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『キャロル』 女性の心理はファッションに表れる

visual行間こそ映像力!…と、最近思う。
物語の合間に立ち昇ってくる何か。
この作品も、湧き立つようなジュワジュワした思いが、その行間に現れて、その繊細さに泣きたい思いでいっぱいになった。
しばらく、余韻を抱きしめていたよ。

映画の好き嫌いなんて人によりけりだから、私が気に入った映画をあなたも気に入るとは限らないけれど、
でも時々、「この作品を好きな人が好き」と言いたくなるようなものがある。
この秘められた美しさにあまり気が付かず、ただストーリーを追うだけならば
ただの「あっさりとした恋愛の話」になるだけかもしれない。
そんな人がおそらく居るであろうことを否定はしないけれど、
私は、余分な台詞を交わさなかったり、女性の煩わしさ醜さを感じない二人だからこそ良かった。

パトリシア・ハイスミス原作は大好きなものが多いなあ…。
『リプリー』も『太陽がいっぱい』も(同じかw)、『見知らぬ乗客』も、
風格があって、心の中でフレームがすっくと立ち、時を経ても印象がボヤけることが無いものばかり。

“欲しいものがあって”、だけどそれに手が届かず、ただ窓枠の向こうに“見ているだけ”の自分。
曇りガラスや窓の向こうに“まだ自分の知らない世界”がある。
この作品ではキャロルに憧れるテレーズ(ルーニー・マーラ)こそが主役なのね。
彼女が花開いていくその瞬間の美しさが眩く感じられた。

この二人の衣装コーディネートを見ていると、とてもこの二人がくっつくとは思えなかったの。
ケイト・ブランシェットの風貌にピッタリ合う、ゴージャスでミステリアスなキャロルに、
“天から降ってきたひと”、純粋さそのままの、おぼこ姫テレーズ・ベリベット(ルーニー・マーラ)。
ビビッドカラーの赤で全身揃え、毛皮のコートにくるまれたキャロルと、ポコンとしたチェック柄の帽子を被ったテレーズなんだもの。

初めて会ったデパートの売り場で、クリスマス用のサンタ帽を被ったテレーズを見て、キャロルが「帽子が可愛いわね」と言うのだけれど
本当はテレーズは恥ずかしくて帽子を被りたくなかったのよね。
キャロルに褒められて以来、次に登場する時に彼女はチェック柄の帽子を被っているのだけれど
このチェック柄と、マフラーのチェック柄が合ってない。
「お洒落をしては見たけれど、そのお洒落が板についていない、少女のような女性」を表現した、良い衣装チョイスだと思った。

このチェック柄は、ラストのテレーズを表現するのに効いてくる。
ラストのテレーズはキャロルの台詞にもあるように、“まるで花開いたような美しさ”。
キャロルに教えてもらった化粧が今やすっかり板に付き、自分らしい美しさを見つけたテレーズは、彼女本来の美しさが見事に映えるよう。
テレーズは自分の人生を自分の足で立つことが出来るようになった頃でもあるため、その成長が二重にも見て取れる。
ジャケットを脱ぐと首元にシンプルなデザインを施された、ベージュの可愛いトップス。細身な彼女に似合ってとても可愛いのだけれど
ふとジャケットを着た姿を見ると、実はこれがチェック柄なんですよね。

つまり、あの帽子を被っていた頃と変わらない、中身はまだ純粋な彼女そのままなのだと分かる。

女性は、成長するとまるですっかり人が違ったように、変身してしまうことがある。
その成長ぶりが時に恐ろしくもあるけれど、彼女はまだ“天から落ちてきたひと”のまま、善い資質はまるで変わっていないのだとホッとした。
“ここぞ”というところでカットするラストも本当に見事。

 

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コメント(12件)

  1. なるほどー!
    衣装デザインでそこまで洞察するとらねこさん凄い!
    そこのところノーチェックだったので、もういちど観たくなっちゃいました(笑)

    この映画は直接的なセリフよりも画面構成や
    雰囲気をしっかり受け止め理解しないといけないんですね。
    了解です( ..)φメモメモ

  2. itukaさんへ

    こちらにもどうもです♪
    今回のこの作品における衣装デザインの目立ち方は、これは演出の1つだと思うのです。
    サンタの帽子に始まって、あのチェックの帽子なんかも割と目立つ使い方をされてましたしね。
    女性を描くのに、ファッションは結構大事だなーと思うんですよね。
    珍しくファッションチェックなどしてみました(笑

  3. とらねこさんの感想に激しく同意!
    ストーリーはともかく、映像や音楽、ファションが見事で私の大好きな映画として心に残ると思います。
    さりげない眼差しやしぐさで観客の想像力を掻き立てる映画というのは・・・・・・。
    キャロルのロシアンセーブルのミンクのコートやオレンジとグレーのコーディネート!
    一緒に行った妹が帰途、オレンジのマフラーを買ってしまいました~

  4. cinema_61さんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。

    映像に言いたいことがすべて表現されていますよね!
    逆に台詞は最小限で、またそこにホレてしまいました…!

