2008年10月19日
126●落下の王国
想像力の持つ、美しさばかりでなく、残酷性、破壊性。本来そこにある無限の可能性って、なんて怖いのだろう。足元の危うい暗さ。
『パンズ・ラビリンス』が気に入った人には、是非これも見て欲しい作品。
ストーリー・・・
1915年のアメリカ、オレンジの木から落ちて怪我をし、入院中の5歳の少女、アレクサンドリア(カティンカ・アンタルー)。人懐こい少女は、あどけない笑顔で病院中の人々に可愛がられていた。ある日、足の怪我でベッドから起きられない青年ロイ(リー・ペイス)と知り合う。病室に入ってきた利発そうな少女に、青年は自分が作った物語を聞かせる。たちまち夢中になって、続きを聞かせてとせがむ少女。しかし、それは少女に自殺するための薬を盗み出させるための作戦だった。・・・
去年、ブログをやっていて嬉しかったのは、『パンズ・ラビリンス』の評判が、映画ブログの人に、極めて高かったこと。
あの世界観てね、映画好きのための世界だったのかなあ?なんて思うんだ。想像力をこよなく愛する人達にしか、理解できないものだったのかもしれない、って。
あれは、ファンタジーの裏と表、現実の残酷さと想像力のめくるめく世界、それを同時に感じさせるものだったから、逃避するそこへ存在するその世界、ってものに、心を貫かれてしまった。
こちらの物語も、あの『パンズ・ラビリンス』とセットにして、一緒に楽しむことが出来るタイプの物語かもしれない、とは思う。こちらの方が、受け入れられる人は少ないかもしれないけれど。
想像力の持つその羽のはばたきを感じさせる、壮大な世界感。
だがその羽の羽ばたきも、想像する者の持つ残酷さのために、禍々(まがまが)しきファンタジーとなる。
そんな足元をすくわれるような恐ろしさ。
青年が、少女に向かって物語を語る。
初めの登場こそ、とてもワクワクさせるような冒険物語なのに、
しばらくしてのちに、そこまで美味しい冒険モノではなくなってくる。おかしいな、ということになってくる。
少女の気持ちになって、青年の話を楽しみにしている観客の私たちがそこに居るのだけれど、
その物語の想像の源泉となる青年次第で、素晴らしいものに成り損ねてしまう、この事を、痛々しい思いで感じてしまう。
ターセム監督は、前作『ザ・セル』がそうだったように、怖ろしく心をエグるような世界をそこに描き出して、見ているものを愕然とさせるのだった。
映像は本当に美しくて、心を奪うのに、そこに描かれている物語の、何て悲しいこと・・・
残酷で、痛々しくて、そしてイラつかせさえする。
美しい想像の世界が、そんなことのために在ったのかと、虚を突かれてしまうのだ。
だが、それこそが、想像の世界の裏の現実なのかもしれない。
作者の姿が見えないからこそ、その物語を絶賛し、楽しめる私たち。
この物語は、“想像する中途の作者”を、ナナメ切りにして見せる物語だ。
その心の持ちようで、いかようにも世界は変えることが出来るはずなのに、と、
見ている私達はその主観の世界を憂う。
そんな物語だった。
ため息をつくほどの美しい映像美、そして、残酷な世界観。
私は、この物語に引き裂かれるその傷を、美しくすら感じた。
倒錯の美学すら感じるほどに。
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この記事へのコメント
思い出しました!
独特の映像美、想像世界の素晴らしさ、
共通するところがありましたよね〜。
でも、あたしは実は「パンズ・ラビリンス」はあまり
好きじゃなかったのです。
皆さんの評価は理解できても同じように絶賛することは
出来ませんでした。
だけど、こっちはめちゃめちゃツボでしたよ〜!
とらねこさんがおっしゃるように受け入れられる人は
コチラの方がはるかに少なく、評価もされないかもしれないけど、
あたしはとってもワクワクしました♪
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
おー、miyuさんも、『パンズ・ラビリンス』を思い出しましたかー!
