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凡人の人生と悪夢の結晶 『ホーリー・モーターズ』

e0141635_9383768どういう話だか、誰かから説明なんて受けたくもないし、誰かと語りたいわけでもない。ただ「私は気に入った」というそれだけでいい。レオス・カラックス作品を一言で言えば、そんな作品だと思っていたりします。『ポンヌフの恋人』に『ポーラX』、『TOKYO!』ぐらいしか見ていない私だけれど、twitterのTLではすんごいカラックスにアツい人が大勢居て、圧倒される…。うーん、さすがだなあ。早いとこ、他の作品2つも手に入れなきゃ。

『TOKYO!』では私は、カラックスのが一番のお気に入りだった。『ホーリー・モーターズ』は、この『メルド!』のドニ・ラヴァンがそのまま抜け出たかのような、後から肉付けを加えていったかのような役どころ。面白いの何の。一から百までドニ・ラヴァンショー!

モノクロの劇場で始まるんですよね。夜明けから深夜までの一日の物語でありながら、何とも濃厚なあり得ない人生。思わず「人生は劇場、俳優は一時そこで演じる、ただの影…」というシェイクスピアの台詞を思い出した冒頭。

ドニ・ラヴァンが誰かの人生を取っ替え引っ替え、完璧に役作りと自前のメイクアップを施し、何役も何役も演じるのでした。スパイク・ジョーンズのあの傑作『マルコヴィッチの穴』を思わず思い出したり。時が来るとその内の誰かを殺す、という繰り返し人生の中で、何人もの人生を私たちの目の前で再現して見せる。秘書すら成り代わり、その首を取り替えてしまうエンドレス。私達凡人は、自分の人生ですら精一杯なのに、こうした死闘を演じるドニ・ラヴァンこそ俺らであり、彼らの役割の一つが俺らでもあるのだ!一時でも誰かの気持ちに成り代わった人生を生きられる「劇場」、「映画」こそが私達の人生と同意義なのだもの…。

不条理な物語ほど夢中になった、大学の頃を思い出した。当時私は、一番好きな映画は?と訊かれたら、「『裸のランチ』と『ジェイコブズ・ラダー』」と答えていた。理論的に正しい作品や、理性でのみ語られる物語は本当に退屈だ!そんなかつての自分が戻ってきた。今って結構退屈な映画を見ているなあ、とか。映画は自由で、想像力の世界を自由に飛び回る、楽しめる代物でいいんだ。この作品は怖い。想像の自由を堂々と地でいくから、だから怖い。「正しい映画」は馬鹿馬鹿しい。

ちなみに、私が良く飲みに行くバーに、カラックスが飲みに来たらしい。「もう、信じられない。どうして私を呼んでくれないの!?」と半分本気で怒ってしまいました。だってねー、何のために常連なの?でもバーテンさんはカラックスの名前も知らなかったらしいし、シェフも顔を知らなかったらしい(名前は知ってはいても)、まあしょうがない。

’12年、フランス、ドイツ
原題:Holy Motors
監督・脚本:レオス・カラックス
撮影:カロリーヌ・シャンプティエ
キャスト:ドニ・ラヴァン(オスカー)、エディット・スコブ(セリーヌ)、カイリー・ミノーグ(エヴァ/ジーン)、エヴァ・メンデス(ケイ・M)、ミシェル・ピッコリ(あざのある男)、エリーズ・ロモー(レア/エリーズ)、レオス・カラックス

 

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コメント(6件)

  1. 朗報がありますよ。カラックス『ポーラX』以外、レンタルDVDが出てたよ、つい最近。ぽすれんなら100円で見れますよ。まあでも寡作すぎる。。。

    かつてのアンファンテリブルが、大人にならずにそのまま年取っちゃったような無邪気なラストが『カーズ』だったという(『カーズ』みたことないけど)、あんでいいんだ。。。

  2. ウラヤマさんへ

    おはようございます〜♪コメントありがとうございました。
    あ!カラックス、レンタル最近出たのね〜!わーい、DVDレンタル情報いつも早いウラヤマさん!早速探してみる〜。

    アンファンテリブル…ウラヤマさんたらいいこと言う〜コクトーだ!
    マックス・モン・アムールも見ないと…。

  3. カラックスは13年たってもカラックスだったよねえ。
    しかし、ブログでもツイッターでも呟いてる人の少ないこと。
    やっぱり歳月が経つと映画ファンも忘れちゃうのかな。
    メルドと再開できたり、かなり面白かったんだけど。

  4. ノラネコさんへ

    こちらにもありがとうございます〜♪
    え!?呟いている人、少ないですか?私のTLではたくさん居ます。
    1月に先行上映があった時に待ちきれずにすでに見ている人もいっぱい居ましたしね。
    メルドは面白かったですよね、あれで私銀座のイメージが変わっちゃいましたから。

  5. 月日のたつの早いっ
    顔の怪我の方はすっかり治りましたでしょうか?
    写真目撃できなかったー。

    『汚れた血』もすんごいステキなのでぜひ観てねー。
    この疾走するドニ・ラヴァンがサイコーで。

    そうか、ノラネコさんのTLではカラックス人気ないんですねw
    私のTLはカラックスに熱狂しているし、映画好きの過半数が観ているしー。(私のTLでは異色のwすがやんですら、観るらしいし♪)
    ブロガーさんでは観ている人少ないのかしら??
    としても、ユーロスペースはかなり混み合っているようでよかった、よかったと思っていますー。
    (アンファンテリブルとデビュー当時言われていたのですよ、カラックスは。)

    苦悩がよく似合う。おやじになってもカッコいいー

  6. かえるさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    あ、傷は今度見せてあげますね〜♪会った人にあんまり指摘はされないのです。遠慮してるのか、それとも化粧で誤魔化せているのか不明で…。初対面の人に自分から言いたくないんで、訊きづらくて黙ってるのか、それとも本当に気づいてないかが分からないんですよー。

    『汚れた血』は早速次に見まーす。今日はプッシャー2を見終わったところでした。かえるさんはオーディトリウムで見たんですね。
    ホリモ、twitterでは熱狂してますよね〜。うちのTLでもそうですよ。ブロガーさんですと確かに書いてる人少ないですね。私が見た限り、長文記事を書いてるのはノラネコさんの他にはmanimaniさん、BCさんぐらいでした。SGAやんも見るのかぁ。
    ユーロスペースは結構入ってますよね。
    アンファンテリブルはそう言われてたんですね。私は映画評論の類いが一切頭に入ってなくて…。あんまり評論に興味無いんですよね。でもコクトーの『恐るべき子供たち』なら読みましたよ!
    カラックス、なかなかカッコイイオヤジですよね!憂いのヒゲオヤジ♪男ってずるいなあ〜。




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