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『博士と彼女のセオリー』 演技が凄すぎ!

hakasetokanojyoイミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』とこちらの作品、両方ともアカデミー賞関連であり、実際の人物を元にしていて、理系の男の物語…と共通点が多数。これを全く同じ公開日にぶつけてしまうのは、賢い選択だったのだろうか!?勝手に心配してしまいました。お客さんを食い合わないと良いけれど。逆に、「こちらも見たからついでにあちらも見ておこう」ということになれば良いね。

イミテーション・ゲーム〜』がかなり気に入ってしまった私だったけれど、こちらも見ない訳にはいかない。何故なら監督が、『マン・オン・ワイヤー』のジェームズ・マーシュ。この作品は心底魅了され、その年のベストテンでも上位に入れたほどハマったっけ。あれほどまでに衝撃的なドキュメンタリーを撮れる人が、劇映画を撮ったら一体どんなものになるのか、と。

こちらご存知の通り、エディ・レッドメインが最優秀主演男優賞を獲ったことにとても驚いた。彼の名前も知らなかったのだけれど、まだ若い俳優さんがいきなりオスカーをポンと穫れるもの?と思ったけれど、この作品を見ると心の底から納得してしまう。“モノマネ演技”と言うなかれ、彼が足を引きずりながら歩くシーンは、思わず手を差し伸べたくなるほど真に迫ってる。

物語の方も、スティーブン・ホーキング博士を描いたということで、少々不安だった。何故なら私は、学生の頃に彼の理論にハマって、本を読んだり、映像も繰り返し繰り返し見た。宇宙論にハマるキッカケを与えてくれた人で、魅了された人だったから。彼を傷つけるような物語になっていたら嫌だという気持ちと、納得のいかない中途半端なドキュメンタリーだったら嫌だという気持ちとで、揺れる思いで見てしまったのだ。実在人物を元にした劇映画というと、本当に難しいものだなあと思う。ましてや、それが偉大な人物であると余計にボロが出る傾向が多いもの。『ダイアナ』や『スティーブ・ジョブズ』(アシュトン・カッチャー版)のような心底くだらないものから、『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』や『ヒッチコック』のような、悪くはないし私は嫌いではなかったけれど、何かと文句を言われることの多い実在人物モノ。ジャンルそのものに対する不安があった。

しかしこの作品や『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』は堂々としたテンポで少しも媚びず、人の心をわし掴みにする魅力に溢れた作品だった。ホーキング博士ばかりではなく、奥さんのジェーン(フェリシティ・ジョーンズ)、支える側の気持ちをも双方向に描いたこと。このおかげで作品にますます深みを与えた。

意地悪な言い方をすれば、ジェーン・ホーキングの著作が原作になっているから、彼女が不倫をするに至った男、ジョナサン(チャーリー・コックス)のこともすごくいい人として描かれている。でも、こうしたことも決してマイナスポイントにはなっていない。人生の選択をすべき時はあって、自分のこと、相手のこと、いろいろなことを総合して考えた上でホーキング博士はあの結末を望んだのだろう。…健常者には考えもつかないかもしれないけれど、介護される側とは言え、彼は決して馬鹿ではないし、彼らの心の動きも見えていない訳ではなかったのだろうと。

切ないラストではあるけれど、その切なさが最高潮に訪れる瞬間に、“時間について考え尽くした人”ならではのある効果が訪れる。時間を辿っていく瞬間は眩しすぎて切ない。切ないけれど、鑑賞後感が決して悪いものではない。
何度も何度も泣いてしまうけれど、決してお涙頂戴の物語ではなかった。ここがまた心に残った理由だった。

 

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コメント(8件)

  1. ワタクシ、この作品の雰囲気がとても好きです。
    余命2年であろうと愛する人のため嫁入りするジェーンに
    心底惚れましたが、やはり彼女も一人の女性。
    育児と介護の両立は相当な負担だったんだなーと。
    なので彼女の心の移り変わりもなんとなく分かるし
    その辺りの危うさに惹きこまれました(笑)

  2. itukaさんへ

    こちらにもありがとうございます♪
    私もこちら、大好きになりましたよー。

    ジェーンは確かに可哀想でしたよね。だって、公平な立場で愛し合いたい相手との、愛の蜜月期をほぼ経験することなく、すぐに“介護しなければいけない相手”に変わってしまうんですもん。
    どんなに甲斐甲斐しく世話をしても、彼女一人だと難しいというのは伝わってきましたね…。
    介護する方の疲弊も感じました。
    でも、介護される側の博士の方も、彼女のそんな気持ちに対して鈍感だったり、気づかない訳ではなかったんだと思います。彼も辛いですよね…。

    江戸川乱歩に書かせれば『芋虫』になっちゃうテーマですね(爆)!

