rss twitter fb hatena gplus

*

『黒い潮』『闇を横切れ』

2014-03-23_0024

黒い潮

中古のVHSしか無い、山村聰の監督作品。35mmフィルムにて。原作は井上靖の同名小説。
今回はジャーナリスト映画二本立てにしたのか、こちらの作品も『闇を横切れ』も見事に骨太な社会派ジャーナリズム映画だった。
山村聰の監督作品としては、『蟹工船』に続く二本目。山村聰がこうした社会派の映画のメガホンを撮るようなタイプだったとは、またもまたも、その二枚目の見た目に騙された!

物語は、ジャーナリズムとしてどういったスタンスで記事を書くべきかという、真摯なテーマを扱ったもの。記者としては、事件を煽るような書き方をした方が面白いし、新聞の購買数も伸びる。だが本来、記事はあくまで個人的な見解を出さず、真実を追うべきだ、等々。そう主張する主人公の速水氏だが、実は彼自身が「真実の深い闇」に囚われすぎていた。彼の過去の葛藤までも抉っていく。

ジャーナリズムの本質を掘り下げるテーマでありながら、一方では一つの事件についてサスペンスフルに追っていく。このスタンスが良く、楽しめた。娯楽のバランスとテーマの深さ、刺激。面白くて全くダレることなく、最後まで見せる。全てのバランスが良い作品だった。今の日本人が見れば、真面目過ぎるように思えるかもしれない。けれど、ジャーナリズムに対して真摯な昔の日本人の姿勢は、むしろ羨ましく感じた。アーロン・ソーキンが脚本を書いたTVドラマ『ニュースルーム』の、真実に対するスタンスとジャーナリズムの葛藤と同じだった。自分の信念を貫き通す記者を信じ、彼に全てを託す上司も同じ。アメリカのTVドラマに出来て、昔の日本人に出来て、今の日本人に出来ない、骨太な社会派娯楽映画。

’54年、日活
監督:山村聰
脚色:菊島隆三
原作:井上靖
製作:高木雅行
撮影:横山実
キャスト:山村聰(速水卓夫)、東野英治郎(佐竹雨山)、津島恵子(佐竹景子)、夏川静江(佐竹母)、滝沢修(山名部長)、安部徹(石井副部長)、河野秋武(記者筧)他

 

闇を横切れ

増村保造の’59年の作品。山村聰自身が監督した、『黒い潮』を見て、彼をキャスティングしたのかもしれない。そう思えるような、同じジャーナリズムを真摯に扱った作品だった。増村初期の作品なのに、この完成度!
主役は川口浩演じる、若い熱血漢の石塚のように初めは見える。ジャーナリストとしては駆け出しで、若さと情熱がほとばしっている。山村聰演じる局長に憧れを抱いている。面白いのが、局長に憧れているんです、と言い彼にハンカチをもらうシーンがある。ここで初めて口笛が聴こえてくる。BGMとしては小さめの音でさり気なく、だ。これが何度かかかるのだけれど、ラストでこの口笛がかかると思わず鳥肌が立つ。さすが増村保造!この娯楽性、面白さ。社会派作品でありながら、文句なしに面白い。

保守、革新。全てに慣れ、それぞれの時代を生き抜いてきた高沢。山村聰演じる局長は、ただ正義漢一辺倒の主人公石塚より、ずっと複雑なキャラクターを見事に演じていて、圧倒的な存在感を放っている。真の意味でのジャーナリズムのプロであったのに、いつしかシステムに絡み取られてしまう。政治の世界では、若さや情熱ばかりではやっていけない。駆け引き上手であり、やり手だったからこそ、正義感だけでは無くやって来たはず。機を見て真実を晒す覚悟。彼こそが、こうあって欲しいジャーナリズムの姿だった。口笛の音は、局長のラストのシーンに重ねられる。この作品の主役が本当は誰だったのか、最後になって分かる。恰好いいシーンだったなあ!口笛映画のオールタイムベストテンをもしやるなら、私の一位に輝く作品ですね。



