2007年02月24日
#31.受取人不明
’01年、キム・ギドク監督。
朝鮮戦争終了直後の50年代。在韓米軍基地のそばの、とある田舎町だ。アメリカ米軍との間に出来た私生児であるチャングク(ヤン・ドングン)は、犬商人の下働きをしていて、「犬の眼をしている」と言われる。
チャングクの母は、まだその父を恋していて、手紙を出すが、“受取人不明”で戻って来てしまう。
一方、学校に通わず働いているジフム(キム・ヨンミン←『春夏秋冬そして春』にも出演)は、片目を事故で失った少女、ウノク(パン・ミンジョン)に恋をしていた。
そんなある日、ウノクの犬がいなくなった。・・・
ネタバレの感想となっています:::::::::::::::::
在韓米軍に対する、もしくは反アメリカの感情のみが表されている訳ではない、とギドクは言う。
ウノクの目の手術を施し、助けたアメリカ軍人は、ウノクにLSDを一緒にやるよう勧めたり、また傷つけたりもする。やはり同じ人間なのだ。傷つきもするし、軍に所属することを馬鹿らしく感じていたり、最後は思い詰めた行動にも走る。
チャングクは、自分の母の一挙手一投足に反発を覚えたり、それでも父を恋しく思ったり、そうした感情は一筋縄でこう、と割り切れるものではない。
犬を殺すのを良く思わない一方で、とうとうそれに従ったり、ジフムがカツアゲされるのを助ける一方で、最後はやはり、犬商人に対して“目には目を、歯には歯を”式の彼なりの処罰を与える行動に走る。
ジフムは、目の手術に反対するが、「この顔を一生愛せるか」と言われると、答えが詰まってしまう。そして、ウノクは米軍人のもとへと去ってしまう。
ウノクは、目を治してもらうも、刺青を胸に施されるのを嫌がって、むしろ自分からまた元の傷ついた目に戻ってしまう。
人々の思いは皆全て届かず、それは“受取人不明”の手紙と同じようなものだ。
ラスト、殴られても息子を愛してやまなかった母の元へ、手紙がとうとう届くが、その時には、彼女はもういない。
複雑そのものの人の思い。一石を投じられた波紋のように拡がって、人々の行動は誤解を生んだり、悲劇へと繋がってゆく。
人の気持ちが届かない、もしくは、届いた時には、もう遅い。
私は、この物語で、正直、何を思えばいいのか分からない。
何を救いにすればいいのか、わからない。
犬商人が、犬と同じように吊るされたりする姿を見て、それは仕方がないことだ、と思う人はおそらくいないと思う。私は、そうした行動を取る、チャングクのその後が心配だったし、そのように人の悪意が連環していくそこ、運命の繋がりじみた狂気には、カタルシスはなかった。
そしてこの物語は、おそらく、そうしたカタルシスを描こうという作品ではなかったのだと思った。
ただ、ジフムが最後、自殺を選ぶのでなく、警察に出頭し、自分の父親に、せめてもの金の功勳章を返すシーンには辛くなった。
また、チャングクの母親の、あくまでも息子への愛が変わらないことにも、心を動かされた。
だけど、それらはおしなべて、もうタイミングが遅いのだった。
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この記事へのコメント
カタルシスはないですね。
だけど、どこか、このよろよろと歩く片目の3人に、感情移入して今いました。
僕はおもしろかったです。
とらねこさんはイマイチだったぽいなw
どうでしょう。
セリフが多くてギドクとしては異質のものでしょうか。
荒削りっぽいところもまた良かったです。
この作品、グッと来ました。
思い出しても涙が出ます。
「ポコアポコヤ 映画倉庫」さんのレビューを読んで、チャングクが半分だけ土に埋まった理由は、半分だけ韓国人だったかららしいと聞き、更に泣きました。
>人の気持ちが届かない、もしくは、届いた時には、もう遅い。
この表現、いいですね。
「受取人不明」なのは、アメリカに帰った父だとばかり思っていたのに、実は・・・という所に泣けてきます。



さんへこんばんは★コメントありがとうございました。
3人とも片目を怪我して歩く姿、なんだか笑えるような、ちょっと皮肉なような、面白いシーンでしたね。
カタルシスはないですが、この映画はそうしたものではなかったですよね。

コメントを書いたのに、livedoorの不具合でコメントが反映されていませんでした。どうもすみませんでした!!
ぬぬ、いや別にイマイチではないですよ。
複雑な人間関係なのに、うまく描き切っているなあ、と思いました。
『春夏秋冬そして春』で言うと、“秋”の作品な訳ですよね。
こうした人間への、憤慨といったものも、ギドクの中にはあって、そして後の作品へと移行してゆくわけですもんね。
ただ自分の場合、どうしてこれが大丈夫で、フォン・トリアーが現象さんがダメなのか、分からないんですよね・・。

