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田舎の等身大の風景 『5月の雲』

133070362863413232205_c5t01’08年のTIFFで『スリー・モンキーズ』を鑑賞して以来のヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督。鋭利な刃物でまといつく空気の重さを切り裂くような、一風変わった独特な個性を感じる作品だった。もう一度あの監督の作品が見たいなあ…と思っていたところ、監督の初期作品である本作が、「地中海映画祭」にてラインナップに上っていることに気づき、駆けつけた。

私がこの監督の出世作『スリーモンキーズ』で感じたような個性とは本作は違っていた。あの作品は都会の人間の倦怠を表現していたけれど。

本作は、牧歌的な田舎の風景、都会から大分離れ見捨てられた、手つかずの自然を描いている。のどかでどこか忘れられたような風景。ふんわりとした映像を楽しむタイプの作品でありながら、いつしか少しづつ形になっていく人々の姿、自然の姿に好印象を与える。

都会に憧れ田舎を捨ててイスタンブールで職につきたいと願う若者。国の管理する地区にある木々が、いつか切り倒されてしまうことを恐れ、それを何としても守ろうとしている父親。息子は映画製作の仕事をしているが、お金になるタイプの映画を作っているのではない。撮影は俳優を使わず素人の役者を使うため、なかなか上手くいかず、自分の父親と母親を出演させる。いかにもこの監督の本心を代弁したような、等身大の作品だ。誰もが都会に憧れるけれど、そこで失ってしまうものがある。まだ手つかずの自然がそこにあり、人々ののどかな牧歌的な暮らしが息づいていた。

 

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