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『リリーのすべて』 恐ろしいほどの怪演に心打たれた

original (1) エディ・レッドメインは『博士と彼女のセオリー』で圧倒された(それ以前は細かい役はいろいろ見ていたけれど)。でも、『ジュピター』では心をこめて演技をすればするほど映画から一人浮いて見え、居心地が悪く感じられた。「私この人嫌いだわ」と見る度に思ったし、熱演すればするほどより一層空回りして見えた。役になりきろうとする大仰な素振りも、余計に役柄にぴったりとは合っていないことを強調してしまっていた。ところが今回は、『博士と彼女のセオリー』と同様もしくはそれ以上に、レッドメインの功績なくして語れない傑作だった!演技力のみならず、彼のルックスを最大限に活かしたキャスティングで、この役はレッドメイン以外のキャスティングがもはや思いつかない!

その他のキャスティングも本当に素晴らしくて。まず、このトランスジェンダーな映画にピッタリな、バイだと噂のアンバー・ハード、彼女はいつもカッコ良くてオーラのある女優さんだけれど、少ない出番のみでもインパクトがあったし、ゲイとカミングアウトし、最近立て続けに出演作が公開され、驚くほどノリにノッてるベン・ウィショー(なんと『007 スペクター』、『パディントン』『白鯨との闘い』『ロブスター』とこの作品ですよ、怒涛の公開ッ!)。
マティアス・スーナールツはその男らしい佇まいがグッと魅力的に見えたし、そしてこの作品で初めて知った、妻役のアリシア・ヴィキャンデル、彼女に共感出来なかったらこの作品の良さがこれまた半減していたように思う。

作品はこれまで何度となく描かれてきたLGBT的な物語の型にハマることなく、新鮮な手法で少しづつ映画を牽引していった。元々引っ込み思案でシャイな性格だった男が、変身する喜びを知ったことで別人格を見出していく。
本当の自分自身で居たいという思いが別人格を発見し、二重人格性と性同一性障害が同時に進行していく。
エイナーの絵に、かつてずっと描かれ続けた“沼”に佇む木。あの意味が少しづつ明らかになる辺りが、とても興味深い。

この先、ネタバレ




 

失っていく自分自身と見出していく自分自身。このスイッチングを自然とこなすレッドメインが圧巻。
“メイクはリリーのままでエイナーに戻る瞬間”が二度ある。
「あ、今エイナーに戻ってるな」、とメイクの力を借りずに、その演技だけで“別人格であること”を表現している。
また、エイナーの“心”がゲルダに別れを告げる瞬間もあった。
メイクの力を借りずに心理を表現出来ていた。これが出来るのは相当な演技力の人だけだ。


リリーを助ける妻は、以前の自分である“エイナーの人生”を無かった事にするという“裏切り“を目の当たりにすることになる。エイナー/リリーの人生を描きながら、気づけば観客は妻であるゲルダに“主眼”が移るようになっている。これもまた見事なテリングで、素晴らしかった。

余談だが、日本において「百合」「沼」という語句の扱われ方を知ったら、トム・フーパーも驚くだろうな(苦笑)。

 

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コメント(4件)

  1. とらねこさん☆
    レッドメインの凄さはハンパなかったわ。
    確かにメイクの力を借りずにも、その人物像からその時の心象まで表現できるなんて、この役は本当に彼しかできなかったよね。
    「沼」の使われ方知らなかった~~

  2. ノルウェーまだ〜むさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。

    そうなんです。レッドメインは、「リリーのメイクをしたまま」、「リリーからエイナーに戻る」という瞬間があるんです。
    派手なピンクのスーツを着て、男に殴られて戻るところです。
    リリーが途中からエイナーに変わるんです。これは1つのカメラで押さえたショットになってるんですが、本当に見事でした!

    “沼”って、昨今では「何かにハマった」、みたいな意味で使われるんですよね^^;
    この作品の場合で言うと、「まだ見ぬ正体不明の何かが水底深くにある」という感じですかね。

  3. とらねこさん、こんばんは。コメントありがとうございました。
    この映画、ほんとキャスティングがよかったよね!
    アンバー・ハードとベン・ウィショーの起用は、わざとかなぁと私も思った。
    リリーは、一昔前ならキリアン・マーフィーが演じてそう、と書いてた方もいましたよ。
    エディくんって、ほんと育ちが良くてお坊ちゃんで、いい人キャラよね~。
    で、それさえも演技だったりして(笑)。
    うーん、年末ベストに入れてしまいそう。好きだな~この映画。

  4. 真紅さんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    うん、アンバー・ハードとベン・ウィショーは来たァァ〜ってキャスティングでしたもんね。
    ベン・ウィショーにキスされるシーンは、腐女子ごころがウズウズ…あなたもしたでしょう!そうでしょう!
    あれっ、私は腐女子だったのか?!

    >一昔前ならキリアン・マーフィー
    監督を急かして、「早く撮らないと自分が老けてしまって、役柄に合わなくなってしまうから」と言ったのはキリアン・マーフィーでしたよね。
    それで『プルートで朝食を』を撮ったんですよね〜。

    私はキリアンよりも、去年女装をして美しかったロマン・デュリスを思い浮かべちゃいました。
    フランソワ・オゾン監督のもの。私はあっちの方が好きでした。




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