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『喰女 クイメ』 舞台芸術をドープに堪能

poster2大満足の三池ホラー!この夏、ホラーがやってないよぅ…と半泣きしていた夏の終わりへ、ふらりやって来た。つい嬉し泣きすらしてしまう!そして、なんだかんだ言って三池さん久々のホラー。あれ?『インプリント ぼっけえ、きょうてえ』以来じゃないの!

『四谷怪談』の舞台である稽古パートでは、舞台をそのまま見るかのような迫真さ。モノトーンを基調にした舞台芸術を堪能。現実のパートでは、「たまに舞台が一生終わらなければいいのにと思う」と言う伊藤英明に向かって、「私はそういうの一度も無いわ」と言う柴咲コウ(後藤美雪)。ところが、稽古が進むに連れ、次第に舞台パートが現実を侵食してくる。
それは、岩の亡霊が彼女に取り憑いたかのよう。現代に生きる女性らしく、何となく情の薄そうなこのヒロインが、“岩”という“女の怨念”の権化のような存在に侵食されていく怖さ。演技の世界は、演じるその人物になりきることで、何か別の人格が乗り移ったかのように、自分を忘れて演技に没頭することが出来る。そんな面もあるだろう。彼女の私生活が、まるで岩の受けた男の冷たい仕打ちに似通ってくる。現実との境目がまるで地続きで繋がっているかのような描写が、この表現に拍車をかける。現実の中に、幽玄の世界がドロっと溶け出し、境界線を無くしていく。

この先、ネタバレ******************

ふと気づくと、岩が取り憑いているかに思える瞬間があり、この辺りからヒロインが美雪なのか岩なのか、判別付かなくなっている。浩介(市川海老蔵)の死に様を見れば分かるように、岩もしくは美雪の亡霊と思われる、“自由に魂から抜け出ることの出来た存在”が、彼を車の中で斬首し殺している。顔が同じなので、見分けがつかない。これも計算の上だと思われる。

ラストの何事もなかったかのような美雪の笑顔が、岩そのものが成り代わった姿かもしれない、と思わせる。だとすればあの堕胎の大量出血の際に美雪も死んでいる。それは、岩の怨念そのものが美雪に取り憑いたという見方も出来るが、美雪が岩と同化し、彼女に成り代わったとも見れる。(死体が出てこないので、こちらの線が濃いかもしれない。)
いずれにせよ、岩もしくは美雪の存在が、身勝手な男を代表する“浩介”を殺しており、そこで岩の思いは果たせている。女全体としての存在が、男達の卑怯さを殺したのだ。ここが四谷怪談の心底恐ろしい部分で、不思議と女の哀しさを思わせ、同時にカタルシスを感じる。痛快な気持ちさえある。クッ、男よ、ざまあみろ…!

あまり怖くない、と言う人もいるが、そう言う人は女の怖さを軽視しているんじゃないだろうか。
私には怖かった。
自分の中の“女としての情念”が、どれほど深いかを知っているから。

P.S.市川海老蔵の台詞の喋り方は、いかにも舞台風。これは演出であり、わざとだと思った。より舞台と現実との区別が付かなくなる仕掛けになるし、彼が舞台の中の伊右エ門そのものだという表現でもある。何より『一命』ではこんな喋り方をしていなかった。
一方、伊藤英明の渾身の演技が本当に素晴らしかった!白目を剥いて怪演。こんな事も出来る俳優さんだったなんて…。
盲の按摩師の役ということで、何となく『盲獣』みたい。
柴咲コウは『着信アリ』でも三池さんとタッグを組んでいるけれど、彼女は情念的な表現は少し弱い。あまり怖くないけれど、この無表情が余計、何を考えているか分からない感じはある。
それに、根岸季衣がその分、何十倍も怖いしね!

’14年、東映
監督:三池崇史
企画:市川海老蔵、中沢敏明
原作・脚本:山岸きくみ
キャスト:市川海老蔵(伊右衛門/長谷川浩介)、柴咲コウ(民谷岩/後藤美雪)、伊藤英明(宅悦/鈴木順)、中西美帆(伊藤梅/朝比奈莉緒)、マイコ(倉田加代子)、根岸季衣(乳母槙/堀内みすづ)、勝野洋(民谷又佐エ門/尾形道三郎)、古谷一行(伊藤喜兵衛/嶋田貫二)

 

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コメント(4件)

  1. とらねこさん☆
    きゃー、これは怖そう・・・怖すぎでは??と思って、観るのはパスしちゃったー
    このところ年のせいか(爆)、がっつりしたホラーは避けるようになったかも。
    特に邦画の。
    やっぱり邦画のホラーは怖いよね。

  2. ノルウェーまだ〜むさんへ

    こちらにもありがとうございます♪
    いや、そんなに映画自体は怖くはないんですよ。むしろ、人間が怖いよね…という結論になるのが一番正しい解釈、と言いますか。
    頭で分析したり考えさせられる面も多々ある一方、映像そのものの美に酔う感じもあります。

    あと、柴咲コウさんが役不足で、あまりお上手でないためそれほど怖くない、というのもありましたー。
    あっ、言っちゃった(苦笑)

  3. 鑑賞後何日か過ぎてみますと
    この映画はなかなかの名画だったのではないかと感じております
    舞台芝居は見てる時、弱冠退屈でしたが、今思えば素晴らしい実験精神ではないかと
    あと柴咲コウさんは 上手いも下手もなくあーゆー人なので
    勘弁してあげてくださいと弁護したいと思います
    伊藤英明さんは海猿が厭でしたが「悪の経典」から好きになりました、この映画の宅悦役も頑張ってましたね
    根岸季衣が一番怖かったのに激しく同意します

  4. よしはらさんへ

    こちらにもありがとうございます♪
    ですよね〜!これ、すごく良かったですよね。
    どことなく難解な部分もあって、噛みごたえがあるというか、
    こういうテイストが大好きなんです。
    「ここはこういう演出で行こう」的拘りがたまらないというか、
    生理的に“来る”表現がすっごく好き!^^*

    舞台芝居の部分は、舞台をここまで間近で見れるチャンスが無いので、ウットリしてました。
    そうそう、実験的でもありましたよね!

    私も、伊藤英明は海猿シリーズがどーにもこーにもで…。『252』もしょーもない作品でしたし。(『陰陽師』ではナカナカ良かったです)
    『悪の教典』は正直まだ認めてなかったんですが(偉そうw)、今回は本当に頑張ってました!
    三池さんの作品て、必ず美味しい脇役が居て、途端に好きになったりします。
    さすがですよね〜。
    柴咲コウさんみたいな有名女優じゃなくて、無名の人で良いから不気味な迫力のある女優さんが良かったナと思います…。




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