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『ゴーン・ガール』 虚構とリアリズム、女の二面性

46ab2a12友人と語りたくなる映画だった。「カップルでは見ない方がいい映画」、なんて言われることもあるけれど、私からするとちょっと違うな。この作品を見てどんな風に感じたかを、それこそ一番パートナーに聞くのが一番面白そうよ!
女の怖さは確かに描いてはいるし、それが一番の見どころとなっているのだけれど、たいていの人はここまで劇的に描かれていたら、逆にリアルからは遠いように思えるようで、「自分には関わることもないだろう映画の中のお話」としか思わないみたい。

でもね、私からするとちょっとそれは違うんじゃないかなあって思ったんですね。
逆に男と女をたった二人だけの世界にさせれば、誰しも実は似たり寄ったりの、究極こうした形に行き着くものだと思えましたよ。自分たちの何かしらのエッセンスが散りばめられているように、ちゃんと思える作りになっていたと思うんですね。そこがこの映画の一番の肝で、フィンチャー演出の凄みであり、緻密に作り上げられデザインされた世界ーまさしく映画になっていたと。

実際、ロザムンド・パイク演じるエイミーに、あの徹底的な事件が起きるその瞬間まで、私は何処かしら自分を重ねながら見ることが出来ましたよ。本当はイケてない自分であるのに、一番美しい部分の自分を見せるためショーアップして、相手に幻想を与えようとするのは、意識的にしろ無意識的にしろ、誰しもやっていることであるし。男に全てを捧げたように思い、それが[若い]自分の貴重な時間であったりお金を捧げてしまったが故に、相手に復讐してやると思ったり。よくある恋愛の成れの果ての姿なのに、自分にとってみればかけがえの無い何かを喪失したように感じる。付き合っている間の時間に、相手に何とか顧みてもらおうと無駄な時間を過ごしたり、完全に自分に対して感情が薄れてしまっている相手であるのに、それでもまだ一縷の望みをかけて何とか繋ぎ止めようと思ったり…。そして、”支配しようとするタイプとそれに抗う被支配型タイプ”…。
究極的に見えるけれども、人間二人居るところでは、多かれ少なかれ起こりうることですよね。

ベン目線の第一章では、エイミーの失踪とその謎を描いて、結婚生活の有り様が少しづつ明らかになる。そこでは、先ほど述べたような感情が共有出来る世界を緻密に作り上げておきながら、あえて今度はそれを壊して見せるように思えた。エイミー目線の【エイミーの逃亡】が描かれると同時に、この映画の構造としても拍子を変えていく。リアリティのある世界、自分が感情を込めて共有出来る世界ではなくて、今度は【第二の領域】として、作り物としての面白さ・サスペンスの劇画タッチなフィクションを楽しむための時間が今度は用意されているかのよう。それこそエイミーがベン・アフレック演じる趣向を凝らしたプレゼントのように、慣れた味ではない味にまたも観客が驚かされる。
サスペンスと言えばまるである種の型が出てくるのを想像していた観客は、ここでまたも驚かされてしまうんだと思う。みんなが「あれはあり得ない、ファンタジーの世界だ」と言い切ってしまうのは、この第二の構造が表出してからの印象だと思んですよ。

この先ネタバレで語りますね。********************

そしてエイミーの逃亡劇が終わりを告げる頃には、またも泥沼男女の恋愛劇に戻ってくる。今度はリアリティではなくてソープオペラの世界。リアリズムとしてはあり得ないほどペラッペラで、あそこまで狂態を演じた男女が元サヤに戻るなんて…と言う驚きの結末。リアリズムからは180度向こう側の世界へ到達してしまう。リアリティで語るなら絶対無い世界に変わってしまうのだけれど。でも本当は、決定的な終わりを超えても尚続くカップルなんて居る。どちらかの犠牲の元にある結婚であるかもしれないし、二人共もう本当は感情的には絆はもうない状態であるかもしれない。

でね、またまた恐ろしいことに、そういう人って案外居るもんだなーと思ったりもするんですよ。「どうしてそんな地獄にまた戻っていくの?」なんて傍目には思うのに、それでも続いているカップルは居る…。早晩終わるんだろうなとしか、他人からすれば思えないのに。じゃあ、あなたとパートナーの関係はどう?絶対的な愛なんてある?

