2009年06月20日

レスラー ▲90

レスラー'08年、アメリカ・フランス
原題:The Wrestler
監督:ダーレン・アロノフスキー
製作:スコット・フランクリン
製作総指揮:バンサン・マラバル、アニエス・メントル、ジェニファー・ロス
脚本:ロバート・シーゲル
美術:ティム・グライムス
撮影:マリス・アルベルチ
音楽:クリント・マンセル

ミッキー・ローク  ランディ・“ザ・ラム”・ロビンソン
マリサ・トメイ  キャシディ
エヴァン・レイチェル・ウッド  ステファニー
マーク・マーゴリス  レニー
アーネスト・ミラー  アヤトッラー
ディラン・サマーズ  ネクロ・ブッチャー


π』、『レクイエム・フォー・ドリーム』、『ファウンテン』のダーレン・アロノフスキー監督が、こんなベタそうなプロレスラーの映画を作るなんて。正直、どう期待していいのやら・・・と、期待と不安の入り混じった気持ちで公開を待っていた作品。

蓋を開けてみれば・・・最高の出来!!

アカデミー主演男優賞こそ逃したけれど、ゴールデングローブ賞の主演男優賞を取ったミッキー・ロークの、魂をこめた渾身の演技!!
彼を見ているだけで、嫌というほど心が震えてしまった。

私はかなりのショーン・ペンファンなので、「ショーン・ペンより彼に主演男優賞をあげたかった」とはあまり言いたくないのだけれど・・・。心の奥底では、ミッキー・ロークにあげても良かったのでは、と思ってしまいました。
でも、アカデミー授賞式で、ショーン・ペンが「尊敬する俳優、ミッキー・ロークが復活してくれた」と言ったそうで・・。そんな一言にもグッときてしまう。

実際に、俳優を離れていた'90年代に、プロボクサーをやっていた、ミッキー・ローク。実際の試合では本当のレスリング風景を撮るため、プロレスも3ヶ月かけて仕込まれたらしい。
さらに、ミッキー・ロークが出演することを、監督が頑として曲げず、そのために制作費が大幅にカットされることも厭わなかった、なんて・・・。この映画にまつわるいくつものエピソードは、本当に映画ファンとして、知って嬉しくなるばかり。映画に感動しただけでなく、こんな周辺情報も集めては涙したり喜んだり。

何より、映画そのものが、ストレートに心を打つ最高な出来。
ランディ・ザ・ラムの日常を映し出す時には、その背中から映し出すショットが多用され、ドキュメンタリー風と言えるような、素朴なカメラワーク。
試合の風景は、熱気と狂気を感じるような異様なテンションに、心底興奮してくる。
肉体の限界まで痛みを感じさせるような試合風景と合わせて、ランディの今現在を映す時には、「全盛期の自分とのギャップ」、悲哀と孤独が漂っている。
そこには、肉体の痛みではなく、心の痛みをギリギリ感じて、見ていてこちらまでたまらなくなってしまう。シンプルでストレートな物語が進む中、だんだんとランディの心の風景に、自分自身の気持ちが重ね合わされてしまった。

ランディは、「'80年代のアメリカン・ヒーロー」なだけあって、使う音楽がまた見事に古いハードロックで固めてる。RATT、Scorpions、CINDERELLA、Quiet Riot、SLAUGHTER、FIREHOUSE! ランディ登場のテーマソングにGN'Rの『Sweet Child O' Mine』と来た日には、思わず「おわっ」とのけぞった。言及されるMotley Crueは、かかってなかったよね?(私は再結成後のアルバムは聞いてないんだけど)だけど正直、モトリーが一番ミッキー・ロークに合うんだけどな。なんたって、ヴィンス・ニールは、一時脱退し、レースの世界でプロを目指し、またオリジナルメンバーで再結成、ヴォーカリストとして復活した人だから。というのは余談で。

ランディは、自分のやりたいことだけを貫いて生きた、「勝手な人」なのかと想像していた。でも、彼はそうするより他に、生きる実感を感じることが出来なかったのだ、と私は思う。
「外の世界の現実の方が自分には寒いんだ」と言って、リングに上る覚悟をするランディ。
「私がいるわよ」って・・・キャシディ、このタイミングじゃ遅いんだよ、って言いたくなった。もう、男が覚悟してしまった後ですよ。遅いよ!!なんの足しにもならない。

それにしても、ダーレン・アロノフスキーってヤツぁ・・・本当に面白い人だ。今までの監督作品、全て違うタイプの映画なのに、その全てが面白いなんて。私の中では、完全に殿堂入りしましたよ。
ちなみに自分の好きな順番は、『ファウンテン』>『レクイエム・フォー・ドリーム』>この作品>『π』です。


