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変化を恐れず、でも本質を変えずに生きていく 『舟を編む』

img_1016502_31718557_0好きでした。特に変わったことをやっているわけでは一切無いのに、真っ直ぐに心を打った。心地の良い、ゆっくりしたテンポの物語。

月日と共に移り変わっていく人々・物事と、どれだけ時が経っても本質が決して変わらないタイプの人々・物事。“辞書”という、ある種恒久不変に思える物を扱っているせいもあってか、こうしたことがすんなりとテーマに真ん中に据えられていた。そしてこの感覚が、とっても心地よくて、真っ直ぐ心に響いてくる。

学生時代の自分には、その時持っていた友人や親、先生たち…。ある種時が止まったかのように、ずっと変わらないもののように思っていた。時間が来ると本当は違うんだ、って事が分かるのだけれど、でも退屈極まりない長くて眠い午後には、ぼんやりと一生変わらない物のように思えていた。自分が子供だったせいもあるのかもしれない。それとも、私がノンビリしていただけなのかな。

親の無理解は話をしても一生変わらないと思ったし、友人も同じようにただ時を無為に過ごしているように思えた。自分も友人も、成長するいつかその日が来るまで。もちろん、少しづつは変わっていくのだけれど、一瞬一瞬を見るなら、物事は微動だにしないように思えた。

中学の時、初恋の人と好きな歌が一緒だった。「ずっと変わらないままでいるねと、ずっと言われ続けてる生き方」という歌詞の曲。中学を卒業する前に彼と話をしていて、私は「◯◯君は、ずっと変わらないで居てね。」と言ったことがある。すると、「俺は変わらないよ。おめーも変わんなよ」と言ってくれた。何気ない一言だったけれど、何故か今でも忘れられない。あれから月日が流れて、つい半年ほど前のこと、Facebookで彼の名前を見つけた。彼の好きなミュージシャンに先ほどの歌詞を書いた「渡辺美里」の名前があった。私は急に懐かしくなって、友だち申請をした。彼の日記を読むと、子供も生まれて、出世もして(自分の友人の中では一番稼いでいた)、だけどあの頃と全く変わらないように思えた。まっすぐな瞳はそのままだった。とても嬉しかった。人の良さそうな日記も、肩に力の入っていない自然体の文も、私が好きだった15の頃の◯◯くんのまんまだった。

話は変わるけれど、この作品に出てくる馬締くんの良さも、「彼がずっと変わらないままで居れる人だから」だと思う。時間が経ってクルクル周りの物事に影響される人よりも、…自分はその点自信が無いのだけれど、ずっと変わらないで居れる人は本当の意味で芯が強いのだろうな。

辞書編簿するのに大事なのは、一つのものを黙々と作業が出来る人、コツコツと努力を積み重ねることの出来る人なんだろうね。きっと荒木さん(小林薫)も、松本さん(加藤剛←この人の大岡越前がずっと好きだった)も同じそうしたタイプで。

オダギリジョーの役どころも、チャラチャラした性格の営業に向いた人であったけれど、彼すらいつの間にか「馬締に辞書を作らせてあげたい」、時を経ても一緒になって取り組んでいて。じわっと感動してしまった。

結婚後、大家さんが死んでしまった後も変わらず、同じ早雲荘に住んでいるのはビックリしてしまったけれど(笑)

13年、日本
監督:石井裕也
プロデューサー:土井智生、五箇公貴他
原作:三浦しをん
脚本:渡辺謙作
撮影:藤澤順一
音楽:渡邊崇
キャスト:松田龍平(馬締光也)、宮崎あおい(林香具矢)、オダギリジョー(西岡正志)、黒木華(岸辺みどり)、渡辺美佐子(タケ)、池脇千鶴(三好麗美)、鶴見辰吾(村越局長)、小林薫(荒木公平)、加藤剛(松本朋佑)、森岡龍他

 

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コメント(9件)

  1. とらねこさん、香川と大阪って、美味しいもの一杯食べられた旅行だったのではないでしょうか^-^
    お疲れ様です!

    中学の時の好きな男の子のお話、とても素敵ですね。微笑ましく読ませて頂きました♪
    いつまでも変わらない・・って、私世代だと、ユーミンの卒業写真って歌とかを思い出します。

  2. latifaさんへ

    おはようございます〜♪コメントありがとうございました。
    はい!食い倒れツアーでしたよー。 粉物ばっかりでしたが^^; 

    初恋の人の話、読んでくださってありがとうございます^^; ちと照れくさいですがっ。
    卒業式の日に、「ジャージ下さい」なんて私が言ってしまって、10年以上経っても「私にジャージ、本当はあげたんだろ?」なんて飲み会の場で毎回彼、からかわれてしまっています。
    なんか未だに言われてそうwww

  3. うん、好きな映画。
    迸る何かがあるわけじゃないけど、映画自体がまるで辞書の様な誠実さを持っていました。
    トラ猫ちゃんも可愛かった。
    宮崎あおいより萌えたw

  4. ノラネコさんへ

    こちらにもありがとうございます〜♪
    ああ、本当。“誠実な映画”でした!

    そうそう、トラさん可愛かった!ちょっと顔が大きくて不細工めで、毛並みが美しいんですよね〜♪
    特に龍平くんに抱かれた姿があまりにも可愛くて。
    大して出演シーンは多くないんですが、私もトラさんにメロメロになりました♪

    ノラネコさんは映画を評価する上で「スケール感の大きさ」を気にされますねえ。
    私は正直、こうした事はあまり気にしないのです。そこが時々、ノラネコさんとの評価の違いを感じたりもします。

  5. とらねこさん、こんばんは!
    レビュー拝見して、
    >どれだけ時が経っても本質が決して変わらないタイプの人々・物事
    というくだりに、そうそう、そうなんだわ!と激しく共感覚えてます。
    一心に見据えているものがあり、それに向かって静かにでも揺るがぬ情熱を持って淡々と歩んでいく姿が素敵でした。しかも、それぞれの登場人物がそれぞれの情熱を持ち続けていましたもん。
    一冊の辞書の向こうにこれだけの時間と労力が注がれているんですね~!

    とらねこさんの初恋のお話も、その後日譚も素敵!!

  6. rubiconeさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
    揺るがぬ情熱、見た目にはあまり分からなくても心の中はアツくて、ジワーっと感動しましたよね。

    時間が経っても変わっていかない人っていいですね。
    私は、常に変化のあり続ける人生で、友人関係も新しい友人が出来たり、その時々で追いかけてる趣味が違ったり、仕事も変わったり…
    全くここに出てくる馬締くんのような人ではないなあと反省してしまいます。
    昔からの親友は大事にしているつもりではあるんですけどね。

    初恋の人は、ハゲ始めていました。しかも若干小太りになって来たような。顔は童顔なのに…
    なんて、自分のことは棚に上げまくっていますが^^;;;




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