…と意地悪にも思ってしまったりして。

P.S…あのね、ちょっと本音言ってもいい?
「長年付き合った女を捨てる男なんて、全員死ねばいいのにね。」

そう思って見ちゃったんですよ、私。さすがにあの血だらけの姿を見てそんな気持ちも冷めたけど。
でも、その瞬間も私、この映画が完璧にデザインされた世界であったような気がしてるんだ。

Rosamund_Pike-W_magazine-May-2014-001


’14年、アメリカ
原題:Gone Girl
監督:デビッド・フィンチャー
製作:アーノン・ミルチャン、ジョシュア・ドーネン、リース・ウィザースプーン他
製作総指揮:レスリー・ディクソン、ブルーナ・パパンドレア
原作:ギリアン・フリン
撮影:ジェフ・クローネンウェス
音楽:トレント・レズナー、アティカス・ロス
キャスト:ベン・アフレック(ニック・ダン)、ロザムンド・パイク(エイミー・ダン)、ニール・パトリック・ハリス(デジー・コリンズ)、タイラー・ペリー(ターナー・ボルト)、キム・ディケンズ(ボニー刑事)、パトリック・フュジット、キャリー・クーン(マーゴット・ダン)、デビッド・クレノン

 

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コメント(14件)

  1. 評判の映画!観てきました~
    久々に見応えありの映画でした。
    私的には「男と女の間には太くて長い河がある」というのが感想です。
    エイミーの気持ち(極端すぎるけど)にはどこかに寄り添える部分がありましたが・・・・。
    妻を愛しているのに若い女と浮気するニック!(それも同じようなキスの仕方)あんな仕打ちを受けながら最後は「元サヤ」に収まろう(?)とするニック!
    ベン・アフレックが適役で・・・・さすが~でした!

  2. cinema_61さんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。

    >私的には「男と女の間には太くて長い河がある」というのが感想です。
    わお!!これ、すっごい上手い一言ですね!
    私もおっしゃるとおりだと思います。男女間の隔たりは、それがあるからこそ調和が取れるという部分もあるかもしれませんが、いずれにせよ”そこにある”ものなんですよね。

    ニックのキスが、若い女にするものと、エイミーにするものが同じ…
    これもまた、すごい指摘だなあと思いました!私はそこまで気付かなかったです。
    嫌々でありながらも、よくあの形で続けていくことが出来るものですよね…。
    百戦錬磨の弁護士からも、化け物扱いされてしまうカップル。
    ベン・アフレックだからこその役柄で、本当に完璧なキャスティングでしたよね!

  3. とらねこさん☆
    遅くなってごめんね~
    なかなか両方の気持ちに理解を示せる映画でしたわ。
    それだけに怖い・・・っ
    エイミーの決定的な感情の爆発は、あの「私の時と同じキスをした!」のを目撃した時に激しく意志決定がされたのよね。
    ここ大事!
    やっぱり裏切られたら、エイミーほど極端でなくても、どうにか復讐してやれと思うもの。
    実際、刃傷沙汰になるカップルもいるわけで…

  4. とらねこさん、こんにちは!
    うんうん、私もこの映画「夫婦で観てこそ!」と思ったな~。
    エイミーのしてることって極端だけど、結局他人が同居する「結婚」生活なんてどこか「演技」してる部分がありますよね。
    That’s marriage. は名言ですな(笑)。
    しかしロザムンド・パイクにはやられたな~。こんな凄い女優さんだったんだね!

  5. ノルウェーまだ〜むさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。

    そうそう、どっちの気持ちにもある程度共感できるんですよね。ただ個人的には、ベンアフが好きでないので、彼が世間から嫌われる様をフフンと鼻を鳴らしながら見ることができちゃった。

    そうそう、「私の時と同じキスをした」ってセリフありましたね。
    ケツアゴを隠す動作までやってたし!(爆

    裏切りは、されたら仕返しをする人は少ない訳で、しかもエイミーのように手の込んだ仕返し…こういうのこそ案外、フィクションだからこそ面白くて、見てみたい!と思えるようなブラックさだったりしますね。

  6. 真紅さんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    カップルで考え方の違いもあるかもしれないけど、改めて「何をどう見たのか」という論点から話すと、意外な視点がありそうですよね!

    そうそう、どこか演技する面はありますよね。各々がその役割分担をこなすというか。もちろん、決められたこととかではなくて。
    何をどう望んでどう相手を喜ばせるか、自分も気持よく過ごすために、相手にも同じように行動して欲しいから、するべき役割をこなす…。

    結婚前の恋人同士であれば、何もかもぶつかり合って、話し合って…という風になるのかもしれないけれど、結婚てそうではない部分が出てくる。

    しかし、人の見方もその深さも、本当にいろいろですねー。
    何人かに話をしたけれど、皆それぞれ全く別のことを言っていたりして、だからこそこの映画の話するの面白いです。
    気が合う人とは、案外ちゃんと意見が合ったりして。

  7. 映画:ゴーン・ガール Gone Girl  演出、キャステイング、音響ともにパーフェクト、で、…



    監督は、デヴィッド・フィンチャー。
    フィンチャーといえば、「セブン」「ソーシャル・ネットワーク」「ドラゴン・タトゥーの女」とか…
    ヤバい作品ばかり!

