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アンゲロプロス監督の遺作をシネコンで… 『エレニの帰郷』

dust-of-time-aggelopoulos1-370x300アンゲロプロスはと言うと、一昔前のシネフィルがこぞって彼を崇め奉っていたイメージ。私は高校生の時に『旅芸人の記録』を見たのが最初で、個人的にはこれが一番好き。これ以外には『永遠と一日』、『霧の中の風景』、『こうのとり、たちずさんで』しかまだ見てない。『エレニの旅』は4年位前に劇場で見た。さらに最近、DVDを借りて復習して臨む♪

三部作での二番目の作品でありながら、これが遺作なんですね。つまり最終話が作られず中途で終わったと言える。正直、自分はこの作品が良い出来であるとは思えなかったから、余計に完結編の方が見たかった。

中には『~旅』の方を観ないでこの作品のみ見る人も居るかもしれない。そんな人には、是非とも『~旅』の方こそ見ることを薦めたいですね。素晴らしい傑作、言葉も出ないほどの美しさを持った作品が前作なので。物語そのものも『~旅』と繋がっていて、この作品はそのずっと後年の設定。…

『~旅』の数々の思い出が、この作品の記憶装置に持ち込まれていて、涙腺を決壊させる。つまり、この作品を堪能するためには、前作をまるでフラッシュバックのように、自分の中で勝手に思い起こす、このやり方がこの作品を楽しむ裏ワザであったように思う。「時の埃」を意味する原題である、「Dust of Time」。冒頭、感激で胸がいっぱいになった。長回しもハッキリと魅力に繋がっていて、例えば電車を映し、さらにその上へとカメラが上がっていき、また戻ってくるショットなんて本当に素晴らしくて。

物語は時代が交錯して、気づけば別の時代・別の時・場所が繋ぎ合わされている。人の記憶そのものが曖昧であるかのように、人が逝く前に見るという走馬灯の映像のように、意識の流れ派のように。時を振り返り、立ち止まり、先に行く。記憶の中で追いかけていた人に会えたその瞬間。長年会っていなかった息子との邂逅。長年一緒に日々を共にした夫の愛と、諦めざるを得なかった愛と。時代も場所も違うばかりか、使われた原語や国も様々で少々混乱した。英語・ロシア語・ドイツ語・ギリシャ語…フランス語…あと何だっただろう?

 

この先、ネタバレ*****************

ブルーノ・ガンツ演じるヤコブの最後、ミレニアムの大晦日(1999年12月31日)で幕を閉じる。第三の翼が折れた天使。彼が最後に落ちた川、その川の水を思わせるような、手から溢れる水。エレニにとって、心からの望みであった故郷と、行くべき場所を失った男。

そのデリケートな完璧性がアンゲロプロスという人の特質なのだとしたら、こちらは遺作に相応しいとは言えない、物足りなさの残る作品だった。’08年に製作しているのに、なかなか配給されなかったのは、どういった訳が何かあるのだろうか。余計なお世話を焼いてしまう。

ウィレム・デフォーはいい役者だけれど、この作品の中で自然に呼吸するような役者とは思えなかった。彼が出演したシーンは …特に大写しになると、映画全体がチープに感じられた。それから、部屋がサブカル過ぎだ!まるでティーンネイジャーの部屋みたい。チェ・ゲバラは好きみたいですね、2つも写真あって…私も好きです…。

’08年、ギリシャ・ドイツ・カナダ・ロシア
監督・製作:テオ・アンゲロプロス
脚本:テオ・アンゲロプロス、トニーノ・グエッラ、ペトロス・マルカリス
撮影:アンドレアス・シナノス
音楽:エレニ・カラインドルー
キャスト:ウィレム・デフォー、ブルーノ・ガンツ、ミシェル・ピッコリ、イレーヌ・ジャコブ、クリスティアーネ・パウル

 

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コメント(1件)

  1. 【映評】エレニの帰郷 [監督:テオ・アンゲロプロス]

    98点(100点満点)

    なぜ私は映画を観るのかと言えば、こういう映画に出会いたいからなのだ。

    ネタバレ注意

    稀に奇蹟のように美しい映画に出会う。しかしもっと奇蹟なのは、そうした…




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