2008年07月09日
99●イースタン・プロミス
ストーリー・・・
病院で働くアンナ(ナオミ・ワッツ)の下に、一人の少女(サラ・ジャン=ラブローズ)が運び込まれる。意識を失くした少女は、女の子を産み落とし、息を引き取る。バッグに入っていた手帳にはロシア語で日記らしいものが書かれており、少女がロシア人であることが分かる。手術に立ち会ったアンナは、少女の身元を確認するため、ロシア料理レストランのオーナー(アーミン・ミューラー=スタール)に相談すると、自分が日記の翻訳をしようと申し出る。しかし、その後、謎のロシア人、ニコライ(ヴィゴ・モーテンセン)がアンナに近付き始め・・・
'07年、イギリス。
デビッド・クローネンバーグ監督。
ぐいぐい目を引きつけて、決して退屈しないのは、物語を語る視点が、一方向からではないからなのでした。
ロンドンに巣くう悪名高いロシアン・マフィア、“法の泥棒”・・・。
だけど、何の関係もない一般庶民がこのマフィアに知らず関わっていき、そして無鉄砲にも盾突くような行動を取っていく・・・これには参った。ハラハラドキドキ。
怖くって観てられないよ〜と、手に汗握りながら見ちゃいました。映画って不思議ね。
例えば『ゴッドファーザー』の映画を見る時に、もしくは何かヤクザ映画を見る時に、「このジャンルが大好きな映画」、と言う人には分からないかもしれないんだけれど、
自分にはその世界に入っていくのが面倒だ、というのもあったりします。
それは、ヤクザさんもしくはマフィアの持つ法やルールに、自分が近しいものを持っているワケではないから、
そこへ共感したり、主人公の目線で物語を追っていくのが、なんだか遠い。
そのヤクザさんが位置している遠くの彼方へ、モチベーションを上げていくには、物語の語り口が上手かったり、演出が面白かったりして、目を離さないような工夫を凝らしてくれないと、
見ているこっちは何となく面倒くさいな〜と、気が重くてなかなか入り込めなかったりするのですね。
で、この物語は、弱々しい一般人の女性が、何気なく目にしたある一人の妊婦の死。
彼女が手にした、“読んではいけなかった日記”によって、本当は避けておくべきだった闇社会の世界へと、入っていくのでした。
この距離感というものが、遠ければ遠いほど、余計彼らと、彼らの残虐さが怖ろしい。
物語は、いつの間にか、目立つ存在である、ニコライ(ヴィゴ・モーテンセン)が出て来て、徐々に彼の目線へとシフトしていく。
この“徐々に”というのが、とっても上手かった気がする。
ニコライの非情さ、仕事の早さ、合理的な冷酷さが目を引く。
そして、彼の現在のボスであるキリル(ヴァンサン・カッセル)の幼稚さ、未熟さがまた怖ろしくて、次第にニコライへ焦点が定まっていく。
物語は、全身素っ裸で、“タトゥーの誓い”をニコライが受ける、その辺りから急転直下で物語の舵取りの方向性が変わっていく。
“その目線”で見ていた主観が、さらにまた別の背景があったことで、物ごとの見る目がまた180度変わってくるのだった。
全く予想していなかった、その方向性の転換に、おおっ、と目を奪われた。
この主観の切り替わりが、非情にスリリングだった、その感触はまるで『インファナル・アフェア』かあるいは『ディパーテッド』のよう(笑)
(この言い方はいろいろ言われそうだけど。)
素っ裸で刃物と戦うニコライの姿は、「こんなの、見たこともない!」と言ってしまいそうになるほど恐ろしい。
風呂場でアクション、というのはジャッキー・チェンの『アクシデンタル・スパイ』を見て、「すげっ!」と思った記憶があるけど、
あんな感じのヒョイヒョイ身軽さはもちろんなくw。
リアリティを追求したアクションだったので、重苦しくて、痛くって、自分が戦っているかのようなリアリズムすら何だか感じてしまったのでした。
あとやっぱり良かったのは、ヴァンサン・カッセル。
自分は、この人を見ると、いっつも苦手だなあーと思ってしまうんだけれど、今回もやっぱり苦手なタイプ。ワガママ・マフィアのボンボン役。
こういうタイプの、屈折した愛情を抱えている人って、本当手がかかるよね・・・。そんな心理的な怖さを表現していて、さすがでした。
ヴァンサン・カッセルだからこそ、この手の屈折感が出てるんだな、やっぱすごいなと。
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この記事へのコメント
ごらんになりましたか。
「ディパーテッド」はどうも私は肌に合わなかったのですが、この作品はなぜか惹かれるものがありました。
キリルは本当に興味深い役どころだと。
彼もなんとも可哀想な人ですよね。
とにかく、なんか観終わったあと不思議と色々と考えてしまって、後に引かれた映画でした。
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
そうですね、この作品は、最初からずっと退屈せずに見れちゃいましたね。
キリルの役どころも面白かったですよね!
ヴァンサン・カッセルならではの複雑さがまた味わいを添えてましたしね。
そういうことを言ったらおしまいですが、そう思うんだから、しょうがないですね。
イエジー・スコリモフスキーが出ていたのに、びっくりでした。
なんか、わかる気がします。
マフィアもの、ヤクザものって、現実社会が舞台ではあっても、
一庶民からは別世界(別のルールがある社会)なので、
ある種、ファンタジーやSFを見てるのと同じように、
その世界観を理解する所から、スタートしなくてはならないですもんね。
私もこれは見応えありましたね〜
寡黙で説明的でないのにわかりやすいのは、画面の力と、演技力。
派手にドンパチ打ち鳴らすよりも、刃で一瞬で片付けるのも、恐ろしくも美意識さえ感じ。
90分の短さながら、ずっしりとした味わいでした。

こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
>イエジー・スコリモフスキーが出ていたのに、びっくりでした
へえ、ポーランドの監督さんなんですね。
それは知らなかったです。教えてくれてありがとうございました。


こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
>その世界観を理解する所から、スタートしなくてはならない
そうなんですよね。ヤクザものって、それが理由でなんとなく見るのが「面倒だな」ってのがあるんですが、
この作品は全く退屈せず、いつの間にか「ソチラ側」の世界に居たのにビックリしました。
ぐいぐい引っ張っていったので、面白く見れたし、上手でした!
本当本当♪ずっしりとした見ごたえある人間ドラマで、嬉しくなるぐらいのいい作品でした!
そうですね、美意識すら感じましたね。
迫力ある画で大満足です。
少々気が早いけど、私としてはこの夏のベストですねえ。
モーテンセンもカッセルもすばらしく生かされていて、昔はこんなに人間に興味なかったはずのクローネンバーグも、もはや円熟といって良い完成度の演出でした。
この暗く冷徹な情念は「ディバーテッド」よりは「インファナル・アフェア」かな。
こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
おー!ノラネコさんはこちら、大分気に入られたようですね。
この夏のベストはこれですか!これは映画好きにはグッと来る佳作でしたね。
おっしゃる通り、役者の演技の深みがよりこの作品の出来を引き揚げていたと思います。
クローネンバーグの円熟!まさに私も同感でした!
ロンドンが舞台なのにロシア映画見ている気分。よくわからないけどヴィゴのロシア語も見事(?)
目を覆いたくなるような場面も多かったけど、必然性があるので納得!そして何よりヴィゴの魅力ある「ヒール」ぶり!好みの顔ではないけど存在感あって惹かれます。精悍な顔&無駄肉のない身体はヒールの必修条件?
数年前訪れたヒースロー空港の入国検査がスゴク厳しかったのは世界中の人種が集う街だからかな?

さんへこんばんは〜♪コメントありがとうございました!
そうですね、ロシアの風情が感じられるイギリス映画でしたものね。
私も、ヴィゴもまさか、ロシア訛りのロシア人の役とは思わなかったので、冒頭ビックリしましたけど。ロシア語も喋ってましたしね☆
本当、ヴィゴの魅力溢れる映画でした。
私としてはアラゴルンが!良くて忘れられないのですが、この映画もかなり良かったです♪
ヒースロー空港は、入国検査が厳しかったんですね。
本当、入国審査のチェックだけでなかなか時間を取られると、大変だしイライラ・・・でも、確かに犯罪防止のため仕方がないのでしょうか・・。
>そのヤクザさんが位置している遠くの彼方へ、
モチベーションを上げていくには、
物語の語り口が上手かったり、
演出が面白かったりして、
目を離さないような工夫を凝らしてくれないと、
なるほど納得です。
ところでとらねこさんは
『仁義なき戦い』シリーズとか
『緋牡丹博徒・お竜参上』『博奕打ち・総長賭博』とかは
あまりご覧にならないのかな?
このあたりだと、特にヤクザ映画ファンでなくても
(ぼくもそうですが)
十分に楽しめると思いますよ。