P.S.・・・公開初日は奇しくも、二代目ダイガーマスク・三沢光晴氏がリング中に死亡という日・・・。ご冥福をお祈りします。


ストーリー・・
“ザ・ラム”のニックネームで知られ、かつては人気を極めたものの今では落ち目でドサ廻りの興業に出場しているレスラー、ランディは、ある日、ステロイドの副作用のために心臓発作を起こし、医者から引退を勧告されてしまう。馴染みのストリッパー・キャシディに打ち明けると、家族に連絡するように勧められる。長らく会ってない娘・ステファニーに会いにいくが、案の定、冷たくあしらわれてしまって・・・

レスラー@映画生活

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この記事へのコメント

1. Posted by にゃむばなな   2009年06月20日 17:59
私もショーン・ペンと同じくミッキー・ロークの復活を心から喜んだ一人だったので、この映画は心にきましたね〜。

とにかくランディの生き様。これに男の涙を流したことは今年忘れられない出来事でした。
2. Posted by とらねこ@管理人   2009年06月21日 00:13
4 にゃむばななさんへ

こんばんは〜♪コメントありがとうございました。

男泣きの一作でしたよね!
「女子供に分かるか」テイストがかっちょ良かったです。
3. Posted by 三冠王者ダジャレ番長!!   2009年06月21日 00:56
5 ごぶさたしてま〜す。。。なかなかいいダジャレが思いつかなくて、コメント参入できないつらい日々がつづいておりました、、、

じゃ、さっそくザ・レスラー・クイズです。ミッキー・ロークの得意なプロレス技はな〜んだ? ねこパンチじゃないよ!!

どうせわかんないだろうから、答えを言っちゃうよ。キー・ロックだよ!!

ミッキー・ロークだけにキー・ロック!!

、、、でも、ボクはニコラス・ケイジ版『ザ・レスラー』も見てみたかったよ。

4. Posted by あすか   2009年06月21日 11:19
とらねこさん、こんにちは。
ごらんになったんですね。
なんだか私はダメだったのですが、
私が見た視点が、まぁこの映画の骨の部分から明らかにかけ離れたところから見てしまったのがダメだったのかなぁ、と。
男のロマン、というか、生き様の映画は別に嫌いなジャンルではないのですが、なんでダメだったんでしょう…。ふーむ。

でもミッキー・ロークの体当たりの演技には私も拍手でした。
ちなみに私は主演男優賞は、「扉をひらく人」のリチャード・ジェンキンスにいってほしかった派です(笑)
5. Posted by かえる   2009年06月21日 14:38
とらねこさん、こんにちは。
ダーレン・アロノフスキーって本当に面白い人だっていうのに大いに共感。
まったく違うタイプの映画をこんなに感動的に完璧につくっちゃうんだからすごいですよねー。
6. Posted by とらねこ@管理人   2009年06月22日 00:29
4 三冠王者ダジャレ番長さんへ

こんばんは〜♪コメントありがとうございました!

この作品、もう見ました?それともまだかな。
何にせよ、ダジャレは無理しなくっていいんですよ(爆)
>キー・ロック
ははは。。。でもねえ、この映画では関節技は、一個も出てこないのでした。アメリカンプロレスって見た目派手だよねえ。ラリアットかまされたら、垂直にバーンと倒れたりするの。

猫パンチは、ボクシングの時のミッキー・ロークの技なんだってねえ。。猫騙しとか、猫がつくとやけに女々しいよねナンカヤダ。

>ボクはニコラス・ケイジ版『ザ・レスラー』も見てみたかったよ
えー?ニコケイは、モト冬樹の伝記映画にでも出たらいいよ!
7. Posted by とらねこ@管理人   2009年06月22日 00:40
4 あすかさんへ

こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
イヤイヤ、私の映画好きのON友さんでも、この映画「全然ダメだった。全く共感できなかった」って言ってたんですよ。あすかさんだけじゃないの(笑)
それで、この映画が全然ダメだった友人は、とっても女の子らしくて可愛い人なので、いいんです許しちゃうんです(笑)きっとあすかさんも可愛い人なんだろうな♪
私はですね、この映画、結構忘れられないほど気に入ってしまったんですが、途中で自分がランディになったとしか思えないほどだったからなのでした(笑)

『扉を叩く人』も面白かったんですね。私も予告見たら、面白そうだなって思いました。期待してますー★
8. Posted by とらねこ@管理人   2009年06月22日 00:54
かえるさんへ

こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
ダーレン・アロノフスキー、『ファウンテン』で完全にお気に入り監督に入ってしまったのですが、この作品には本気で驚かされました。こうまでストレートに撮るなんて思わなかったものですから。リンクレイターが、どこか知性とか器用さを感じさせるのとはまた違うんですよね。でもこの作品には、このやり方が一番効果的だったんですよね。
9. Posted by アヤ   2009年06月22日 09:26
とらねこさん、心配してたのに観たんですね!気に入った様で良かったです!なんだか、今考えみたら、「レスラー」と「マン・オン・ワイヤー」って凄く似ている部分があると思いませんか?ランディーとプティは人間としては全く真逆ですが、生きている実感とか世界観とかは自分の手で生み出すという部分が。アロノフスキーは本当に不思議な監督ですね。ちょっとPTアンダーソンに似てるかも?
10. Posted by ノラネコ   2009年06月22日 19:34
良い映画でした。
一見悲惨にも見えるランディですが、私は幸せ者だと思います。
50代になって、たとえそれが虚構の世界だとしても、他に何も無い自分を受け入れてくれる場所がある、そんな男はそうそういません。
最後は現実世界から逃げたともとれますが、逃げられる場所があるランディをうらやましく感じました。
11. Posted by とらねこ@管理人   2009年06月22日 23:56
4 アヤさんへ

こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
ハーイ!なんだかんだ言って、真っ先に見に行くリストにありました(笑)
『レスラー』と『マン・オン・ワイヤー』の共通点ですか、フム。。
うん、自分の信じた道をあくまでも貫くところが、それぞれの主人公は同じですよね。
なんか思わず羨ましくなりますよね!
アロノフスキー監督のエピソードも本当に良かったですよね。意外に「こう」と信じてそれを曲げないところがイイですよね!
PTアンダーソンも確かに、何を次に作るかちょっと思いつかない人ですよね。
12. Posted by とらねこ@管理人   2009年06月23日 00:28
ノラネコさんへ

こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
そうですよね!私もランディは、幸せ者だった、と思います!
ランディのような中高年のプロレスラーたちは、引退して別の事業を、中にはやっている人もいましたね。でも、どうしてもリングが好きで、それにこだわり続けたランディ・・。
同じことをずっと好きで居続ける、ずっと変わらない生き方を続けるのは、不器用なのかもしれませんが、すごく愛おしくもありました。
そうですね、おっしゃるとおり、何もない自分を受け入れてくれ、一時輝くことの出来る虚構の場でした。
>逃げられる場を持っていたランディが羨ましい
うん、・・・なるほど。この苦さ、心の痛み、それらが十分伝わって来るんですよね〜。。。もう胸をえぐられるような思いでした。
13. Posted by マサル   2009年06月24日 23:35
ようやく観てきましたー。

 私も「マン・オン・ワイヤー」と似た部分を感じ、まさにそこにシビレました。あえて「カシコイ道」ではなく「愚かな道」ばかりを選んで突き進む主人公には、ある種のうらやましささえ感じてしまった次第です。それは本当の意味での「自由」であることなのかと。もちろん、その代償はあまりに大きく哀しい結末を呼ぶわけですが。

 この映画、若いころに観たら今ほどは感動できなかったんじゃないかなーとか思います。ってことは、さらに10年後とかに観たら...ちょっと考えたくない気もします。(感動を通り越して本当に哀しみに暮れてしまいそう)
14. Posted by とらねこ@管理人   2009年06月25日 07:47
4 マサルさんへ

おはようございます〜♪コメントありがとうございます。
自分の好きなことをそのまま邁進していった主人公でしたね。愚かな道ばかりを突き進んでいったのか・・・確かに、羨ましさは感じます。

おっしゃるとおり、若い頃にこれを見たらそれほど感動できなかったのではないか、という気持ちは分かります。私も、若い頃だったら、“年寄りの冷や水”は特に興味がない、なんてバッサリ冷たく切り捨ててしまっていたかも。肉体も最高に出来上がった年齢・状態で、“最高のプレイ”が見たい、というのが、スポーツ選手にのぞむことだったりしましたから。
でも今だと、「いつまでが現役か」「まだ自分はやれるのではないか」と悩む気持ちで、「やはり好きだから続けたい」と自分の居場所にこだわる気持ちが分かります。
15. Posted by de-nory   2009年07月06日 07:16
5 こんにちは。
いい映画でした。ミッキ-ローク自身のイメージとなんだかダブって、心にしみました。

音楽の使い方はよかったですよ。
ハード・ロックはほとんど聴いてないので、曲名などはあまり分からずでしたが、車でかかっているBGM的な扱い。実際の生活にある音のような使い方は、あまり音楽を使って舞い印象を与え、作品の雰囲気を高めていたように思いますね。
16. Posted by とらねこ@管理人   2009年07月07日 00:09
4 de-noryさんへ

