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木下惠介監督の生涯の一場面 『はじまりのみち』

dcd7a87ef8322cbe81eac127023dd6c9木下惠介監督の生誕100周年を記念して作られた作品とのこと。

“小さな良作”を目指したのかな。人の一生を描こうという時に、大河ドラマとして描かずに、その人のここぞという一場面のみを描こうという、まるで絵画のような手法。小さくまとめようとして、本来目指したよりずっと小さくなってしまったのかも。木下惠介作品は、残念ながらまだ見たことない勉強不足の私ではあるけれども、プロデューサーの方がtwitterで「人が入っていない」とこぼしていて、早めに見ておかなきゃと焦ったのもある。

全体の1/3ぐらいが、木下惠介監督の本当の作品が使われているんですよね。大事なシーンにそのままそっくり流れていたり、ラストは監督の作品がごっそり使われている。

物語は、青年時代の木下惠介のほんの一時期、母親をリヤカーで引いた話だけがピックアップされている。戦時中のため思ったような映画が撮れず、監督を辞める宣言をして一時疎開、再び映画に戻っていく。常人には考えられないような山道の長い距離を、意志の強さだけでリヤカーで病床の母を運び、山を越えていく。本当にこれだけの話ではあるんです。

この先、ネタバレで語ります***************

ロードムービー的であることを期待してしまったせいか、もっと旅の過酷さが描かれているのと想像してしまった。せめて、山越えの苦しさが伝わってくればもう少し良かったのに、と思ったりも。口数少ない木下惠介青年は、黙々と静寂の中に生きているためもあって、話す言葉はほんの僅か。山道を登る大変さもとてもアッサリしたもの。むしろ、この作品で一番輝いているのは濱田岳演じる便利屋の青年で、彼ののほほんとしたキャラクターを中心に描かれている。この便利屋の彼が言った一言が木下青年の心に響くのだけれど、その翌日、宿屋のシーンの次にはもうあっという間に到着してしまうので拍子抜け。

この作品の目指したところは、「木下惠介監督の生涯の一場面」だったのかも。そこに注釈をほんの少し加えて、それから彼の監督作品をコラージュ的に編集してみる。大きな感動は無い代わりに、1つの写真がポートレイトで浮かび上がってくる。「この監督の人となりや作品を知る」キッカケになるための、一つの小さな写真みたいな作品。

13年、日本
監督・脚本:原恵一
撮影:池内義浩
音楽:富貴晴美
ナレーション:宮崎あおい
キャスト:加瀬亮(木下惠介・正吉)、田中裕子(たま)、濱田岳(便利屋)、ユースケ・サンタマリア(木下敏三)、宮崎あおい

 

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