こんにちは☆コメントありがとうございました!
なるほど、チャングクが、半分だけ土に埋まった、というその見方、なるほどと思いました。
あの“風のファイター”みたいなシーン、忘れられませんよね。
受取人不明という、このタイトル。手紙のことだけじゃなかったですよね。
>人々の思いは皆全て届かず、それは“受取人不明”の手紙と同じようなものだ。
なるほど、今まで全然気づきませんでした。映画のタイトルにはおそらくそういう意味も含まれていたのでしょうね。
人々の思いがどれひとつ噛み合ないのに、悲劇の歯車だけがピッタリ噛み合ってしまう、そんな物語だったと思います。特に、孤独な少女ウノクのうつろな目つきが印象的で、心にグサリと刺さりました。アメリカへの反感・怒りというよりは、少年少女たちが置かれた(どこに怒りをぶつけて良いのかわからない)閉塞的な状況そのものへの苛立ちを描いた作品なのかも知れません。
狗山椀太郎さんへ
コメント&TBありがとうございます〜!
>人々の思いがどれひとつ噛み合ないのに、悲劇の歯車だけがピッタリ噛み合ってしまう、そんな物語だったと思います。
その通りですよね。ここまで上手に色々な関係を描いていて、しかもその悲劇の歯車がピタリと合っていた。
うん、いい表現だと思います。
>少年少女たちが置かれた(どこに怒りをぶつけて良いのかわからない)閉塞的な状況そのものへの苛立ちを描いた作品なのかも知れません
まさにそうですよね!
アメリカだけではなく、それが周囲に与える影響というものも全て眺めていた視点だったと思います。
ぜひ『龍が如く 劇場版』も!
なにしろ三池崇史監督ですし・・・
おお、その意味深なコメントは、kossyさんの『龍が如く』の記事の一言目に繋がる訳ですかっ!
『龍〜』はもちろん見るつもりでしたぁ。
ただ今週は、ギドクで忙しく、なんと昨日の日曜から考えて週6で映画館に通いつめなければならないので、来週か、さ来週になってしまうかなと。
見たら読ませていただきますね〜♪
>人々の思いは皆全て届かず、それは“受取人不明”の手紙と同じようなものだ
もっと話せばお互い分かり合えるのに、なんでまた言葉足りない人たちだろう..とか、こんなに悲しみだけしかない人たちなんているわけない、ギドクさん、こりゃやりすぎだ...とか思っちゃたのは別として、やっぱ面白い(良い)。映画だしな!
>この物語で、正直、何を思えばいいのか分からない。何を救いにすればいいのか、わからない。
僕もこの悲愴感ばかりの物語に絶句でした。
どこにカタルシスを見出すか、残酷描写のほうが色眼鏡で見れてしまい、米映画の「クラッシュ」ほど洗練されていませんが同じような感触をもちました。

こんにちは〜★コメントTBありがとうございました!
mottiさんも、ごらんになりましたかあ!
>もっと話せばお互い分かり合えるのに、なんでまた言葉足りない人たちだろう
そうなんですよね、この映画、コミュニケーションが不在でした。
ギドクって、なんだか時々、コミュニケーションの断絶というか、お互いが個人として、繋がっていく、というより、一つ一つの核が離れ島のようになっている表現が多いという気がする私です。
で、おっしゃる通り、それらが『クラッシュ』のようにぶつかっていくような感じもあるんですよね。
『レミー』の記事ではコメントでお手数おかけしてごめんなさいね!
実は最近スパムが酷すぎで、禁止設定しまくっていたのです・・。何かにひっかかってしまったのだと思います。
アダルトなNGワード以外は外しました。すみません。。
で、『受取人不明』です。とらねこさまはギドクコンプされたのですよね?
私はこれで8作品クリアです。いや〜もう、ギドクの怒りとエネルギーが大爆発した作品でした!
拙記事ではこの映画の凄みが全く伝えられてなくて情けないのですが、TBさせていただきました。
ではでは、今後ともよろしくお願いします。

こんばんは〜☆コメントTBありがとうございます!
スパム、最近本当酷いですよね。うちのところは、毎日スパムTBが来ます

わざわざNGワード外させてしまい、すみませんでした。
この作品は激しい作品だったような、その割に淡々としていたような・・・
この作品が好きだという人も結構居るんですよね。
ごめんなさい。またはじかれました。
ちなみに、エロネタは一つも書いていないのですが・・・
諦めますね。
随分前の記事なのにコメントすみません

>人々の思いは皆全て届かず〜
大納得してしまいました。
一瞬触れ合うようなんですけど、一方通行なんですよね。
どこまでもチャングクを思う母親の気持ちだけでも届いて欲しいと思いました。
今まで観たギドク作品の中で一番救いようがなくて悲しくて仕方なかったです。
さんへこんばんは〜♪コメントありがとうございました。
いえいえ、謝らないで下さいね。
私は古いところにコメントもらうの、全然嫌じゃないですよ。
ましてや、ギドクのところだったら、本当に嬉しいんです。
そうですね、ヨゥ。さんのおっしゃるように、チャングクの母親の思いは、考えると本当に切なくなってしまいます。
これは完成度の高い作品だとは思うのですが、
他の大好きなギドク作品に比べちゃうと、自分にとってはちょっと落ちてしまうんですよ。
でもギドクって、人間性を否定していたり、上から目線で語る、という感じは受けないんです。