こんにちは〜♪コメントありがとうございます!
おお、ヤクザ映画の傑作を教えてくれてありがとうございます〜★
とらねこは、残念ながらその辺りは、あまり見たことがないんですよ・・。
何か面白い映画が眠ってそうではありますね!^^
ただ、そういうのって「男としてどう生きるか」というテーマかな、って。
自分はただでさえ、世間からズレてしまっているので、そういうのに感化されると世間から余計ズレちゃうのかなあという危惧が

そんなわけで、自ら進んで見る気をついつい失ってしまって今に至るんです・・ハハハ^^;
でもそうですね、私の愛する三池監督が好きなヤクザ映画があったら、見てみたいです^
^(ってわけでもないか?)
私はクライム・バイオレンス好きですから、
まずそれでこの作品は、その雰囲気に引き込まれましたね。
そしてニコライ。彼の男香漂う雰囲気も満足です。
風呂場のシーンもかなりリアル・ファイトで良かったですが、個人的なことを言わせてもらえば、やたらとスマートな演出が好きなんですけどね。
ちなみにこの先楽しみにしている作品は
「ウォンテッド」
です!

こんにちは〜♪コメントありがとうございました。
>とらねこさん、毎度!(ってわけでもないか?)
ええっ。寂しいナ〜、「毎度」っていうぐらい、遊びに来てくださいよぅ。
CINECHANさんもこの作品、お気に入りだったのですね。
私もすごく面白く見れました。
あの風呂場のアクションは、痛そうで、思わず目を覆いそうでした!
と言いつつ、見開いていた・・・カナw
>ウォンテッド
あはは、予告では思わず笑いました。アンジェリーナ・ジョリーが、久々にピッタリのアクションて感じですね。
でも、ジェームズ・マカヴォイの出演はちょいとガッカリです。
自分としては売れっ子俳優になるより、アウトサイダー的実力派俳優が好みなので。
もう、ジェームズ・マカヴォイは好きじゃないかもです。
早www
ずいぶん前ですけど、観ましたよー。
デビ・クロ監督の演出、物語の展開等ほんと円熟の極みみたいな感じでしたね
前作より「イースタン〜」のほうが好きかな。
でも、完全なフィクションじゃないところがそら恐ろしいというか、なんというか・・・
現在でも人身売買が横行しているという現実が重いっす。
「ホステル」みたいだと視点が別の方向にいっちゃってツクリモノって思って、そういう社会問題には目が向かないんすけどwww
確か割りと最近のフランス映画で人身売買を絡めたコメディ・タッチの映画、ありましたね
タイトルなんだっけかな?
全編手持ちデジカメで撮った主婦が売春婦をかくまう物語で
あれも意外と面白かったなー。とらねこさん、見ました?



さんへこんばんは〜♪コメントありがとうございました!
おー☆やっぱ、サイさんご覧になってらしたんですね♪
そうかと思った〜。私の方が、UPするの遅かったですね。ごめんなさい・・。
今度はもっと早く書けるように頑張ります

