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ビフォアシリーズ最終章 『ビフォア・ミッドナイト』

Before_Midnight_00一作目の『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』は1995年。続編の『ビフォア・サンセット』はその9年後の’04年。そしてまた9年後に、とうとうこのシリーズの最終章がやって来た!この最新作がかかることは、去年の夏からチラシで見て知っていたの。つまり8ヶ月も前から。9年待たされたばかりか、さらに焦らされるのかと!

前作の『ビフォア・サンセット』は、その年のベスト上位に入れた大好きな作品。私は実のところ、アメリカの監督の中で一番好きなのが、リチャード・リンクレイターなのです!そして、その彼の一番の代表作であるのがこのシリーズ。という訳でえーっと、見る前からすでにこの作品が、どれだけスペシャル感満載なのか、分かっていただけましたー?(滂沱しながら)

私に言わせればこのシリーズは。“一言で言えば、究極の恋愛映画”。恋愛ってその本人にとって、どれぐらい自分がハマっているのか、その“ドープ度合い”に差があると思いません?自分からして見ればものすごくハマった恋愛でも、相手の異性にとっては違うこともある。でも、カップルが互いに「これこそ究極、人生最高の恋愛!」という恋愛があるとしましょう。このシリーズは、そうしたものについて描いた映画。

1作目の『ビフォア・サンライズ』(面倒臭いのでひとまず副題=当時の劇場タイトルは無視)。こちらのテーマは“一目惚れ”。二人の出会いを描いていて、出会った途端に恋に落ちることってあるだろうか、そんな二人の姿ってどんなものだろうか。そうしたものを描いていて。2作目の『ビフォア・サンセット』は、“運命の相手”。それまでの生涯の中で、これぞ最高の出会いだった、と思える経験をした二人が、自分の恋愛経験の中でも、最も惹かれる相手にもう一度出会う。あれが本物だったのか、それともよくある偽物だったのか。確かめたい思いでいっぱい。9年後に二人がどう変わったのか…。ここではタイムリミットがあるという設定なのがまた良いんですよね。自分の乗る飛行機の飛び立つまでの、ほんの85分。要は、映画のランニングタイムとそれほど変わらないという設定なのです。刻一刻と二人の別れが迫る、その短い間に交わされる濃厚な会話!おそらくこれを逃したら、もう次はない、一生に一度あるかないかの貴重な会話をしよう!っていう。…ね、面白くないハズがないでしょう?

で、今回もまた二人の9年後なのです。一つ前の『ビフォア・サンセット』から繋がっている冒頭なんですね。二人のストーリーがあれからどうなったのか、それがアバンタイトル、タイトルが出る前の約5,6分で分かる。二人はなんと、あの後一緒になっていたのか!っていう。ジェシー(イーサン・ホーク)がまず空港で息子を送り出すシーンがあり、そこから空港に置いてある車へと戻ってきたところへ、セリーヌ(ジュリー・デルピー)が登場。また偶然を装うのかな、と思ったところへ、二人が同じ車で帰る。しかも双子の娘が!思わず「キャー!」と声を上げそうになった。あ、前作の感動のエンディング、あの後二人は別れずに「その後、激しくセックスをした」てヤツだったか…。あ、この話って、チラシの裏とか作品HPを読んでれば知っていた話?…た、確かに。

ま、そんな訳で、一期一会のあのスペシャル感が無いのは確か。今回のキーは“ソウルメイト”。“運命の二人”が一緒になり、「そして日常は続く…」。“真実の恋”やら“永遠の愛”なんていうものが、「日常」という薄いスープの中でどうなっていくのか…。

大恋愛の末ようやく一緒になった二人だけれど、やはり歳相応の悩みがある。相手への不満があり、老いへの不安があり、現在の自分に対する自己卑下の感情がある…。別の国に住む息子の存在をきっかけに、もしかしたら別居になるかもしれない不安は、セリーヌにとっては“終わりの始まり”が訪れたような気がする。ギリシャで仲間達と過ごす濃密な時間、この会話は面白かったな。若い夫婦も居れば、少し年上の夫婦、それぞれの夫婦生活について語り合う。この時間が終わり、二人きりのモーテルに場所を移すと、そこからの二人は喧嘩ばかり。外見上はおしどり夫婦であっても、実際に二人きりになってみれば、こんなにも喧嘩が多いのかという、実態を見せられた感じ。廃墟を歩き続ける二人を映すカメラは、ヘミングウェイの『何かの終わり』を思い出させる。本当は二人の仲が壊れかかっていることを、廃墟によって表現しているのは確か。そこから長い道を通ってどこへつながっていくのか。あのモーテルの部屋に移っていくのだけれど、ここからが“日が落ちた後”アフター・サンセットなのだ。このモーテルの部屋の閉塞感がまた、二人の鬱屈した感情を表現するかのよう。この中で喧嘩をするのだから、見ているこちらまで息苦しさを感じてしまう。

