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『エル・クラン』 ブラックテイストな犯罪一家物語

320アルゼンチンで大ヒットした、と聞いて思い出すのが去年の『人生スイッチ』という、同アルゼンチン映画。そんな人も多いと思う。そして共通点はまだあって、今回のこの作品もまたペドロ・アルモドバル製作だ。 監督は違えどやはり風変わりな作風で、今度は犯罪一家を描いたもの。本国では誰もが知っている事件だとか。
人生スイッチ』は複雑な人生のペーソスを噛み締めるような妙味が大好きだった。かの作品ほどの爽快さや、からっとしたドライなブラックユーモアはない。こちらは、ラテン風味のノワール映画。

プッチ一家は金持ちを誘拐しては身代金をせびる。連れ去られた犠牲者たちは奥の部屋に放り投げられ、命乞いやら絶望混じりの呻き声を上げるも、小さなラジカセの音楽のノイズにそれらは搔き消される。カッコいいBGM風に流れるが、非情さとスタイリッシュさを強調する。
誘拐は父親主導で行われるが、洩れ聞こえる哀れな懇願を黙殺することで、受動的な協力者であることを証明してしまう家族。よくある幸せそうな一家の団欒風景に不似合いなその声は、いかにも恐ろしげだ。長男は地元でサーフショップを経営しており、真面目な小市民に一見すると見えるから、余計にそう感じさせる。

後半にはそのツケが支払われることを予想したが、犯罪に引き摺りこまれた長男とその責を負おうとしない父親の一騎打ちが、何だか釈然としない。
そう言えば物語は「アルゼンチンの史上最悪だった独裁政治が終わり、民主主義が始まった」と始まっていた。元は情報局員であった父親の過去の姿が、無造作に執り行なわれる雑な誘拐と殺人に繋がっていたのだと想像させる。
富の偏りなど、社会への不満により底が抜けたような感覚は、捻じ曲がった社会の歪みを感じさせる。昨今のニュースにも通じるような、鬱屈した社会の溜まりに溜まった軋轢が恐ろしい。そう思うのは、自分が昨今のニュースに神経質になっているせいだろうか。

 

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