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『Mommy マミー』 僕らの主観の狭さ

mommy_poster_aozora_b1_2-565x800 なんて気持ちのいい作品なんだろう!今やってる公開作品の中では、これが一番好きだ。

正直言うと、グザヴィエ・ドランはさほど得意ではなかった。
それどころか友人とグザヴィエ・ドランについて、「アイツ調子に乗ってるよな」などとdisりながら飲んだのは、まだこの間のことなのに。
(「フランスは彼を持て囃し過ぎ」、「『マイ・マザー』はすでに撮っておいて、今度は『マミー』って一体どれだけマザコンなんだ!」「その癖、イケメンとして雑誌を飾ったりしてるんだぜ!」などと文句タラタラ…)

グザヴィエ・ドラン作品は、登場人物がやけに攻撃的でよく怒っていたり、剣もほろろな調子で喋る。だから、見ていて疲れてしまうのだ。

冒頭など、やはりそんな風に見ていた。いきなりの登場で車をぶつけられ、頭に血を流しながらも怒鳴り返すママ。
「出たー、ドランの描く女性、さすが下品で感じが悪いなあ。」と思いながら見ていた。

ところが少年の登場で、その気持もすっかり変わってしまう。ナイフみたいに尖り、触る者を皆傷つけそうな勢いの少年。
今にも壊れそうなバランスの、危なげな少年だ。

それなのに、ママに対しては真っ直ぐに愛情を表現する。息子は母に対して遠慮せず、母も息子に対して遠慮したりしない。
等身大の二人。目線が同じくらいで、相手に心を許し、マトモにぶつかり合うのだった。
双子みたいな二人。なんだか、羨ましく思った。
もし、こんな少年がドランの中に居るなら、私は彼にべた惚れになる。

第一印象の悪さは何処へやら。
こんな母親に育てられたなら、たとえどんな少年でも、愛情の何たるかを十二分に知るだろう。

少年も、死ぬほど扱いにくい問題児なのに、どことなく愛嬌があって全然憎めない。
また、二人の微妙な関係におずおずと入ってくる、吃音症の女性(スザンヌ・クレマン)がまたイイ。
二人は彼女のことが好きになるのだけれど、その気持ちが何故かよく分かる。多分正反対だからなんだろう。

子供の頃上手く喋れなかった私は、彼女にどこか共感しながら見てしまった。
しかし、彼女の吃音症の発症は子供の頃のことではなく、社会人になってからのことだ。
どこか社会からはみ出しがちな人物たちを描く、いつものドラン。

音楽がまた上手く使われている。
3人で踊るシーンはこの上なく愉快。“完璧な夕べ”だ。こうした気持ちのいい瞬間が、何度も訪れる。
オアシスの“Wonder wall”が流れる瞬間も最高!
“言葉にならない”瞬間に流れる、音楽の心地よさ!

ところで、この作品のアスペクト比は、1:1だ。
まるでInstagramのような正方形で映される。この窮屈さは凄い。
だが、1:1の映像が二度に渡り、拡がるシークエンスがある。

この先ネタバレ




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一度目に映像が拡がる瞬間は、少年の両腕によって力任せに押し広げられる。ここに感動してしまった!
ボクの主観は無理矢理に開かれ、拡がっていくようで。
二度目は、ママの叶わぬ未来の想像図。
これは切ない。ママは自分の世界を押し広げることは、想像でしか出来ない。

私達は狭すぎる主観の世界に生きているんだな。そう思ったら、とても切なくなった。
さらに、私達が映画を見る理由がこれであったことにも、否応なしに気付かされた。
映画好きとしての私達の世界、飽くなき想像の世界が拡がっていく様。

これを求めて私達は映画を見ていたんだ。そのことに改めて、気付かされた。

ドラン、何てことしてくれるんだよ、最高すぎる。
でも今後誰も真似しませんように。頼むよ。
xavier_dolan 見てこのイケメンぷり。
images この『トム・アット・ザ・ファーム』の時のドランは、まるでニルヴァーナのカート・コバーンみたい。
(チェッ、センスいいな!)