うん、円熟でしたよね〜。と言っても、丸くなったわけじゃないところがまた良くて

そうですね、『HOSTEL』は、社会問題とは違いましたね・・ただ、こっちは人の命そのものがゲームの的になってましたね〜。
え、フランスの映画で人身売買を絡めたコメディ?
んーなんだろ?私が見てないものってことですよね?
手持ち・・えっデジカメ?もしかしてコリーヌ・セローの『女はみんな生きている』カナ?
これ、『サン・ジャック〜』の監督さんですよね(私見てないけど)
自分でも「観たら報告しよ♪」って思ってたんですけど忘れてしまいましたw
それです!『女はみんな生きている』です。その通りです。
重い問題をちらつかせながら、メインはコメディなので・・・
ブラック・ユーモアだったかな・・・とにかく楽しめる作品だと思います
見終えたときに、メッセージを残しつつ、説教くさくなくて、
さじかげんがうまい作りしてるなぁって思った記憶があります
あ、そうだったんですか!
良かった!サイさんはデビクロ監督(この言い方面白★)好きなはずなのに、コメントくれないなんて‥私の記事の内容が不十分なのかな?と、ちょっとイジけておりました!(笑)
で、『女は〜』、この映画オススメなんですね!
サイさんのオススメは、私も本当に好きそうダナ〜って思います♪
是非見てみたいです。
PS‥なかなかDVDが進まなくって、アノ作品をまだ見れてないです・・うう。ごめんなさーい・・焦っ
ロンドン・マフィアものかと思ったらロシアン・マフィア。
なのでより重く暗い、重厚な男のドラマが楽しめました。
ロシアン・マフィアの掟やしきたりがきっちりと描かれていて、ロシアン・テイストがとても詰まってましたね。
馬鹿息子に甘いのは万国共通か。
結局、下っ端は使い捨てにされるのね。
とか思ってたら、あんなオチが有るとは意外でした。
渋い役者が揃っていて、見所満載でした。
サウナはガチンコでしたしね。
こちらにもありがとうございました〜♪
重厚な男のドラマ、まさにその通りですね。
この作品は、今年かなり満足度が高かった作品です。
仙台では今ごろの公開なんでしょうか?
私も、すごく楽しめましたよ。
健太郎さんがご覧になったとは、嬉しい限りですね。
おっしゃる通り、ロシアン・マフィアの雰囲気もバッチリ。
単なるバカ息子かと思いきや、ヴァンサン・カッセルの演技により、より深みを感じられる役作り。
ここがまた素晴らしかったです。
TB&コメントありがとうございます。
仙台では9月の公開でした。
blogでレビューを読んで、観たかった作品です。
元々、ロンドン・ギャングやフレンチ・コネクションが好きなのですが、今作は更にロシアン・マフィア。
たまりませんでした。
>ヴァンサン・カッセル
こう云う役も上手いですね。
『ジェボーダンの獣』で妹に執着する兄と同じぐらい性格に難の有る役を上手く演じてましたね。
こちらこそ、TBコメントありがとうございました。
お、仙台では9月にやってたのですね。
私は、これはかなり好きでしたよ、
健太郎さんはやはりノワールムービーお好きだったんですね!
ノワールムービーを褒める確率が多いので、もしかしたらそうかな、とは思ってました。
『ジェヴォーダンの獣』!懐かしいですね。
私もこれ、当時映画館で見ましたよ。
自分にはヴァンサン・カッセルというと、『ドーベルマン』のイメージが強かったりするんですが。
フランス映画のイメージが変わった映画だったので、忘れられないだけなのかもしれませんが。
そうそう,インファナル〜を少し思い出しました。
後戻りできない世界に足を踏み入れた男の孤独とかね〜
ヴァンサンの馬鹿息子ぶりはハマってましたね。
ほんと,最近こんな役が多い彼ですが
確かに屈折した役がうまいですね。
彼のお顔や雰囲気はどう見てもロシア人には見えなかったですが
そこはま〜,ご愛敬ということで・・・。
ヴィゴの全裸格闘シーンは圧巻でした〜。

こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
そうですね、『インファナル・アフェア』、思い出しますよね〜★
『アンダーカヴァー』見ても、同じこと言ってしまいそうですけど^^;
ヴァンサン・カッセルはすごく良かったですね!
あれ、ロシア人に見えませんでしたか?
「典型的なフランス人」というルックスがどういうものか分からないんで、まーいっか、なんて思ってしまいました。
でも確かに、ヴィゴがロシア訛りで喋っているのと較べると、ロシア人には見えないかな?
やはりヴィゴ・モーテンセンは凄いですわ。
こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
>サウナで戦うといえば、『マキシマム・リスク』のジャン・クロード・ヴァン・ダム
そうだったんですかー。私は、ジャン・クロード・ヴァン・ダム苦手で、あんまり見てないんですが。
ちなみに私は『アクシンデンタル・スパイ』のジャッキー・チェン』を思い出しました。