    映画ではないが、彼制…

  8. ゴーン・ガール


    原題 Gone Girl
    製作年 2014年
    上映時間 148分 映倫区分 R15+
    監督 デビッド・フィンチャー
    出演 ベン・アフレック/ロザムンド・パイク/ニール・パトリック・ハリス/タイラー・ペリー/キム・…

  9. かなり愉しめた作品でしたが、
    どこか懐かしさも感じる展開でもありました。
    ベンのいい加減男っぷりも笑えましたし、
    ロザムンドのいつまでもガールな部分にプラスサイコで、
    いっちゃってる感もスゴイと思いながらも思わず笑ってしまいそうでした(^^;

    男にも女にも、それぞれに用意された恐怖があって、そこはいいラストでしたね~。

  10. kiraさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    なるほど。心の機微のあれこれは、いつの時代も興味を持って見れるものですよね!
    ベンのいい加減ぷりは、すごく分かりますよね〜。あれ、悪い人じゃないんですよね、阿呆なだけで。賢い妻にまんまと騙される役でありながら、しかし騙されっぱなしであるほどお人好しでもない…。
    ロザムンド・パイクは、彼女が演じているからこそ共感出来る部分があって、本当に良かったです!
    ラストで恐ろしくなりつつ、でもどこか「世間の夫婦にはこんな人達も居るのかも…」と思うことが出来ました。

  11. とらねこさん、こんにちは!
    レンタルでやっと見れました。
    公開時、見れなかったのですが、ネタバレ部分も知らない状態で見れて良かったー。

    うーん、、、、私はあの金持ちの高校時代の彼氏が、なんだか気の毒でね。

    映画を見ながら、あんなに室内カメラとかセットしていたら、録画が残っているんじゃないか?とか、余計な事が気になっちゃったわ。

    長年付き合ってた女を捨てる男、ユルセンですよね。私もとある友人が、高校から7年付き合ってたのに、捨てられちゃって他の女性と結婚したってケースを見ていて、凄く腹が立ったのよね。
    その後、その友人とは疎遠になっちゃったから、今どうしているのか解らないんだけども。
    現在の彼女に会って、その後の彼女の人生を聞いて、そうか、その男と結婚しないで良かったのね?別れたからこそ良い人生になったのね、ふってくれてありがとうー!だね、って笑いたいなあー^^

  12. latifaさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    本当、これ何の情報も入れない状態で見るのが楽しいですよね。
    そうそう、ネタバレ知らない状態で見るのが大事ー。

    これ私、それこそ見た人といろんな感想を言い合うのがすごい面白かったんですよ。
    もうそれこそ、千差万別…まさに見た人それぞれに違う意見があって、面白かった〜。
    latifaさんは、高校時代の彼氏が可哀想だったんですね。確かに彼は彼女のことが好きだっただけだもの、単に利用されちゃっただけでしたね。
    ただ彼はちょっと病的、という描写だったような気がしますー。
    そんな昔に付き合ったことのある女を、いくら惚れていたと言っても、ずっと前に結婚したのにそこまで騙されるかなあ…
    “騙される方もそれなりに理由がある”なんてちょっぴり思っちゃったりして。
    それは別として、確かに、彼の家はたくさん監視カメラシステムがあったのに、録画はしてないのかー、って
    その疑問は分かる気はします。
    それに、このシーン以降なんですよね、若干この物語が失速するように感じるのは…。

    別れてしまった彼女も、今は幸せな生活を送られてるといいですね。
    まあ…どんな結婚をしようと、しなくても、それぞれの立場でそれなりに苦労してますよきっと!

  13. とらねこさん、こんにちは。

    確かに、傍からみたら「なんで?」と思う二人でも長く続いている夫婦やカップルっていますよね。
    男女の関係って当人同士にしかわからないものだから、
    どこまで純でどこまで計算なのか?駆け引きなのか?
    本人達でさえも見境が曖昧になっているだろうし、明確な答えはないですよね。
    でも、私は自分に対する感情が薄れている相手でも繋ぎとめようとした事はなくて、
    ダメな気配がしたら自分から終止符を打つので、こういうヒロインの気持ちは理解しきれなかったかも?
    私は無意識のうちに傷つく事を恐れているだけなので、
    そんなのお構いなしにみっともなくなれるヒロインには羨ましく思う気持ちもありました。

  14. BCさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    大阪のオススメスポットも、教えてくださりありがとうございました!
    ありがたく、参考にさせていただきます。
    ただ、空中庭園はもう行ったことありました!
    シネ・リーブル梅田も行ったことありましたよ♪
    http://www.rezavoircats.com/2014/05/16120

    私はこのヒロインにとって、男を取り戻したくなった理由は、彼女がこの上なくプライドが高かった故というのもあったかと思います。
    みっともなく愛にすがったというより、自分が愛を与え、かつ壮大な計画まで練った、
    そんなにまで手間暇をかけた男を、諦めるのが忍びなくなった…という。
    究極の肉食系女子のプライドのようなものだったのでは、と思っていたりもします。
    まして自分の頭脳や計画性の高さを誇る彼女ですから…
    あ、私のこうした感想は映画のみというより、原作を読んだためもあったかもしれません♪
    http://www.rezavoircats.com/2015/10/18185




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