rss twitter fb hatena gplus

*

『おみおくりの作法』を広島サロンシネマで見た!

166225_01この作品は、広島の“サロンシネマ”という映画館で見た。サロンシネマについてのレポートはコチラにも書いたけれど、ここはなんと今では珍しい、幕間に紫のドレープカーテンを下げる映画館。さらには、スクリーン横に小さな司会者用の席があって、“前説”付き ー 映画が始まる前に劇場の方が立って、次の映画についての説明をしていたんですね。こんなものは初めて見たので驚いてしまった。
その他、最後列には靴を脱いでリラックス出来る畳敷きの座席もあるなど、オリジナリティ溢れるサービス。綺麗な設備で、いかにも最新の改装を施しているにも関わらず、“古き良き伝統”をしっかり選別した上で、こだわりの営業形態を続けている。そんな風に見てとれました。

ちょうど、エディ・マーサン演じるジョン・メイが、自分の良心に従って、丁寧に仕事をこなす。そんな作品を見るのにピッタリの映画館だった。映画が終わって出る頃には、作品に対する敬意と映画館に対する思いとで、何とも言えない気持ちになり。胸の奥に温かい気持ちが溢れるのを抑えながら、映画館を出て行った。

さて作品について。
身寄りのない老人の孤独死が増えてきたロンドン。ジョン・メイ(エディ・マーサン)は、遺品を誰に渡す者も居ない、葬式に誰も来ない(来たがらないケースもある)人の弔いを、一人黙々と準備をする。死者のために。だが効率化を目指し、孤独死には葬式そのものを省略してしまうような新しい上司には嫌われ、2ヶ月で解雇されてしまう(22年間勤務したにも関わらず)。そんなジョン・メイの最後の仕事。彼は、解雇されたおかげでたっぷりある自分の時間を使って、孤独死したホームレス、ビリーの生の手がかりを追い始める…。

これまでは『フル・モンティ』などで製作をやってきたウベルト・パゾリーニの、初監督作品。まるで初メガホンとは思えないほど、堂々とした画作りに、心をがっしりと掴まれてしまった。丁寧に切り返した細かいショットが続くかと思えば、切り取ったような鮮やかなロングショットを決めてくる。

いかにも神経質そうなこうしたきめ細やかなカメラワークが、ちょうどジョン・メイの、孤独なキッチリした性格を表すのにピッタリ。
テーマ的には、いかにも『おくりびと』を思い出すような、ヒューマンドラマを思わせるものなのに、ベタベタした涙を誘うような作りでないところにも、思わず親指を立てたくなる。

この物語を、91分というサイズに納めた辺りの仕事の確かさも好きだ。
次の展開が全て読めるような安定した物語構成かと思いきや、驚愕を与えるクライマックスの展開に加え、ラストの1シーンの見事さには恐れ入ってしまう。

いやはや、これは見逃さなくて本当に良かった。おそらく、今年見た映画の中でも忘れられない一つになりそう。
IMG_0110 “ほりごたつ式座席”ってこんなのでした。謎が溶けた。
東京にもあったらいいのになあ。

 

関連記事

『沈黙』 日本人の沼的心性とは相容れないロジカルさ

結論から言うと、あまりのめり込める作品ではなかった。 『沈黙』をアメリ...
記事を読む

『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』 アメリカ亜流派のレイドバック主義

80年代の映画を見るなら、私は断然アメリカ映画派だ。 日本の80年代の...
記事を読む

『湯を沸かすほどの熱い愛』 生の精算と最後に残るもの

一言で言えば、宮沢りえの存在感があってこそ成立する作品かもしれない。こ...
記事を読む

美容師にハマりストーカーに変身する主婦・常盤貴子 『だれかの木琴』

お気に入りの美容師を探すのって、私にとってはちょっぴり大事なことだった...
記事を読む

『日本のいちばん長い日』で終戦記念日を迎えた

今年も新文芸坐にて、反戦映画祭に行ってきた。 3年連続。 個人的に、終...
記事を読む

1,109

コメント(8件)

  1. ぜひ行ってみたい、観てみたいこういう映画館で!
    軽く使われ過ぎて今じゃ何の有り難みも
    感じない「おもてなし」という言葉を思い出しました。
    おもてなしの心の見える映画館でしょうか。

    他の都市に住んだことがないので
    わからないのですが、私の住む札幌、
    いえいえ北海道自体がこと映画に関しては
    とにかく儲からんものは作らん、作られても
    すぐ採算とれなくなって閉館。
    「映画館ってまだあるんですか?」なんて
    目の前で言われた日にゃ、ほんと寝込みますよ。
    自然の幸、山海の幸に恵まれてメシは旨いかも
    しれないけれど、民度、低過ぎ。(笑)

    さらりとタイトにまとめられた本作。
    観た後、時が経つほどにジワリとくる秀作でした。

  2. とらねこさん☆
    掘りごたつ式映画館と古いものを大切にするロンドンを舞台にした映画が、本当にぴったりね!
    気になっていて結局見逃しちゃったの、また名画座あたりでやるかしら??