こんばんは〜♪二度目まして!w
コメントありがとうございました。

de-noryさんも気に入られましたか!?私もこの作品、すごく好きだったのでとてもうれしいです。
そうですね、ミッキー・ロークが演じたことによって、何倍もリアリティを感じることが出来たように思います。

音楽の使い方、de-noryさんがおっしゃるように、ランディというキャラクターを描くために、使われたという印象を受けますね。
実は、そのチョイスも絶妙だったんですね。
たとえば、今考えているのが、「そう言えばボン・ジョヴィは使われていないどころか、名前すら挙がっていない」んですね。
ボン・ジョヴィはメジャーの中でも王道すぎ、超ド級の巨大バンドだったものですから、おそらくこの映画のランディにふさわしいと思わなかったのでしょうね。そんな風に、計算されていると思います。
17. Posted by tatsu   2009年07月25日 22:19
とらねこさん今晩は
またまた忘れた頃になってトラックバック載せさせてもらいました。
家族も娘も恋人もプロレス以外の仕事も、俺には向かなかった。
心臓バイパスの手術を受けても帰る場所はリングの上しかない
ファンの声援が有るなら決め技を見せてやるぜ
トップロープの上からのダイブを・・・。

切ないです、ミッキー・ロークの実人生をも彷彿させます。
ボクシング映画だとリアルすぎて見れなかったかも、、。
18. Posted by とらねこ@管理人   2009年07月27日 00:21
4 tatsuさんへ

こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
ミッキーロークその人の実人生があるからこそここまでリアリティを持ってましたよね。
19. Posted by 蔵六   2010年07月10日 00:16
 こんばんは。
 本当に本当にご無沙汰しておりました。何の前触れもなくブログを放置してからしばらく経って復活してしまいました。まるでゾンビのような心持ですが、以後よろしくお願いします。

 この映画は映画館で観ることはできませんでしたが、良かったですね。そうですか、この映画の公開日に三沢が無くなったのですが。三沢が最後にリングで食らったバックドロップを観ましたけど、こんなことを言っていいのかどうかは分かりませんがリング上で死ねたというのはある意味本望だったのではないかななんて思ったりもします。プロレスラーというのはどこか最期の最後までリングに上がりたいという気持ちがあるんじゃないかなんてこの映画を観て思いました。

 この映画のモデルになったレスラーはランディ・サベージというレスラーだったはずですが、やっぱ今再動画で再見すると必殺技のダイビングエルボーに入るまでのモーションなんかがこの映画とよく似ていますね。意外とアロノフスキーってプロレス好きじゃないかな?
 因みにアロちゃんの作品ではレクイエムが一番好きだったりします。では、これからもよろしくお願いします!
20. Posted by とらねこ@管理人   2010年07月13日 11:48
蔵六さんへ

おはようございます〜♪本当!本当にお久しぶりです。二年ぶりのコメントありがとうございました!
いやあ、密かに復活していたなんて。どうせだったら教えてくれれば良かったのに、水くさいなーもう。
いやいや、こちらこそ今後もよろしくお願いします!

久しぶりの割に、コメント返信遅れてしまってすいません。
いやー3日連続で飲み倒してました。2日連続朝までオールで飲んで、3日目の昨日は、今日仕事だから12時過ぎで帰りました。楽しかったなあ!
最近、ウコンを飲むことを覚えてしまって、ダメですね。酒の弱い私でも、翌日すっきり起きられるので、ついつい飲みライフが充実してしまいます。
蔵六さんだったら、許してくれそうだし、こんな話喜んで聞いてくれそうだなあ。
ゆうべは新宿で飲んだんですが、今度機会があったら、蔵六さんを是非連れて行きたいような、本当に素晴らしい場所でした。
いつかまた、東京で飲みたいですね。

プロレス好きな蔵六さんならではの、深い理解ですね。
私にもなんだか気持ちが分かるようです!どうせ死ぬのだったら、好きな場所で死にたい、そう思うのは当然のことなのかも。
畳の上で死にたい人も居れば、性行為中に腹上死するのが最高に幸せ、という人も居るでしょう。
ランディの場合は、それがリングの上なのでしょうね。
ちなみに私の父親は、スキーが好きで、雪山で死にたい、などと言って母を困らせました・・・。

ランディ・サベージのモーションがこの映画と似ていたのですか!それは面白い。
いやー、この映画のことは、もっともっと語りたいですね。

そうですね、レクイエムも凄過ぎる作品ですよね!
この作品も大好きなんですけど、他の作品も好きで選べません
そういえば蔵六さんは、以前私の好きな『ファウンテン』をトンデモ映画扱いして、ちょっぴり恨んだことがありましたっけ(爆)

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