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『サンドラの週末』 日本の社会はもっと冷たいかも

sandraサンドラ(マリオン・コティヤール)は解雇を言い渡される。
彼女にとっては不当解雇だが、クビにするという段になり上司が「彼女の解雇を取るか、ボーナスを選ぶか」の二択を同僚に選ばせていた。
サンドラに同情する同僚も居り、再投票をしようと積極的に働きかけてくれたこともあった。
そうした助けも何とか得たことで、そのまま辞めるのではなく、再投票を巡り一人ひとりにお願いをして回ることを渋々ながらも行うサンドラ。心理的にキツく屈辱的な週末を過ごすことになった。

ここでのマリオン・コティヤールは、社会の軋轢の中で不幸にも踏み潰されそうになってしまった、少しだけ運の悪い人という描写なのだろう。
サンドラの同僚達を見る限り、中の下、何とか生きていけるだけの給料を得てはいるけれども、皆生きるか死ぬか必死である。
細い雇用の中何とか食いつないでいる。移民社会の様子も垣間見える。

仕事をクビになってしまうイコール、食べていけなくなる人も居る。
給料が必要であるとは言え、病気で心を病んだり体が動けなくなってしまう人も中には居るだろう。
事故であれば、世間の同情も得ることもできるかもしれない、事によると保険を手に入れる人も居るかもしれない。

でも、サンドラの場合は精神的な病だった。
中にはサンドラが一時休職していたことを快く思っていない様子を、あからさまに態度に出す人も居る。
サンドラと仲良くしていた人の中にも、ボーナスを当てにしていた等で彼女を見捨てる人も。
そう、彼女が職を失うのを見捨てるのは=“見殺しにする”も同然の行為なんですよね、この状況で言えば。

たとえ自分が貧しいからと言って、日々顔を合わせていたよく知る人が、生きていけなくなるのを放っておくのは、人間的にはもとる行為であるはず。
“彼女の立場になって考えさえすれば”。
サンドラの旦那が彼女の苦しみを理解した上で、あれだけ彼女の職を必要とするのは、二人分の給料が無いと家族を養うのが本当に苦しいからなのだろうし。

これを見て思ったのは、悲しいかな、こうしたサンドラの状況を、日本の社会はもっと冷たい目で見るだろうということ。
福利厚生や慈愛の精神みたいなものが、日本は本当に薄い社会だなあと思う。
生活保護をもらっている人を攻撃する人の多さには、本当に嫌になった。ベビーカーを電車の中でたためとか、子供を持つのが嫌になる冷たい社会だものなあ…。
そう考えると、余計寂しく思うし、なんだか落ち込んだりもする。

社会の厳しさを思い知らされたようで、ただでさえ落ち込んでしまうような映画であったけれども、
最後にはほんの少し希望が見えるところが、昨今のダルデンヌなのかも。

彼女は“負けて、勝った”。
やはり、人生、負けると分かっていながらも挑まねばならないものだよなあと思うと、
はぁ…やっぱり辛い。

ダルデンヌを見るといつも落ち込んでしまう。

 

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