  3. とらねこさん☆
    理系映画、どっちおも甲乙つけがたい秀作だったね~
    称え過ぎず、非難しすぎず、切ないけれど心地よいのは、どちらもそのご本人の人間性が魅力的だったからなのかな☆
    ジェーンもよく頑張ったし、信仰と真反対の意見を持つ介護するべき夫を最後までよく理解して支えてきたと思うわ。

    宇宙理論にハマってたの??凄い!
    私なんてその辺りはチンプンカンプンで・・・

  4. ノルウェーまだ〜むさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    本当、良く出来た理系夫婦モノ対決!
    そしてどちらもイギリス映画なんですよね。

    >信仰と真反対の意見を持つ介護するべき夫
    確かに、初めこそ正反対の意見でしたね。でも、最後には…。

    そうなんです。私の世代は、ホーキング博士の宇宙論にみんな夢中になりましたよ。
    学生の頃だからこそ、ハマってしまったというのもあるのかも。大人になってからだったら、あまり感性に響かなかったかもしれません。
    自分より大きな存在のことを考えると、自分のちっぽけさが知れて、悩みなんて飛んでいっちゃうんですよ。

  5. とらねこさん、こんにちは☆
    よかった~、この映画とらねこさん肯定してはる。。。
    今自分、記事アップしていろんなブログTB行って流し読みしたけど、結構ジェーンを批判してる人がいてビックリ!!
    ホント、いろんな観方があるよね~。
    ジェーンは、自分(とスティーヴン)が最善を尽くした、って自負があるから、回想録を出したんだと思うし。
    「あなたを愛したわ」、後ろめたいことは何もない、全宇宙(彼女にとっては神でもある)に誓って、愛していたわ、っていうね。。
    もう、嗚咽したっす。

  6. 真紅さんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    はい、理系モノ2本、私どちらも甲乙付け難く、大好きなんです〜!
    『イミテーション・ゲーム』もそうなんですけど、こちらの作品にも、ある一定数の否定的意見がありますね。

    いろんな見方はあると思いますけど、この作品でのジェーンの気持ちが分からない人なんて居るんですねえ。
    彼女は若くして結婚して、恋した途端に“介護士”にならざるを得なくなったんですよね。
    うら若き美人が、その若い時代にするべきことからはかけ離れていたと思いますよね。
    まして、自分の人生を生きることが出来なくなったばかりか、彼の人生を背負い込むことにまでなった訳ですから…辛かったと思います。
    でも、それを見ている博士も辛かったのだろうなあ。

    「あなたを愛したわ」ハッキリした言葉に出さない二人の会話で、十分伝わるものがあって…あのシーンは辛かったですね。

    まあでも、正直言いますと、ジェーンは飛行機ぐらいは乗って欲しかったな…。まあ、映画で見る限りはですけどw
    ホーキング博士が一人で耐えなければいけなかった大きな発作が、あのタイミングで訪れたのは…すごい映画的でしたね。実際はどうだったのかしら。

  7. とらねこさん、こんにちは!
    そうそう。これと「イミテーション」~は、ちょっと偶然共通する処が多い映画でしたよね。
    同時公開で、私は両方見たくて困った一人です^^
    結局、イミテーションを選んで、でもこっちもずっと気になっていて、後から見れて、良かった!
    結果、両方ともかなり良くて気に入った映画でした。

    ところで、なんですとー!!
    とらねこさん、学生時代に、ティーブン・ホーキング博士の理論にハマった事があったんですかい?
    お嬢さん!!すごいじゃないですか(*’▽’)
    そういう思い入れのある人の自伝的な作品だと、色々不安もあったと思うけれど、とらねこさんも満足のいく映画になっていて、良かったです☆

  8. latifaさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    イミテーション・ゲームもこちらもとっても良かったのに、なんだか同じような2本が同時期に公開されて。
    どっちかでいいやと割りを食ってしまったのではないかと人事ながら心配していたので、逆に「どっちも見たい」となる人も居ると聞きホッとしました。

    そうなんですよ。スティーブン・ホーキング博士の特集、NHK教育で何時間もやってましたよね。
    学生の頃だからか、結構ハマってしまって。面白かったですよねえ。
    私は本や音楽は好きな人間なんですが、宇宙論がこんなに面白いとは!って夢中になりました。




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