたところに、バシャーンと水をかけて起こしてもらうような、そんなENDでありました
外国語映画賞を逃したのは残念ですが、アニメーションがそこまで来たことだけでも大したことだと思います。ちなみにわたし『おくりびと』はまだ見てないんすよ
8. Posted by とらねこ@管理人 2010年01月20日 00:29


さんへこんばんは〜♪コメントありがとうございました。
自分の夢の中を旅しているかのような、ドラッグにトリップしているかのような、不思議な映像でしたよね。
終わり方は確かに夢から覚めたような気分にすらなったような、不思議な感覚でしたねえ。
いやあ、この内容であったなら、外国語映画賞を取るなんて、まず無理だろう・・・そう思えるような内容でしたよね。
いやあ、この映画と並ぶと、『おくりびと』って、当たり障りの無い作品だったんだなあ、なんて思いますよ。
SGAさんまだ見てないんですね!珍しい。すっかり見ていたもんだと思ってましたよ。コメントもくれたような・・・気のせいでしたか(爆