へえ、miyuさんは、パンラビ、あんまり好きじゃなかったんですか・・。んー。なんでカナ?
私も、この作品、すごく好きでした!
悲しい物語でしたけど、とっても心に残る作品ですよね!
少数派かもしれませんが、私はお気に入りですー!
さっそくこっちにもきちゃいました
で、結局わたしとらねこさんとすれ違ったのかなー?
気になっちゃってー^^
この作品は、美しい映像なんだけど
お話自体があんまり好みではなくって、、、
『パンズラビリンス』は大好きです〜

『ピアノチューナー〜』も観られるんですね、
感想お待ちしてますー^^
[パンズラビリンス]、私も好きで、
傑作だと思ってたのでこれも楽しみだぁ。
いま手元にDVDがあるんです。
見たらまたお邪魔します〜〜。
おはようございます〜♪コメントありがとうございます。
イヤイヤ、どうやらmigさんじゃなかったようです。すみませむー。
はい、ブラザーズ・クエイは、今ちょっぴり忙しいので、後回しになってしまいますが、楽しみにしています♪
この作品は、migさんはいまいちだったんですね。
うん、そう言われてしまう作品かなあと思いますよ。
おはようございます〜♪
コメントありがとうございます。
DVDが今、手元にあるんですね♪感想、お待ちしています〜。
パンラビほどウットリするような世界とは違うかもしれませんが、これはこれで良かったかな、なんて。
先日ホームから落下されたとらねこさんにとって、ロイ&アレクサンドラの災難は他人事ではなかったかもしれませんね。さすがにもうその時の傷も癒えたでしょうか
パンズラ・・・じゃないパンラビとは「少女のための物語」ということと、その少女に父親がいない(死んじゃった)というところが似てますかね
夢見がちな少女が空想にふける・・・という話はちょくちょくありますが、こちらは「青年に作ってもらう(途中からは共同作業)」というところが面白かったです
「残酷さ」といえば、アレクサンドラの手術のシーンにはぎょっとしました。あのままホラーになっちゃったらどうしよう、と思いましたよ
自分は終盤近くに出てきた階段だらけの建物が特に気に入ったのですが、とらねこさんはどの風景が印象に残っておられるでしょうか


こんばんは〜♪お久しぶりです!コメントありがとうございました!
そうですね、落下事件、ありましたありましたー。
よくぞ、覚えていてくださって、嬉しい限りです。
>さすがにもうその時の傷も癒えたでしょうか
何?見たいですか?
>パンズラとの共通点
ええと、自分が考えたのは、想像の世界というものが、現実世界での私たちに及ぼす影響、という点でした。
それぞれに違いはあるのですが、リアルとのバランスが面白いなと。
おっしゃる通り、こちらでは、青年と途中からの共同作業が面白かったですよね。
アレクサンドラの手術シーンは、おっしゃる通り残酷でしたよね。心が痛みました。
どの風景も極めて心を捉える美しいものでしたが、美しいが故に引き裂かれるものすら感じるところが、一番のお気に入りです。
そうですね、階段のある建物も良かったな。
セマーもお気に入りです。
でも、あとは…。
美しい景色だったかなあと感動しなかった自分、ちょっと寂しい。(苦笑)
おんぼろパソコンのせいか、とらねこさんのサイトのブログパーツのあたりをスクロールしてると、負荷が大きいせいでしょう、フリーズして困ります…。
TBふたつ重なってしまったので、いっこ削除してくださいね〜。

こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
え、ボーさんは、この映像を見て、美しいと思わなかったんですかー。へえ、そんな人も居るんですね。
え、このページ、重いですか?私のPCも実にボロくって、TBを返すのにも驚くほど時間がかかります。なので、なかなか返せなかったりするんですけどね。
私は、このページを軽くするのに、自分としては精一杯のことをしているつもりなんですよ。
だって、そうでないと自分が辛いので。
たとえば、横にたくさんアフィリエイト貼ってる人なんかは、重くて困ります。