それでも最後にギリシャの海の見える、オープンバーへと場所を移すとようやく開放感が訪れた。浮気を認めてしまうという、決定的な喧嘩の後で、ためらいもなく甘い言葉を投げかけ、「タイムカプセルに乗った未来の自分から預かった手紙」という設定で話を進めるジェシー。いいなあ…。それでも人生は続いていくけれど、愛だけは手放さずに信じていたい。“チャーミーグリーン”の老夫婦になりたいじゃない。どうせなら。えっ『愛、アムール』!?ぎゃー。

’13年、アメリカ
監督:Before Midnight
監督:リチャード・リンクレイター
製作:リチャード・リンクレイター、クリストス・V・コンスタンタコプーロス他
製作総指揮:ジェイコブ・ペチェニック
脚本:リチャード・リンクレイター、イーサン・ホーク、ジュリー・デルピー
撮影:クリストス・ブードリス
音楽:グレアム・レイノルズ
キャスト:イーサン・ホーク(ジェシー)、ジュリー・デルピー(セリーヌ)、シーマス・デイビー=フィッツパトリック(ハンク)、ジェニファー・プライアー(エラ)、シャーロット・プライアー(ニナ)、ゼニア・カロゲロプーロ(ナタリア)他

 

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コメント(4件)

  1. お久し振りです~
    私、この2人の大ファンなのですごく楽しみにしていました。2人が結婚(?)という形をとっていたのは意外でしたが、アラフォーの2人の少々くたびれ感のあるところが良かったです。

    今作は、若くて目下恋愛中の人にはお勧めできない映画かもしれないけど、完全には分かり合えない男と女が恋をして、その恋を継続していくには?という時のバイブルかも?
    2人に「愛 アムール」までは演じてほしくない~

  2. cinema_61さんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    本当、この作品は楽しみで楽しみで…首をなが〜くして待ってしまいました。いや、まさか続編があるとは思わなかったんですよ。
    アラフォー二人のくたびれ感、ちょうど良い感じでしたよね。正直、ジュリー・デルピーの劣化が劣化が、と言われると悲しくなってしまうのですけどね。だって、他の作品見てるから分かっているよって…。きっと見てない人が言うのでしょうね。

    どんなに愛し合った二人だって、何かの拍子に少しづつ距離を感じてしまったり、次第にレールがズレていってしまったり、するものですよね。
    それでも、何とかして継ぎ目を繋いでいく…すごく難しいけれど、こうやって二人で山も谷も経験しながら、それでもずっと一緒にいれたら最高に素敵。
    人生って長く続いていくものだから…これがもう答えかな。そんな風に思いましたよ。

  3. とらねこさん、こんにちは!
    うわー、アメリカで一番好きな監督さんなのね。
    そして、やっぱり、とらねこさんも、このシリーズ映画が大好きだったかー(´ー`*)

    私は予備知識をなるべく入れないようにして、本作を見たから、冒頭シーンで、車で待ってたセリーヌと双子の女の子がいるのを見て、とらねこさんと同じ反応をしちゃいました^^

    でもなー、面白かったんだけど、なんだか、ちょっと悲しい様な、ほんとに複雑な心境なんだ・・。

    恋愛って、ハッピーエンドのその後が、長いというかね、そこからが始まりともいえるわけで・・・。
    永遠に仲良しとか、難しいよなあー。
    その時その時で状態やら波がありつつ、関係が変化しつつも、長い事結婚生活を送れたらいいなーと思うけれども・・・。

    それと、6才の方も感想拝見しました^^
    私も、12才くらいの、リバーフェニックス的少年は永遠なれ!って思っています。

    それにしても、この監督さん、6才と本作シリーズと、同時進行で撮り続けていたなんて、ほんっとに凄い人ですよね。尊敬してしまいます。
    いまだかつて、こんな事なしえた監督さんって、いたかな??

  4. latifaさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。

    おお、こちらと6歳〜と、どちらの感想も読んでいただいたんですね。
    そうなんです、私この監督を、もうずっと前からずーっと好きで。
    監督名だけで見るものですから、この映画の冒頭のような反応をしてしまいましたし、『6歳のボク〜』の方は、まさか主役が成長するとも全く知らずに見てしまう有様でした。
    だから、この驚きがすごくて…(笑

    >いまだかつて、こんな事なしえた監督さんって、いたかな??
    いや、本当に類を見ないことですよね。
    フランソワ・トリュフォーは、自分の半生について描いたアントワーヌ・ドワネルのシリーズを、『大人は判ってくれない』からジャン=ピエール・レオーで描きましたけど、
    こちらでは“経過する時間”の9年間を、物語間の条件として描きました。
    私の信頼するとある人は、「絵画と映画の違いは、時間を映画が描けることだ」と言ったのですが、
    映画内で時間の経過を描くことは、実は“映画がなかなか出来なかった挑戦”なのではないでしょうか。




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