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軍旗はためく下に

大傑作。『ゆきゆきて神軍』より15年前にこの作品があった!

とある軍曹の戦死の知らせだけ受け取った未亡人は、戦死者名簿に含まれていないのを訝しむ。何故なら、8/15に行われる、「戦没者追悼式」において天皇陛下より花が手向けられないということだから。聞けば裁判も無しに処刑されたと言う。事の真相を巡って、軍曹の生前を知る生き残りの者達を訪ねてゆく。そう、今年の初めに大ヒットした『永遠の0』(クリックで拙記事へ)にそっくりですね。この作品から形式だけ真似したのだろうか、それとも、『ゆきゆきて神軍』の方だろうか。いぜれと較べても何と図々しい、浅薄な作品に仕上がったことだ…。あ、これ(『永遠の0』)私のオールタイムワースト1。

現在ならばここまでの反戦映画は作られないだろうというのが残念。一軍曹の死の真相を知るうちに、戦争の歪(いびつ)な姿が嫌でも浮かび上がってくる見事さ。サスペンスとしても一級品的に素晴らしい。4人の人物の証言が食い違いがあるのだが、ラストにもう一度初めの人物に戻って来ざるを得なくなる。すると何と、ピタリと符号が合ってパズルが完成する。この様は圧巻!さすがの新藤兼人脚本。娯楽性までバッチリあり面白く見れる歯切れの良さは、さすがの深作作品!
『ゆきゆきて神軍』は今思えば、この作品と『野火』を足したような作品のようだ。
これを東宝がやってたなんてねえ…。

’72年、東宝
監督:深作欣二
脚本:新藤兼人
原作:結城昌治
撮影:瀬川浩
音楽:林光
キャスト:丹波哲郎(富樫勝男)、左幸子(妻サキエ)、藤田弓子(娘トモ子)、三谷昇(寺田継夫)、ポール牧(ポール・槙)、市川祥之助(超智信行)他


野火

50年経っても決して魅力が衰えない、反戦映画の傑作。
今回、上記の『軍旗はためく下に』とこの作品を、8/15という終戦記念日に見ることが出来た。特集の名もそのものずばり、「反戦社会派映画特集」。今の全体的な日本のムードにあってのこの特集、ズッシリ心に滲みました。素晴らしかった。心から感動しました。
 とても重い2作だったけれど、この程度で「重い」などと言っていては映画好きが廃(すた)る。劇場の姿勢に感激したので、友の会に入会することにしました。次回、絶対入ります。

戦争映画のリアリズム。例えば軍機への憧れや、零戦の格好良さ、そうしたものとはかけ離れたところにある、戦争の本当の姿。戦争末期の人間の心理を、じわりと炙り出した傑作だった。
船越英二はガリガリでこの役に挑んでいて、見事。田村(船越英二)に猿の肉を喰わせようとする永松(ミッキー・カーチス)。「こいつも食ったぞ、とうとう仲間になった」というところで、この仲間感覚が彼らにとって大事であったことが分かる。ミッキー・カーチスの演技の妙味が、作品の味わいを深めさせている。

それから、パロンポンに集合させられ歩く兵士達のが目に焼き付いた。まるで百度参りのように、あるいは死出の旅路を歩く仏のようにも、そぞろ歩くゾンビのようにも見えた。
地獄巡りの途中、もう一度出会った安田と永松の、生き残りを賭けた心理戦に、やるせない気持ちにさせられる。ギリギリのバランスで助け合って生きてきたはずなのに、たった1つの手榴弾で殺し合いが始まる。ラスト、「どんな目に会おうとも、人間らしい人間の居るところに行きたい」と野火の方へと歩き出していく。原作の“野火”の意味合いに、映画ならではの別の趣を与えていて素晴らしい。

’59年、大映
監督:市川崑
原作:大岡昇平
撮影:小林節雄
音楽:芥川也寸志
キャスト:船越英二(田村)、ミッキー・カーチス(永松)、滝沢修(安田)、月田昌也(兵隊)、杉田康(兵隊)、浜口喜博(下士官)、山茶花究(無精髯の軍医)、稲葉義男(兵隊)

 

2014/09/08 | :戦争

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コメント(3件)

  1. とらねこさん☆
    「野火」は大岡昇平の作品ですねー
    うちの娘が今、大岡の大ファンで常々「野火」の話をするので、そのうち見なくては…と思っていたのです。
    最近テレビであまり戦争ものを「きちんと」やらなくなってきたけれど、こういうタイミングで見る『心構え』は忘れないようにしないとね。

  2. ノルウェーまだ〜むさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    そうなんです、『野火』は大岡昇平の原作なんですよ。私も読みました。
    へえ〜、ねえねさんは大岡昇平好きだったのですね。いつ聞いてもねえねさんの趣味は立派だなあ。

    こちらは’59年の市川版なのだけれど、今年もしくは来年辺りに
    塚本監督の『野火』が公開されるはず!
    この間ちょうどヴェネチア映画祭でかけられたばっかりで
    まだ映画は公開されていないけれど。
    楽しみですよね!

    私は8/15の終戦記念日にこちらの2本を見ました。
    今頃書いてるのがバレた…。

  3. 『暁の追跡』『野火』をシネマヴェーラ渋谷で観て、やっぱり『野火』は怖かった男ふじき、☆☆☆,☆☆☆☆

    特集上映「市川崑初期作品集」から1プログラム。


    ◆『暁の追跡』

    五つ星評価で【☆☆☆すまんけど普通】


    悩める若きおまわりさんを演じる池部良がかっこいい。
    池部良っ …




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