自分がしていることで軽くなる努力は、「つづきを読む」設定にしていること、最新記事も10個までしか表示しないこと。
時間がかかるとすれば、スクロールにする設定ですね。Blogpetで重いのは、きっとメロパと『ダイアリーオブザデッド』でしょう。動画だから。
僕も『パンズラビリンス』が好きなんですが、この映画はさらに好きですね。『落下の王国』は、美しさや残酷さに加えてちょっとしたユーモアもあり、最後には希望も与えられる素敵な映画でした。
とにかく映像が美しかったですね。あれだけ壮大な場面の数々をCGを使わずに撮影したというのは驚愕です。ターセム監督の4年間が凝縮した作品でした。

こんばんは〜♪コメントありがとうございます。
とってもお久しぶりでした。
最近はどうされているかなー?とは思っていたんですよ。
そうですね、この作品、なかなか悲しい物語運びであったからか、正当に良さを評価していない人が多いのかな、って思ってます。
この監督、元々残酷な人ですからねw
普通のワクドキするファンタジーになる訳がないんですね(笑)
すごい映像でした。あの映像美だけでもまた堪能したいな。
>初めの登場こそ、とてもワクワクさせるような冒険物語なのに・・・
そうですね。それがだんたんと残酷な色合いを帯びてくるところは、図らずも現実の艱難辛苦を空想世界に投影してしまう大人ゆえの悲しい性かな、という気がしました。でも、そこが作品としての大きな魅力でもあるわけで、自分の願望や欲望をそのまま叶えてしまうのでは単なるマスターベーションになってしまったかも知れません。
それと、叙事詩パートでの美しさや爽快感では「パンズラ」を圧倒的にしのぐものがあり、最後まで非常に楽しむことができました。
椀さま
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
>図らずも現実の艱難辛苦を空想世界に投影してしまう大人ゆえの悲しい性
>でも、そこが作品としての大きな魅力
こうしたものを冒険物語の素材として逆説的に用いることは、大きな危険を伴うことでしたね。
だけど、絶望に駆られたことのある人や、鬱になりがちな人、冒険物語の主人公にはなり得ない人・・・そういう人には、どこか苦しみを感じつつも主人公の気持ちが分かるんじゃないかなと感じました。
要するにヘタレの物語なんですよね、勇猛果敢なポジティブシンキングの人には分からないですね。
私としては、「それをやるか?」と思いましたよ、正直。
でも、“逃避”としての想像力の持つ、また別の一面だと思います。
映像の美しさは、意味がないんですよね、彼にはね。
だからこそ心を引き裂くものとなりました。
はは。僕も「パンズラビリンス」同様、10点満点中9点を献上してしまいましたよ。
こちらこそ、TBありがとうございます。
なかなか良かったですよね。
私はちなみに、こちらは4.7点、パンズラビリンスが5点満点です。
って鑑賞後激しく後悔しました。セルのターセム監督ってことで公開時に見たかったんだけど見逃して、そのときの評判がイマイチだったからDVDになってもずっとスルーしてたんです、で、やっと見ました。
めちゃめちゃ良かったッス!映像世界もそうなんですけど、命はって映画作ってるスタントマンへの感謝を通して、映画制作に携わる苦労人たちへの賛歌がメッセージになってるように感じちゃって、大感動してしまいました。古い記事だけどTBしまーす。
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
おおー♪これ見てくれましたか!
めちゃめちゃ良かったですか!嬉しいな。私もこれ、とっても好きでした。
いやー実は、つい先日この映画について話していたところだったのです。『Dr.パルナサスの鏡』を見た後に、その想像世界と比較する上で、この作品の映像を思い出していました。
同じ想像世界を描いた映像でも、CGを使わずして、2Dでこれだけ感激できる映像でしたしね。
しかし、スタントマンへの敬意ですか、なるほどー。
『セル』は一度見たきりの映像ですが、忘れられないシーンなんかもありますしね、これも同じでした。