 

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コメント(10件)

  1. 激しい口調でひとの3倍は喋る少年とひとの3分の一しか話せない隣人女性と人並みの母をシャッフルすると
    不思議に丸く収まるという映画でした(笑)
    アスペクト比1:1だなんて思い切った手法でしたよね。

    監督ってこんな若いイケメン君だったのね!びっくり(笑)

  2. itukaさんへ

    こちらにもありがとうございます〜♪
    でしょでしょ!イケメンでしょ。
    しかもねー、フランスの雑誌の表紙とか飾っちゃうぐらいのもてはやされっぷりなの!
    にも関わらず、自分を演じる少年がこんなブサイク君ていうところがまたいいんですよ。
    普通だったら、自分を描くのに自分よりイケメンを起用するでしょ。

    うんうん、うるさい少年と喋れない女性。
    このカップリングがすごい可愛くて良かったですよね〜
    アスペクト比1:1もね、私はそこにちゃんと意味を感じてしまったんですね。

  3. とらねこさん、こんばんは。

    ドランは映像は美しいけど、感情表現は生々しくて美化しないのが特徴ですね。

    人間は狭すぎる主観の世界に佇まざる負えない時もあるけど、
    歓びであれ、哀しみであれ、その世界を解放出来るのも人間だけなのでしょうね。

  4. BCさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございます。

    >ドランは映像は美しいけど、感情表現は生々しくて美化しないのが特徴ですね

    うんうん!この言い方いいですね。本当、「美化」は絶対しようとしない。

    自分の見てる世界が狭すぎる感覚、すごく感じました。
    あの開放感がだからやけに嬉しくて…。
    スマホとかで見てる限りは、インスタグラムの大きさはちょうどいいんですけどね(笑)

    そうそう、BCさんが青が好きってコメント見て、ああそうだった!と思いましたよ。タイトルじゃないですか、ねえ。
    私も青を基調にした映画にやられてしまうんですよ。
    先月から“ブルー映画”コーナーまで始めたぐらい。

  5. とらねこさん、こんちは。
    うんうん、ドラン調子乗ってるよね(笑)。
    しかし、、、しかし全然許せる! だってカッコイイから!!
    私も、記事の最後に彼の写真を貼り付けてしまったわ。男前。。。どんだけ
    きっと、すんごいナルシストだろうね。許すけど。

    スクリーンサイズが変わる瞬間、素晴らしかったですね。

    しかし、とらねこさんが小さい頃、うまくしゃべれなかったとは。。
    びっくり。
    あの吃音症の隣人のこと、私もすごく気になったよ。

    『エレファント・ソング』も楽しみ♪ あ、その前に早く『マイ・マザー』観なければ^^;

  6. 真紅さんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    ですよね〜!絶対調子に乗ってますよね!(笑)

    なんかドランの表現て、「言いたくて言いたくてたまらないことが、迸(ほとばし)るように出てくる!」というイメージありませんか?
    だから、映像作品が彼そのものなんですよね。
    本物がここに居る…という気がしてビンビン来ます!

    そうなの、子供の頃はシャイ過ぎて、自分を表現するのが本当に“恐怖そのもの”だったんです。
    教育ママだった母親のせいで萎縮してたんだと思うの。

  7. こんにちは。

    そうそう、このスクリーンサイズが変わる
    その“意味”が胸に迫りました。

    拙ブログにいただいたコメントのお返事にも書いたのですが、
    タイトルだけだと敬遠されそうな
    『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲<ラプソディ>』、
    こちらも“架空の法律下の世界”を描いています。
    ぜひ!

  8. えいさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    この作品はえいさんの好みじゃなさそうな気がしますね。

    『ホワイト・ドッグ』ってサミュエル・フラーなんですね!
    …と間違えて調べてしまいましたw
    『ホワイト・ゴッド』はこれから公開なんですね!
    ハンガリーの映画で、監督名も俳優名も
    それどころか、配給の名前も知らないものでした。
    でも、何となく私の好みそうな気がします…。
    こちらも、えいさんのおすすめなんですね。
    楽しみにしておきます。

  9. とらねこさん、こんにちは。
    あと数日で、今年も終わりですね。
    とらねこさんのベストを見るのが楽しみです♪

    >「アイツ調子に乗ってるよな」などと
    爆笑。そういう風に思ってる人は多いと思うわー、私も思っていたもん。でもドランくん、才能あるのよね。

    ただ、フランスの若き天才監督って、中年になって以降、あまりぱっとしなかったりすることも多い気もするような・・・
    将来が楽しみですなー^^

  10. latifaさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    本当、年末らしく慌ただしくなってきましたね。
    飲み会ばかりで大掃除は何処へやら、な私は毎年のことでございます。
    ベスト、ようやくUPしましたよーん♪

    ですよねー、私も本当はドランの調子に乗ったところが嫌いだったはずだったのに。
    ただ、反感は結構買ってるみたい。ドランていかにも嫌われそうですもんねw
    うん、この先一体どんな風になるんでしょう。本当、楽しみですよ。
    ギドク同様、好きな人にすごく好かれ、嫌いな人には相手にもされないような、
    シネフィルの流れを組まない映画作家という枠組みで、私は今後も注目していきたいと思ってます。




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