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【今月のブルー映画】『ブルー・リベンジ』 実力ある復讐サスペンス

タイトルに「ブルー」と付く映画を集め始めて、こちらに気づいたのは最近の話。今年の2月に公開された作品だったのね。公開時に全く気づかなかったのが残念。
まるでコーエン兄弟の『ブラッド・シンプル』×『ノーカントリー』。おもむろに始まりノンストップで進んでいく様が新鮮。
私がこの作品で気に入っているのは数々の演出だった。映画を面白く感じさせる、ほんの僅かな差異に大きく揺り動かされるところが堪らない。
起こる出来事は主人公による“アクション”と、それによる思ってもみない“リアクション”、それから”想定外の出来事”。この3つだけでグイグイと進んでいく。物語の“背景”、登場人物の”過去”は全てが黙々と進行していく中で、徐々に浮き立ってくる。この手のテイストがクール。

主人公のドワイト(メーコン・ブレア)は積年の恨みを晴らし、ウェイド(サンディ・バーネット)を殺す。そこで逃げようとすると、自分の車の鍵を殺人現場に置いてきてしまう。それで相手の車に乗って逃げるのだけれど、逃げられないように相手の車のタイヤにキリを刺し込んでパンクさせようとしておいてあった。この車に自分が乗るはめになる。車は走りだすがタイヤに刺さったキリが動く度にクルクル回る。ここのシーンが阿呆らしくていい。
すると、後部座席をドンドンと叩く者が。相手の家族の1人が車に乗り込んでいた。「ウェイドを殺ったのか?」「そうだよ」「(ウェイドが犯人であることは)濡れ衣なのに」。
この冒頭20分程で、この作品が相当な面白さがあることが否が応でも分かる。
そして、この時点で主人公は家族を殺されたこと、犯人の一家とどうやら知り合いであるらしいことも同時に伝えてしまう。

一人目を殺してようやく髪の毛を切るドワイト。どうやら、彼がホームレスのように過ごしていたのは長年の期間に渡ること、その間ずっと青いポンティアック一つで復讐のために生きてきたことが伝わってくる。全て台詞無しに、こうして画で語らせる。
その後、姉に会いに行くシーンになる。ダイナーで食事をして会話している中で、ウェイドを殺したことを姉に告げる。この告白の中で、「殺したのにニュースにならなくて…」ここで涙。このタイミングで涙?そう言えば、確かにニュースにまだなっていない。それは相手の家族がまだ通報していないからだ、通報していないということは“警察の介入無しに”相手と全面戦争になるのだ、ということが分かる。つまり、この”映画のルール”だ。
その後、姉は「苦しませて殺したんでしょうね」と答える。と、ここで近くに座っていた黒人さんが、「ケチャップ取って」と話しかける。話し声がいかにも聞こえそうな距離なのに、このギャップにギョッとした。田舎のアメリカのダイナーで、何気なく殺しの告白とその返答というやり取りに、全く相応しく無いタイミングで。

物語的には、最後まで見てしまうと「ああ、そういう話か」と面白さは半減してしまうタイプの映画かもしれない。面白さが上手く説明出来ないタイプの、こうした映画は素晴らしい。
ジェレミー・ソウルニエ、この監督は今後注目になりました。

 

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コメント(2件)

  1. こんにちは。
    「ブルー・リベンジ」なかなか面白そうな映画ですね~
    DVDで観れたら観ます。
    ところで東京映画祭の招待作品で「ボーン・トゥ・ビー・ブルー」ご覧になりました?
    チケット即売り切れでしたが、いつ日本で上映されるのでしょう?
    イーサン・ホーク主演で伝説のトランペッター「チェット・ベッカー」の半生・・・・予告だけで「観たい!」気持ちマックスです。

  2. cinema_61さんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    わあ、嬉しいです!これ、記事にも書きましたがコーエンの『ファーゴ』とか『ノーカントリー』が好きな人にはしっくり来ると思います。
    映画好きにはかなり評価されそうな作品ですよ!

    『ボーン・トゥ・ビー・ブルー』、見ましたよ!とても面白かったです!
    これはきっとcinema_61さんもお好きだと思いますね。
    噂ですと公開は来年になる可能性が高いとのことです。楽しみに待っててくださいませ。




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