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『ジャクソン・ハイツ』 ワイズマン流“街と人”社会学研究

jackson_poster去年の東京国際映画祭でも評判の高かった、フレデリック・ワイズマンの3時間超のドキュメンタリーを、ラテンビート映画祭にてようやく鑑賞。
見る前こそ、3時間は面倒だよなあとか、難しそうだなとか、ワイズマンは鬼門かもしれないなどと思っていた不勉強な私だけれど、いやいや重い腰を上げて大正解でした。
文句なしの面白さは、天晴。

人種の坩堝アメリカと言えど、今や世界的不寛容の時代。多様性の重要さを説くことがいかに難しいか。難民問題が取り沙汰されて以来、逆行感のあるテーマだったかもしれないが、今年はさらにその風が厳しく感じられる。
ニューヨークのクイーンズ地区を描いた作品ではあるけれど、メキシコ移民の多く暮らしている場所でもある。ラテンビートでこちらがかかるというチョイス自体、さすがだなあ。とてもとても素敵だ。

まるで社会心理学の実地研究のように、“街”と“人”を切り取っていく試みの中で、こうまで何かしらがクローズアップされてくるものなのか。単なる地域の問題ではない、アメリカ全体が抱えている、いや現代社会が抱える問題点をズバリ提起しているように思う。
事象の内の重要な点についてのみことさらに強調するのではなく、並列に取り上げる感覚。
目線はとても真っ直ぐで、上から目線では決してなく、対等でかつフラット。豊富な視点を感じるワイズマンの手口。

大きなショッピングモールが、そして巨大資本の不動産会社が、地域の人間を踏みにじっていく。資本主義の結果として、人間やコミュニティ主体ではなく、経済を中心に回したことで起こる弊害の数々。
社会学で目にしたことのある言説ではあるけれど、こうして“人の顔”が映り、彼らの生活が踏みにじられていく手口を知ると違って感じられる。これこそ映像の力。
もともとあるアメリカの格差は、こうしてより大きくなっていくのだと思う。そしてそれらは止められない。それをつぶさに見ている感覚がして、とてもいたたまれない。

ゲイ・コミュニティを描いた視点は、差別が描かれながらもある種楽しく見れる。どこか逞しく、羨ましい気もする。コミュニティに帰属している彼らの一体感や連帯感を感じるためだろう。
かと思えば、老人ホームのパーティーの次のシーンには、唐突にまた別のお婆ちゃん達の会話が始まる。これまた強烈だった。誰も話し相手が居ない、と言う最高齢の老婆。子供を散々育ててきて、みんな一人立ちしているのに、自分の面倒は誰も見ない、話し相手が誰も居ないと言う。そこに居た別の老婦人が、「あなたはお金持ちでしょう、だったらお金を出して誰か話し相手を雇うべきではないか」と声を掛ける。
それこそ、お金ではなく心で動いて欲しい事柄だと思う。きっと、心と心の触れ合いが欲しいだけだ。だからお金で解決出来る問題ではない。でも彼女に何があるのか。核家族が分散してそれぞれが独立してしまい、皆時間が無くあくせく暮らす中で、高齢者はただ忘れられていくのみだ。
「でも、今の惨めな自分について文句を言いながら暮らすか、幸せに暮らすか。それだけなのよ。」
それを聞いて、なるほどなんて思ってしまった。それはそれで、究極の人生の真実のようにも思えたりする不思議。

人間を描くと瞬間的に、見えてくるそれぞれの立場からの真実。
だから人間は面白い。

誰も話し相手が居ないのであれば、お金で解決するしかない。
それはそれで、アメリカ的な、いや資本主義の解決の仕方なのかもしれない。

 

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