    キャロルのミンクのコート、今考えるとこの時代ならでは、というのもあると思いますが(毛皮はもはや時代遅れですから…)
    そういうのも含めて、やっぱり好きだなあなんて思っちゃいました。
    キャロルのコーディネートは、見事にお洒落でしたよね!
    私は、ブルーのセパレーツとグリーンのコーディネートにも、あまりの品の良さに驚きました!

  5. なるほど、ファッションからのキャラ考察お見事です。
    さすがファッショニスタ!
    隅々まで計算された作品でしたが、チェック柄の細かい意味とか言われてみると納得。
    もう一回観たくなりました。

  6. ノラネコさんへ

    こちらにもどうもです♪

    >「ファッショニスタ」
    うーん、控えめに言っても、本人お洒落からは程遠くなりにけりですわ(´・ω・`)
    頑張らねば…。

  7. とらねこさん、こんにちは~。コメントありがとうございました。
    テレーズ、伊勢丹で働いていたんだよね(違)。
    ファッションがホント、素敵でしたね~。
    とらねこさんの解説付きでもう一回観たいわ。

    自立したテレーズが、改めてキャロルを選ぶことに感動しました。
    そして、ラストカットのキャロルの表情・・・。「来たのね。わかっていたわ」
    マジ震えましたわ。

  8. 真紅さんへ

    こんにちは〜♪コメントありがとうございました。

    >テレーズ、伊勢丹で働いていたんだよね(違)。
    これめっちゃウケた(笑)!
    テレーズ、伊勢丹チェック柄の帽子が良く似合うデパガでしたね〜。

    >ラストカットのキャロルの表情・・・。「来たのね。わかっていたわ」マジ震えましたわ。

    キャロルは、テレーズが大人になって一皮剥けるのを待ってたんですよね。
    恋の痛みは終わっても、それでも尚残る“情愛”があると信じて。
    大人だわー。はぁ…。キャロルって人は…。
    この二人の対比で、それぞれが余計に美しく見えるんですよね。
    すごいラストカット!

    あ、真紅さん!
    映画の「上半期」はね、「1月〜6月まで」ですよぉ。
    「下半期」は「7月〜12月末まで」。
    (て、誰が決めたんじゃ・笑)

  9. >行間
    まさしくその通り!!
    最近はなんでもかんでも説明しちゃって
    こうして余白を感じられる作品が少ないことを残念に思っていたので、
    とらねこさんのレビューを読んで、そうそう!そうなのよ~!!と興奮してしまいました(笑)

    ラストの余韻も本当に素晴らしかったですね。

  10. amiさんへ

    おはようございます〜♪コメントありがとうございました。
    オオッ!amiさん、こちら鑑賞されたんですね!
    そうなの、この堂々たる風格…
    いかにも“映画らしい”体験と言えるように思えません?
    私とても痺れちゃって。これ、すごくお気に入りなんです。
    そうなんです、余韻もいいんですよね。
    最近、“余韻映画”にハマる傾向があります♪

  11. とらねこさん お久しぶりです。

    サンフランシスコからもうお帰りでしょうか。
    ひとり旅,とっても素敵ですね!
    楽しい旅行記に,自分も行ったような気分をひと時味あわせていただきました。

    さてさてこの作品,どうしても観て感想を書きたかった作品です。
    とらねこさんの,ファッション中心の感想,とっても納得しました。
    特にテレーズのファッションの変化の考察!
    DVDを予約しましたので,じっくりと再見してみたいと思います。

  12. ななさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    おお、ななさん本当にお久しぶりです!

    そうなんです、長々のんびり時間を使って、旅日記を書いてたところなんです。
    ひととき、映画はおっぽり出して。
    でもおかげで旅を長い間楽しめちゃった。
    一粒で二度美味しい思いができちゃいましたよ♪

    「どうしても感想を書きたい」って大事ですよね。
    私なんかだと、ついつい惰性で書いちゃうから…
    やっぱり、書きたい気持ちがあって書くと筆に(筆じゃないけど)熱がこもりますよね。

    この作品の良さは、とても説明など付け難い難しいものだったのですが、
    ファッションが演出される計り知れない奥深さに、とても感じ入ってしまいましたし、
    もしかしたら他の人はこの観点から見ていない人もいるかも…なんて思って
    特に熱を入れて、今回はそのことについて触れてみました。




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