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ベルリン・アレクサンダー広場@ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー映画祭

チキチキ ファスビンダー、寝落ちったら終わりの耐久レース!

フランツ・ビーバーコップの受難の遍歴。全14話/15時間ある今作を鑑賞。
いやー、15時間の続き物を映画館で見るなんて、なかなか出来ない経験ですよね。
こんな長いシリーズを映画館へ通って見るのは初めて。ドイツで放映された時も、“ファスビンダーの最高傑作”ということで鳴り物入りで掛けられたそうだし、デヴィッド・リンチで一番好きなのが『ツイン・ピークス』という私には、もしかしたらピッタリかもしれない!と思いましてね。
もし寝落ちったらそこで今回は終わりにしよう、と続きのチケットは買わずに全部1回づつ購入しました。また次回いつかやることを祈って、途中まででもいいから見ようと始めたのだけれど…何と、全く寝ないで最後の14話/エピローグまで見た。いやー、気合次第なんですね。一日に6時間映画見るのは、根性無しの私にはちょっと辛いかと思ったけれど、良く考えてみたら別に3本ぐらいは普通にやってるよなぁ。14話目はちょっとうとうと来てしまったけれど。

4年間の獄中生活から釈放され、現実社会に戻ってくるフランツ(ギュンター・ランプレヒト)。門を出る前に割れるように耳鳴りがして、大声で歌を歌いながら耳を塞ぐビーバーコップ。彼の恐怖の表情が印象的。彼がこの後迎える現実の様々な厳しさを思うと、その恐怖にも納得がいくというもの。
獄中生活から出てまず初めにやるのは女探し。久しぶりで上手く行かず娼婦には馬鹿にされ、自分が手をかけてしまった死んだ妻の妹を無理やり犯す。「ようやく男に戻れた!」と歓喜の表情。フランツはまた義妹の元へ通うが、追い出される。
しかし、とある一人の女、リナ(エリーザベト・トリッセナー)と酒場で出会い、恋愛関係になる。

もう一度ベルリンで悪いことをせずに生きていくことを誓うが、不況で解雇者の多い時代。なかなかまともな職業に就けない。靴の紐を売って過ごす職業に就こうとするも、リナの叔父オットーに騙され、家を飛び出してしまう。リナはメックと消えていき、ビーバーコップは再び一人になる。5話目からラインホルトが登場すると、物語は俄然面白くなってくる。ラインホルトと女を交換する、などというおかしな共犯関係に陥る。その後、娼婦のソーニャに会い、彼女をミーツェと名づけて、彼女と幸福な恋愛関係になる。ソーニャは明らかにドストエフスキーの『罪と罰』でラスコーリニコフを救う女性の名前。この作品へのオマージュを捧げているように思える。

フランツ・ビーバーコップは「未来が無い人間」として重い過去を背負って生きているのだけれど、「過去は過去、明日は明日だ!」という台詞がようやく出てくる瞬間が来るのは、物語のちょうど真ん中、7話目の一番最後だ。「過去は過去」の台詞が語られたところで、イーダを殺した映像が差し挟まれ、その後「明日は明日だ!」と言ってのける。その後、しばらくビーバーコップは悩まなくなる。ただ彼は初めの妻イーダの時と同じ、ヒモのその日暮らしに戻っただけだったとも言えるのだが…。

ビーバーコップは騙されやすい、人を信じやすい人間。女好きで、子供のような素直さがある。だからいつでも彼が困ると手を差し伸べる友人たちは居るし、女達は彼を好きになる。彼と正反対なのはラインホルトで、彼は女を手に入れるものの、すぐ飽きて女達を憎み始め、彼女たちを捨てたくなる。ラインホルトみたいな男って居るよなあ…。彼は物語終盤にはもっと悪人になるのだけれど。このラインホルトとの関係がフランツに悪影響を及ぼすことになる。ラスト近くの悲劇もまさにラインホルトのせい。

それにしても、よくもまあこうした作品がドラマとして放映されたなあ。いくら34年前とは言え。ドイツ国民て凄い。4話目の終わりは、「自由の闘士オシエツキー、有罪判定決まる!」というものだった。オシエツキーについては、おそらくドイツ国内でさぞかし議論の俎上に載せられたに違いない。ポン引きの台詞も「さあ、ここに来なさい。娼婦バビロンを見せよう。お前は一人の女が真紅の獣にまたがっているのを見る。全身至るところ神を冒涜する数々の名で覆われており、七頭と十角を持つ…」などと言ったりする。さすが、ゲーテを輩出した国(なんちゃって!?)。

14話目、エピローグは付け足しのような存在だけれど、ビーバーコップが狂気を彷徨う精神世界は、前衛芸術そのもの。ホドロフスキーっぽい。次から次へと現れ、消えていく幻影。リアルさを感じさせる映像の中、一気に幻影が花開くのはこのエピソードのみ。幻影の最後には、ブリューゲルの「十字架を背負うキリスト」そのものの映像が登場する。また、ヨブ記が読まれるシーンでは、ギリギリまで光量を落とし、画素がギリギリまで荒くなりまるでゴヤの絵のよう。

ヒモで犯罪者で人殺し。これがビーバーコップの人生の全てなんですよね。なんだか恐ろしい夢を見ていたような気がする。彼の地獄巡りを、決して自分と全く関係の無い誰か他人のこととは思えなかった。いつでも人生は、気づいた時にはもう遅い。

’80年、西ドイツ、イタリア
原題:Berlin AlexanderPlatz
監督・脚本:ライナー・ベルナー・ファスビンダー
原作:アルフレート・デーブリン
撮影:ザビエ・ショワルツェンベルガー
音楽:ペール・ラーベン
キャスト:ギュンター・ランプレヒト(フランツ・ビーバーコップ)、ハンナ・シグラ(エヴァ)、エリーザベト・トリッセナー(リナ)、バルバラ・スコバ(ミーツェ)、ゴットフリート・ヨーン(ラインホルト)

 

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コメント(2件)

  1. 今年も上映したんですね。オーディトリウムのファスビンダー祭、ちっとも知らなかった。
    私は昨年ユーロでコンプリましたが、なかなか貴重な体験でした。
    寝落ちで打ち切りのとらねこルールに基づいて鑑賞していたら、私などは第4話でアウトでしたけれど・・・

  2. imaponさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    そうだった〜!imaponさんもそういえばご覧になってましたよね。「うわあ、見てる見てる〜!」なんて思ってたんでした。

    そうそう、確かユーロの時って、パスポートがあったんですよね。パスポートで行けばちょっと安くなるんだけど、寝落ちったら終わりのとらねこルールでは、パスポートを選択する余地が無く…、とは言え全部行くのは高いしで、うにうにしてたんですよ。




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