’59年、大映
監督:増村保造
脚本:菊島隆三、増村保造
製作:武田一義
撮影:村井博
キャスト:川口浩(石塚邦夫)、山村聰(高沢渉)、叶順子(鳥居元美)、滝沢修(広瀬陽吉)、高松英郎(生田)、杉田康(掛川紘一)、八潮悠子(鳴海純子)、大山健二(片山)、滝花久子(片山の妻)、南方伸夫(水原)、潮万太郎(山野)、松本克平(落合正英)他


 

関連記事

『沈黙』 日本人の沼的心性とは相容れないロジカルさ

結論から言うと、あまりのめり込める作品ではなかった。 『沈黙』をアメリ...
記事を読む

『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』 アメリカ亜流派のレイドバック主義

80年代の映画を見るなら、私は断然アメリカ映画派だ。 日本の80年代の...
記事を読む

『湯を沸かすほどの熱い愛』 生の精算と最後に残るもの

一言で言えば、宮沢りえの存在感があってこそ成立する作品かもしれない。こ...
記事を読む

美容師にハマりストーカーに変身する主婦・常盤貴子 『だれかの木琴』

お気に入りの美容師を探すのって、私にとってはちょっぴり大事なことだった...
記事を読む

『日本のいちばん長い日』で終戦記念日を迎えた

今年も新文芸坐にて、反戦映画祭に行ってきた。 3年連続。 個人的に、終...
記事を読む

1,503

コメント(4件)

  1. 「闇を横切れ」面白かったですね。
    叶順子も良かった。今まで見た叶順子で一番は「鍵」だけど可愛さではこちら。
    「黒い潮」は逃しました・・・

  2. とらねこさん☆
    このところ無骨な映画をご覧になってますねーっ
    私は息子が春休みで家でごろごろごろごろしている上に、パソコンを占領されていて、なかなか思うような生活ができませぬ。

    古い映画なのに最後まで飽きさせずに見せる社会派映画、いいですね~

  3. imaponさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    『黒い潮』の方もかなり面白かったんですが、『闇を横切れ』の方はそれをさらに上回ってきたのがすごかったです。
    imaponさんも見たなんて嬉しい〜♪
    叶順子も良かったですね!あの2人のラブストーリーがなかなか説得力がありました。^^

  4. ノルウェーまだ〜むさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    あーそっか!今って春休み期間中なんですね。それじゃあ、お母さんは忙しい訳ですね。
    ところで、息子さんと一緒だと、映画行くにも趣味合わせてあげたりしなくちゃいけなくて大変そう。。
    パソコンも占領されちゃってるのかー。ふふふ。ノルウェー家のおうちの中を知ってしまった。。

    この2作、とっても良かったですよー。確かに最近は渋い映画ばかりが続いてしまっているなぁ。




管理人にのみ公開されます

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)


スパム対策をしています。コメント出来ない方は、こちらよりお知らせください。
Google
WWW を検索
このブログ内を検索
『沈黙』 日本人の沼的心性とは相容れないロジカルさ

結論から言うと、あまりのめり込める作品ではなかった。 『沈黙』をアメリ...

【シリーズ秘湯】乳頭温泉郷 鶴の湯温泉に泊まってきた【混浴】

数ある名湯の中でも、特別エロい名前の温泉と言えばこれでしょう。 乳頭温...

2016年12月の評価別INDEX

年始に久しぶりに実家に帰ったんですが、やはり自分の家族は気を使わなくて...

とらねこのオレアカデミー賞 2016

10執念…ならぬ10周年を迎えて、さすがに息切れしてきました。 まあ今...

2016年11月の評価別INDEX & 【石巻ラプラスレポート】

仕事が忙しくなったためもあり、ブログを書く気力が若干減ってきたせいもあ...

→もっと見る

【あ行】【か行】【さ行】【た行】 【な行】
【は行】【ま行】【や行】 【ら行】【わ行】
【英数字】


  • ピエル(P)・パオロ(P)・パゾリーニ(P)ってどんだけPやねん

PAGE TOP ↑