2008年06月14日
85●マンデラの名もなき看守
ストーリー・・・
アフリカで刑務所の看守として働くジェームズ・グレゴリー(ジョセフ・ファインズ)がロベン島の刑務所に赴任した1968年、アパルトヘイト政策により、反政府運動の活動家の黒人が日々逮捕され、投獄されていた。グレゴリーはそこでネルソン・マンデラ(デニス・ヘイスバート)の担当に抜擢される。黒人の言葉・コーサ語が解るので、会話をスパイするためだ。妻のグロリア(ダイアン・クルーガー)は夫の出世を喜び、順風満帆のようだった。・・・
'07年、ドイツ・フランス
ビレ・アウグスト監督・脚本。
27年間、塀の中に収容されていたネルソン・マンデラ。看守との静かな心の交流を描いた物語。
南アのアパルトヘイトに立ち向かっていった、ネルソン・マンデラと言えば、現代の英雄に違いない。その一方で、その長い闘争の最中に武力行使を辞さない戦いもあったのも事実だったようで、その内容もかなり過激なものだったらしい。
そのくせ、ここではそうしたことはあまり描かれてはいなくて、内容は、綺麗に上澄みを掬った様な印象を感じさせられる。
ネルソン・マンデラが牢屋の中にいる期間。その間のことであるから、実際に戦う姿が描かれていないのも致しかたないのか・・・という気持ちはあるけれど。
自分の中で何とはなしに『ヒトラーの贋札』を思い出させられた。ナチスドイツとアウシュヴィッツを描いていながら、そのド真ん中をまさに外れていた映画だったから。
ユダヤ人収容所でありがなら、贋札作りをする、特別な囚人を描いたことで、別の箱の中の世界を見せたように。
この作品では、ネルソン・マンデラがすでに牢に入れられていて、戦う兵士やアパルトヘイト政策を施していた政治機構そのものが直接的に描かれているわけではない。政府はマンデラを監視し続けるという役割を続け、だが彼を殺すことなく、長い間の国内紛争は、決して止まないという状態。
マンデラが抵抗勢力の人々の大きな心の拠りどころであったがために、彼を一思いに殺すことも出来ず、苦心惨憺した政府が、27年間という長い間彼を拘束していたのだ。
物語の描き方はというと、それほど細密な心理が描けてはないなかったのが残念。
これから昇進を控えた、人種差別主義者であったジェームズ・グレゴリーが、ネルソン・マンデラに出会い、その彼の思想に影響されていく姿に、もう少し説得力が欲しいところ。
自由憲章を読んだというそれだけで、これまでの彼が持っていた人種差別思想に影響を与え、それらがガラっと変わった、という描き方であるのだけれど、そのあまりの変わりようが、なんだかもったいない印象がしてしまった。
当時極秘事項として国家機密にされていたはずの自由憲章を、読みたいと思い、それを手に入れてしまう。それまで全く違う考えだったはずなので、彼が考えを変えるまでの道のりにもう少し変遷を見せて欲しかったかな。
とは言え、ネルソン・マンデラを演じたデニス・ヘイスバートは、凄く威厳たっぷりに思えたし、
コーサ語を教えてくれた子供の頃の友人がくれた、お守りを大事にするシークエンスなんかは私はすごく感動してしまったし。
そういう二つの相反する考え方の中で、心が揺れ、
結果として自分の信じる方へと傾いていくジェイムズ・グレゴリー。
ネルソン・マンデラという人を描くのではなく、周りから描いたというこの映画だったのね。
映画として、当たり前のような表現しかしていなくて、あまりにアッサリしすぎだったのでした。
今現在も生きている人の伝記映画って、やっぱり面白くない。
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この記事へのコメント
マンデラ氏、グレゴリーの人物像もヨカッタの
ですが、個人的に心底感化さているワケでもな
いのに、生まれ育った環境から当たり前のよう
に差別意識を受け入れ、尚且つ周りからの目線
や体制に従っていなければ家族を守れないこと
を知っていて「黒人はテロリスト」と言ってし
まっているグロリアと言う人が個人的に一番興
味深かったですね。
正直なことを言うと、マンデラ氏の人となりを
語った作品かと思ってたんで、チョイ肩透かし
を喰らっちゃいました…r(^^;)
さんへこんばんは〜♪コメントありがとうございました!
そうですね、私もちょっと肩透かしを食らってしまったかな。。。
確かに、グロリアって奥さんには、少しイライラさせられましたね。
ただ、この時代のアングロサクソン系の人の一般的な姿が、この彼女のようだったとしても、さほど驚きはしないかな・・。
むしろ、自分とそのダンナの出世の方がきっと大事で、周りの目ばかり気にしてたのでしょうか。
物ごとの本質とかを考えない人は、こんな感じだったんでしょうね。ジェームズ・グレゴリーと好対照に描かれている人物でした。
私もとらねこさんと同じ感想を持ちました。
題材は良いんだけれど、もうちょっと心理描写を突っ込んで描いて欲しかったな〜。
ラストの1文が言えてるわ〜と思っちゃった。
やっぱり主人公が、まだ生きている間の映画っていうのは、当然作り手にも遠慮があるだろうし、ガツンと来る映画は作れないのかもしれませんね^^

こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
そうですね、なんとなく肩透かし感を感じちゃいました。
どうも関係者が作った映画とかは信用できない、なんて思うんですが、それだけじゃなくて、今まで映画化されるのを反対してきたネルソン・マンデラが、この映画ではOKした、というも、ちょっと引っかかってしまった私だったのでした・・。


