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『スミス都へ行く』 民主主義の真髄を見事に映し出した政治モノ

心の美しい純粋な青年が、アメリカの理想主義を胸にホワイトハウス入りするも、政治家の汚職と腐敗した世界を目の当たりにし、死闘する。
長い後半のクライマックスでは、24時間演説でホワイトハウスを乗っ取るシークエンスが壮絶。田舎者と馬鹿にされたボーイスカウト出身の青臭い若者が、嘘と汚職にまみれた巨大な組織に敢然と立ち向かう。
性善説に基づいた物語が、大きな感動を呼ぶ政治モノ。

ベテラン政治家の妄執&復讐劇を描いた、『ハウス・オブ・カード』でウンザリし、「いつ面白くなるのだろう」と思いながらだらだらとシーズン1のVol.5まで見進めている私にとって、清涼剤のような爽やかな、だがしっかりとしたドラマに打ち出される傑作だった。「映画史上の傑作」特集で見たのだけれど、その素晴らしさに文字通り圧倒された。アメリカの黄金時代に燦然と輝く世紀の傑作だった。

キャリア・ウーマンで政治の裏表を知る、秘書のサンダース(ジーン・アーサー)が、初めてホワイトハウスにやって来たジェフ・スミス(ジェームズ・スチュアート)に少しづつ心を開き、彼への評価を改めるシーンがある。
「議員であるなら、法案を出そう」と張り切って、法案をまとめようとするシークエンスだ。初めてホワイトハウスに来てはしゃぎ、議事堂を勝手に観光し始めてしまうスミスを、サンダースは「なんでこんな青年の面倒を見なければいけないの」なんてすっかりふてくされ、仕事を辞める寸前だったサンダース。
ところが、スミスの心の純粋さが本物であることに気づき、涙すらうっすら浮かべて心を動かされる。このシーンでは私まで泣いてしまった。観客にスミスを応援する気持ちにさせ、サンダースの気持ちに共感させる、出色の出来を見せるシーンだ。
ジェームズ・スチュアートは何より佇まいがいい。図らずも好感を持たざるを得ない青年を好演している。少しタレ目で所在なさげな顔がなんだか可愛くて、もう見るからに応援してあげたくなってしまう!若い頃のジェームズ・スチュアートって、ヒュー・グラントにそっくりだなあ。タレ目っぷりがとってもいい感じ。

こうした映画を見ると、民主主義はいかに難しいものなのか、それでも命をかけなんとか持続させるべき、素晴らしく大きな理想なのだとつくづく思う。
残念ながら、日本の政治においてはそれと真逆の現実が色濃く映し出され、民主主義が風前の灯火である現在の姿を思うに、こうした物語の美しさに呑気に感動してばかりいられない。

 

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