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タルコフスキーと地続きの世界の果て感 『日陽は静かに発酵し・・・』

処女作『孤独な声』では、反体制作家のプラトーノフを原作にしたとして、10年間の上映禁止の検閲を受けていたソクーロフの、解禁以来初めて撮った劇映画。これまた何とも不思議な映画で、見終わった後も謎がたくさん残ったまま。

ただ印象的なのは、黄色っぽくザラザラした映像処理のおかげで、うだるように暑いロシアのトルクメニスタンが、異常に乾燥しきったSFのような印象を受けること。これは、SF作家ストルガツキー兄弟の『世界消滅十億年前』という小説を原作にしているそうなので、そうしたこととも世界観がピッタリ合っていそうだ。原作は未読なのだけれど。ストルガツキー兄弟はタルコフスキーの『ストーカー』の原作も書いてる。

主人公は医師としてこの地へ来て、ここで論文を書きながら生活を送っている。が、何かと「本を書くな」「物を書くな」と、地元に住むいろいろな人から邪魔が入る。中には銃で脅かす人も居たり、その数日後に亡くなる人も居たりと、静かな生活の中にも目に見えない異常さがそこここに感じられる。頼んでも居ない海老が届けられたり、突然姉がやって来たり、謎は謎を重ねる。最後に少年がやって来て一緒に暮らし始めるが、彼が連れ去られて、物語は幕を閉じる。

主人公は使命感を感じたり義侠に駆られ、誰も来ない忘れられた地へとやって来たのかもしれない。彼自身はとても静かだけれど。ロシアの果ての、耐え切れない暑さと乾燥する地で、パンツ一丁で仕事をしていたりする。この医師の体がやたらと綺麗で、筋肉も程よく付いていて無駄な贅肉が無い。静かで台詞が少なく、屋内での撮影がほとんどである中、この人の上半身裸などボンヤリと眺めていた。『ニーチェの馬』と似たような世界の果て感がある。

久しぶりのソクーロフ堪能。やっぱいいなあソクーロフは。今後も追いかけよう。ドキュメンタリー以外のソクーロフはいい。

’88年、ロシア
原題:ДHИ ЗATMEHИЯ The Days of Eclipse
監督:アレクサンドル・ソクーロフ
脚本:ユーリー・アラボフ 、 ストルガツキー兄弟他
原作:アルカージー・ストルガツキー 、 ボリス・ストルガツキー
製作:タチアナ・ノーモヴァ
撮影:セルゲイ・ユリズジツキー 他
音楽:ロベルト・シューマン 、 アルフレード・シニートケ他
キャスト:アレクセイ・アナニシノフ(Dmitri Malyanov)、エスカンデル・ウマーロフ(Aleskandr Vecherovsky)、Inna Sokolova(Malyanovの姉)他

 

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