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ストラスバーグ的メソッド演奏法が面白い 『25年目の弦楽四重奏』

maintop_bgいやー、本当に多いですねえ、老齢者音楽物。こう続くと興収的に響くんじゃなかろうか?などと余計な心配をしてみたりする。

とは言え、こちらの場合はプロのカルテット演奏者。フィリップ・シーモア・ホフマンが出てくるなら、ということで見ることに。あまり期待していなかったけれど、意外にも物語がしっかりしていて、なかなかの良作だったのでした。

物語は、結成後4半生紀/25年を迎えた彼ら、崩壊の危機が訪れた場面から始まる。最年長のピーター(クリストファー・ウォーケン)にパーキンソン病の症状が現れ、引退を決意するところで、幕開けとなる。幸せで平和な四半世紀を過ごした彼らに、驚くほど明確なヒビ割れが入ってしまう。本来隠れていた彼らの密な人間関係の内側。長年第二演奏者で我慢してきたロバート(フィリップ・シーモア・ホフマン)の鬱積。それを機に亀裂が入ってしまう、ロバートと妻エリザベス(キャスリーン・キーナー)との夫婦関係。また、彼らの娘レイチェル(イモージェン・プーツ)と第一演奏者ダニエル(マーク・イバニール)との関係も複雑になってくる。…

見どころはというと、何より四重奏、カルテットの面白さについてとても良く理解が出来るようになっているところ。普段音楽家としてプロとして活動する場合はソロであり、毎回一人違う街で、違うメンバーとのオーケストラ演奏となる。一方、カルテットとしてがっちりとタッグを組んだことで、密な人間関係を育むことの面白さ。それから、それぞれ演奏者の違い。真っ直ぐ道を引くかのように、正確に厳しく規律を与える第一演奏者に、時に遊び心に溢れ、聴く者に楽しさを与える第二演奏者。彼らのカラーの違い。また、誰とも違う叙情性を与え深い感動を付け加える第四演奏者、などなど。

また、音楽家についての知識を深くすることで、さらに音楽に対する理解も深めていく手法など。まるで音楽のメソッド演技法だ。音楽の底にある深い魂の響きを表現するために。「シューマンは病に倒れた時、ベートーベンの弦楽四重奏しか聞きたくないと言った。だから、この曲を弾く時にはいつも、死の床についたシューマンを思い描いて演奏するんだ」。こんな台詞には思わずゾクゾクしてしまうのは、私がガラスの仮面好きだからか…。

ラスト、決して解けないだろうと思えるぐらいに彼らの感情がこじれてしまった後、一体どのように解決するか。やはり音楽は人生に彩どりを与えるもの!そんな素晴らしさに満ちていて、どこかズッシリした感傷を味わわせてもらえたのでした。

P.S.イモージェン・プーツは本当に綺麗!第二のスカヨハ?ちょっと似てるよね。

’12年、アメリカ
原題:A Late Quartet
監督・脚本:ヤーロン・ジルバーマン
撮影:フレデリック・エルムズ
音楽:アンジェロ・バダラメンティ
キャスト:フィリップ・シーモア・ホフマン(ロバート・ゲルバート)、クリストファー・ウォーケン(ピーター・ミッチェル)、キャサリン・キーナー(ジュリエット・ゲルバート)、マーク・イバニール(ダニエル・ラーナー)、イモージェン・プーツ

 

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コメント(3件)

  1. 「老齢者音楽物」、最近やたら増えてきましたけど、私これは『アンコール!』よりも実は好きです。こっちのほうが対象年齢が若いって言うのもありますけどね。

    これは都内じゃ単館公開なのもあって、鑑賞している人をほとんど見かけないんですが、非常にもったいないと思います。
    カルテットの絶妙なバランスというのは、些細なことから崩れ落ちて行くという危うさの上に成り立っていることがよくわかる。ちょっとした不信感でももうだめですからね。

  2. rose_chocolatさんへ

    こちらにもありがとうございます♪
    今年は本当に音楽物が多いですね。この作品は、角川シネマ有楽町でしかやってない分、見てる人が少ないのかも…なんて思います。
    『シュガーマン』もここでやってましたけど、あっちの方は割と絶賛の口コミが各方面から聞こえて来たんですけどね。
    実は、私はシュガーマンの方が好きだったりして。

    カルテットの絶妙なバランス、本当に一つでも崩れると途端に土台から崩れてしまう…、そんな難しいバランスや人間関係を、上手く表せていた良作でしたね。




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