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『とらわれて、夏』 哀しい大人のラブストーリー

torawarete_posterサンキュ-・スモ-キング』からずっと好きなジェイソン・ライトマン監督。なんだけど、今回はある種ストレ-トなテイストで驚いた。人生のほんの少しの苦味を上手に感じさせる監督だと思っていたので。今回ももちろんそういう類の苦味は感じたけれど、ロマンチックな部分が甘すぎるように思ったりもした。と言いつつ、この物語に大いに酔わされてしまったのだけれど。

この作品を好きになるタイプの人は、おそらく『マディソン郡の橋』も好きかもしれない。マディソン郡~では、たった3日間の出会いが彼女の生涯を変えたけれど、こちらは5日間の出会いが彼女の人生を満たした。前者と違うのは、こちらでは浮気の必要が無くハッピ-エンドであるから余計分かりやすいところ。

大人って、孤独なんですよね。見た目にはノーマルに思えていても、その一枚膜を隔てた内側では、絶望していたり、満たされない欲望を抱え、どうしていいか分からないまま生きていたりする。そうした心の内がしっとりと沁みる物語でした。
この5日間の“囚われの期間”で次第に分かるのは、ノ-マルな親子に見える傍から見た姿と、母親である彼女の女としての実人生の寂しさ。満たされず、絶望を抱えたまま生きていく人が、空気のように欲する愛。溺れかける者が藁をも掴むように、触れるべき存在を求める。“誰もが触れられることを欲している”という彼女の一言は、大きな悲しみの内に過ごしていた彼女の孤独を感じさせ、涙が自然に溢れてきた。あの5日間で、彼女の人生はどれだけ救われたんだろう。

これをケイト・ウィンスレット、ジョシュ・ブロ-リンなど実力派の役者が揃って演じているところがまた良い。

“囚われの心理学”というものがある。囚われた者が、捕えた者にいつしか愛情を感じてしまうというもの。こうした心理を、大人の恋愛物語として上手に昇華させた、見応えのある一夏のラブストーリーだった。



’13年、アメリカ
原題:Labor Day
監督・脚本:ジェイソン・ライトマン
製作:リアンヌ・ハルフォン、ラッセル・スミス他
製作総指揮:スティーブン・レイルズ、マーク・ロイバル他
原作:ジョイス・メイナード
撮影:エリック・スティールバーグ
音楽:ロルフ・ケント、音楽監修:ランドール・ポスター
キャスト:ケイト・ウィンスレット(アデル)、ジョシュ・ブローリン(フランク)、ガトリン・グリフィス(ヘンリー/少年)、トビー・マグワイア(ヘンリー/成人)他

 

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コメント(6件)

  1. とらねこさんが「マディソン郡の橋」との共通性をおっしゃっていたので観てきました~

    いい意味で期待を裏切られ、不覚にも涙してしまいました。
    久しぶりの大人のラブストーリーでしたね。
    女は5日間でも深く愛し、愛された経験があれば一生幸せに生きていける?・・・と思いたい。
    男女の愛だけでなく、「母と息子の関係」や「女性の産む性」なども絡み合い、分かりやすいストーリーながらハラハラドキドキしながら見終えました。
    ラストにスパイダーマンのドビーが出てきて驚いたけど、ナレーションは彼なんですね。
    全編を流れる音楽も心地よかったです~

    ところでとらねこさん、関西旅行は如何でしたか?
    私は来週からイタリア旅行です!

  2. cinema_61さんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
    わあ、嬉しい。早く書いた甲斐があります!やはり、早めにUpしないといけませんね。

    >いい意味で期待を裏切られ、不覚にも涙してしまいました
    私もです!ラストの展開、とても嬉しくて。それこそ『マディソン郡の橋』と違う部分で、いい意味で裏切られました。人生はこうありたいものです。

    >男女の愛だけでなく、「母と息子の関係」や「女性の産む性」なども絡み合い、
    おっしゃる通りですよね。子供を目線にしたことで、単なる男性と女性の物語でなく、複合的な目線になっていてさらに面白かったです。
    シンプルながら、GW公開作品の中の注目作ですね。

    イタリア旅行、羨ましい!大好きな国です。また行きたいなあ。その話聞かせて欲しいです(笑
    私は昨日から今日の朝まで徹夜仕事で、明日から今度は軽井沢旅行に行って来ます!

  3. 映画:とらわれて夏 Labor Day  登場人物たちに、まるで永遠のように記憶される 5日間。




    既に2度もアカデミー賞にノミニーの、ジェイソン・ライトマン監督の最新作。
    (「JUNO/ジュノ」「マイレージ、マイライフ」)


    買物に出かけた主婦(ケイト・ウィンスレット)は…

  4. とらねこさん、こんにちは!
    マジソン郡、私も頭で浮かびました。
    マジソンより、こちらの方がなぜか私は面白かったです。マジソンは性的な部分が重症な印象があったのね・・・。
    こちらは、お料理上手だったり、お家の事やってくれたり・・って部分がメインに出てたのも好ましかった^^

    で、先日のコメントへのレス(#^.^#)
    そうかぁーそうだったのね?
    でも高校時代に結婚したいとまで思える人と出合えて、交際できたこと、スバラシイ!
    そして、とらねこさんの、あえてしないで・・っていう策?賢い!って思いましたよ。
    確かに、しないで保留にしておくほうが、捨てられない?(言葉は悪いけど)し、強い立場にいられる傾向がある気がする・・・。
    この年になるまで生きて来て、私の周りを見渡した感じでは。

    そして、その彼、今でも、そして一生、とらねこさんのこと、覚えているし、きっと引きずっていますよ^^
    もし、一度でも致した事があったなら、そういうのは無いかもしれない。

  5. マジソンじゃなくて、マディソンでしたね。おばば発音になってしもーた(*^-^*)

  6. latifaさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    『マディソン郡の橋』、これ大好きな人は大好きですよね〜。
    そうそう、私もマディソン郡〜より、こちらの方が好きだったんです。おっしゃるように、女性の心の中で感じる肉体的渇望を捉えたり、感覚的にエロティックなムードを漂わせたところは、物語としてとても「正しい」物のように思えました。
    あと、子供の目線が出ることでまた最後の方に物語が転調するところも面白いですよね。

    「“あえてしない”策によって、高校の時の同級生が、私のことを忘れないだろう」という言説にビックリ!
    本当に、仰る通りなんです。この話、青春時にそうした精神的恋愛経験をしなかった人に言うと、なんだかまるで分かってもらえないの!
    ちょっとしか話してないのに、気持ちにピッタリしたことをおっしゃるlatifaさんに驚いてしまいました。

    この頃の自分は、精神的な存在になりたかったんですよ。物欲や肉体的な欲求ではなくて、心から“愛される”にはどうしたらいいか、とそればかり考えていました。
    ピュアな恋愛がしたかったんですよね。
    なんたって私の好きな本は『谷間の百合』ですから…。アハハw




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