  3. vivajiijさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
    「おもてなし」…本当に、すっかりこの言葉の持つ意味合いも、その響きも、手垢にまみれて卑属なものへと落ちてしまいましたね…。
    ミニシアターはあれこれ行ってる方だと思うのですが、本当にここは素晴らしい映画館だったなあと思います!
    しかもこちら、“序破急”グループと言うのですが、ミニシアターを3館も経営していて、女性が社長なんですって。
    本当に、応援したくなる映画館でした。
    ここの系列店、また絶対行きたいと思います!

    北海道の民度は低いのですか、ふーむ。
    シアターキノはなかなか頑張ってる素敵な映画館だと思いました。
    年間回数券やスタンプなんかがあると、ついつい通いたくなるので良いですよね。

    本当、ジワジワと評価が上がるタイプの映画ですよね。
    いつもは、映画で泣いてしまったら、速攻でトイレに駆け込み化粧直しするんですが、
    この時ばかりは時間が無くて、泣きながら走り去ってしまいました(苦笑)

  4. ノルウェーまだ〜むさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    大分UPするのが遅くなっちゃって…
    東京ではとっくに終わってますよネ。

    これ、少し変わったテイストなので、ミニシアター系作品が好きな人の方が気に入るかな?という感じもします。
    DVDでも良いので、良かったら見てみてくださーい☆

  5. とらねこさん、こんにちは☆
    素敵な映画館ねー。
    他とは違う、なんていうか、独自の経営努力をしていて。

    この映画、とっても良かったですよね。
    私も今年のベストに入って来る予感です。

    それと、この後ろ姿は、もしかして、とらねこさんなのかな?^^

  6. latifaさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    素敵な映画館でした!

    おー、latifaさんはベストに入りそうなほど気に入られましたか!
    私も、なんだかジワジワ上がってきちゃったな。
    ベストに入るかどうかは、まだ分からないけれど。

    この写真ですが、これは私じゃないですよう。てか、私こんなオバサンじゃないですぅ。
    latifaさんたら酷い〜(;_;)

  7. この映画をこんな素敵な映画館でご覧になったなんて羨ましい。
    ワタシのところも完全なる二番館でユーザーアンケートで
    作品選びをするらしいです。

    本作、まさかここまで素晴らしい映画とは予想外でした。
    ラストの余韻がしばらく続いていましたよ。
    マッドマックスの興奮もこれでひとまず落ち着きました(笑)

  8. itukaさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    へえ〜!itukaさんの行った名古屋の二番館も、すごく良さそうですね!
    ユーザーアンケートでの作品選び、聞いてくれるところなんですね。
    そういえば私も地元に二番館あるけど、ここのユーザーアンケートで鑑賞券がもらえたことあったなあ…♡

    良かった!本当、思ってもみない傑作でしたよね。
    マッドマックスも最高だけれど、これはまた別のツボを押してくれる映画という気がするなあ〜♪




管理人にのみ公開されます

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)


スパム対策をしています。コメント出来ない方は、こちらよりお知らせください。
Google
WWW を検索
このブログ内を検索
『沈黙』 日本人の沼的心性とは相容れないロジカルさ

結論から言うと、あまりのめり込める作品ではなかった。 『沈黙』をアメリ...

【シリーズ秘湯】乳頭温泉郷 鶴の湯温泉に泊まってきた【混浴】

数ある名湯の中でも、特別エロい名前の温泉と言えばこれでしょう。 乳頭温...

2016年12月の評価別INDEX

年始に久しぶりに実家に帰ったんですが、やはり自分の家族は気を使わなくて...

とらねこのオレアカデミー賞 2016

10執念…ならぬ10周年を迎えて、さすがに息切れしてきました。 まあ今...

2016年11月の評価別INDEX & 【石巻ラプラスレポート】

仕事が忙しくなったためもあり、ブログを書く気力が若干減ってきたせいもあ...

→もっと見る

【あ行】【か行】【さ行】【た行】 【な行】
【は行】【ま行】【や行】 【ら行】【わ行】
【英数字】


  • ピエル(P)・パオロ(P)・パゾリーニ(P)ってどんだけPやねん

PAGE TOP ↑