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『ラブバトル』 男と女はいつも泥沼

16818齢70歳にして、これですか〜…
いやあ、フランス人はさすがだな!
私の個人的な恋愛哲学にも通じ合うものがあった。正直、「キツいタイプのフランス映画だろうなあ」と心してかかったのだけれど、意外にも肩の力を抜いてこの世界に没頭することが出来た。

恋愛は、本当の意味では、一対一の戦いである。
これは普遍的な真実だと思う。
見た目ではどんなに気が合い、自然と惹かれ合う二人であっても、心の奥底の一番最後の砦…これを明け渡すかどうかは別だ。
本気で愛しあうようになり、気づけば次第に傷つけ合うような関係になってしまうのも、こうした抵抗によるものなんじゃないか。
泥沼の恋愛関係でボロボロに傷ついている人たちというのは、実はそこら中に見かけるものだ。

ここまで激しい戦いになったのは、見方によってはカリカチュアのようにも見える。
本来は押したり引いたりするような、気取った恋愛の駆け引きであるべきものが、肉体的にも精神的にもぶつかり合い、果ては取っ組み合いの喧嘩を始めてしまうのだから。
しかし、この二人の関係について言うと、彼らに歳の差があることで、彼女の方の精神的なトラウマから、惹かれ合う以前に抵抗を感じさせてしまう。彼女には父親と上手く行かなかった精神的なダメージがあり、それは現在進行形で、遺産の分配という形で目に見えてしまう。父親そのものを亡くしてしまった喪失感もあるだろう。彼女は彼に対して敵意を剥き出しにし、傍若無人に振るまう。

彼女は元来が攻撃的で複雑なタイプの人間であり、若さ故の傲慢さも見て取れる。でも、誰しもこんな部分があるのではないだろうか?若い頃は何故あれほど絶対的に自分に自信があったのだろう。
私自身20才の頃、とてつもなく傲慢な人間だった。あれほどまで世間を舐めくさっていたのは、「自分が一番」という何処から湧いてきたか良く分からない自信のせいだろう。しかし同時に自分を嫌ってもいた。自身のシャイさや普通さには我慢ならなかった。さらにまだまだ自分話をしてしまうが、父親が離婚したせいも手伝い、世のオジサンという存在そのものに対して敵愾心を抱いていた。オジサン好きになったのは自分がオバサンになってからですわ(苦笑)。

さて、この先ネタバレで話します。




二人の戦いは、「体の関係を結んでしまったら負け」というルールで、初めこそ彼女が男に仕掛けたかのように見えた。男は「君は攻撃的で危険人物だ。初めは君に惹かれたが、自分は穏健な人間で、とても相手に出来ない」と引け腰だ。彼女の欲望が初めにあったが、彼女自身の内面にある、父親という“年上の男そのもの“、引いては“男全体に対する不信感”を代表させることで、その心理の裏側を覗かせる。泣き所を男に掴まれてしまうが、一方男はそれを見抜く賢さがのため、彼を「馬鹿である」と決めつけたり、その“内面”を打ち捨てる訳に行かなくなる。これは彼女にとっては自分の自信の揺らぐところだ。父親に愛されては居なかった事実が同時に見えることで、その自信が砕かれ、彼女の本来持っていた弱さがむき出しになってしまう。

するとこの関係は、次第にまた形を変えてくる。“肉体関係を結んだら負け”なのは、一体どっちの負けなのかが分からなくなる。
つまり、“恋心を抱いてしまったら負け”という裏ルールがあるために、肉体関係を結ぶのがどちらにとっての得になるのか分からなくなってしまうのだ。

剥き出しの欲望と抵抗。
それに屈服する瞬間は、むしろ幸福に身を屈するということでもある。

欲望が噴出し溢れ出てくる瞬間の、異常なまでの緊張感が凄い。まさに手に汗握り、映像に釘付けになった。

1対1のバトルは『セッション』のようでもあった。“相手にとって不足はない”という者達こそが、真正面に対等にぶつかることが出来るのだ。

 

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