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魂を表現する猫 『百万回生きたねこ』

200’12年、日本
監督:小谷忠典
プロデューサー:大澤一生、加瀬修一他
撮影:小谷忠典
音楽:コーネリアス
キャスト:佐野洋子、渡辺真起子、フォン・イェン

 

私のハンドルネームは、実はこの絵本から取っているんですよ。この作品が大好きだったので、自分のハンドルネームを「とらねこ」にしてしまいました。



「とらねこ」が何故ひらがなかと言いますと、「立派なとらねこだったので、立派なのらねこになりました。」という一文があるんですよね。通称は「ねこ」なんですけど、元々は「とらねこ」。「のらねこ」は居そうだから、「とらねこ」にしとくか、ってことで。そしたらやっぱ居たね!ノラネコさんw。あぶねーあぶねー。

大ヒットの絵本『百万回生きたねこ』にまつわるドキュメンタリー。絵本作家、佐野洋子さんの晩年、癌もかなり進行していた末期。「顔を映さない」ことを条件に描かれた、風変わりなドキュメンタリーです。よくあるドキュメンタリーとまるで色合いやタッチが違っていましたね。まさに絵本「百万回生きたねこ」を再発見する旅。普通に考えれば、絵本作家である佐野さんを描いたドキュメンタリーかと思うけれども、この作品はそうではないんですね。あくまで「映画の手法で」作られている、ここが好き。

『百万回生きたねこ』この作品自体が、とても深いテーマを扱っているせいだろうか。この作品に影響を受けた女性たちは、語り始めると彼女たち自身の「生」の話になってくるんですね。深い魂の話になってくる。生きるということ、死ぬということ。「死ぬ」ということを含め「生きる」ということ…。もう、究極ですよね。生と死の物語。佐野さん自身、インタビューの中で、「皆が望んでいることって、こんなシンプルなことなのよね。シンプルだからこそ、響いたのかな」。子供の頃読んだ絵本を、大きくなって今度は自分の子供に読み聞かせる女性たち。彼女たちの心の奥に抱えている苦しみも、もがきも、心の深くに抱えた物語をカメラは余すところなく捉えようと、潜入していく。彼女たちの持っている深い闇に手を伸ばし、哀しみを素描し、傷を映そうとする。

出演者の中の一人が語っている人もいるように、私も子供の頃に読んだ時は、この物語、それほど好きではなかったんですよね。「猫は◯◯が嫌いでした」という文や、死の描写がすごく多いせいで、暗いイメージがしてた。大人になって後で読み返してみて初めて、良さが分かりました。この深さは子供には分からないだろうな、と思ったりもします。でも、猫が獰猛そうな表紙が、何となく好きで、子供心に惹かれた。絵のタッチがすごく力強いんですよね。猫がいろいろ冒険しているところも、楽しそう。

で、絵本自体は、こんな風に読み解いています。と言っても、心理学者の河合隼雄氏の受け売りみたいなものですけどね。『猫だましい』という著書の中で河合氏が言うには、この作品は仏教の思想からするととても分かりやすい魂の物語であると言います。自分自身として生きる生でないからこそ、何度生きてもまた生まれ変わるしかない。自分自身として力いっぱい生きて初めて、本当に生をまっとうすることができる。思い切り生きて、死んで、それでようやく完結することが出来る。うん、なるほどなって思いませんか。

猫は日本人にとっては、魚が好きなイメージですが、ところがイタリア人にとっての猫はパスタが好きなイメージ、インドではカレーが好き、アメリカ人にとってはピザが好きなイメージなんだそうです。つまり、自分の国の人達が好きなモノをどうやら投影している様子。猫はつまり、人間にとってどこか「魂」を表現する存在、というのは世界共通のものなのかもしれませんね。

この『百万回生きた猫』も、大人になって読むと大分イメージが違います。ねこが「俺は百万回も生きたんだぜ。」と自慢しようとするのをやめ、ふと「そばに居てもいいかい」と言うシーンに、グッと来てしまう。白猫の口数の少なさも、「イイ女だな」と思ってしまう。あんな白猫になりたいぜ。それから、ねこが大泣きするシーンは、思い出しただけで泣いてしまいそう。ああいう風に生きられたら最高に素敵。自分より愛するものが出来る人生は、きっと最高なんだな。

ところで、余談ですが。こちらを上映していた映画館で、何と出演者の一人の方に出会ってしまいました。私は思わず声を掛けました。初めて会ったのに、この作品を介して見ていたせいか、なんだかいろいろ話したくなり、2時間以上もお茶して一緒に映画まで見てしまいました。不思議ですよね。どちらかと言えば人見知りする私なのに、こんな行動を取るなんて。知的で映画好きの方で、とっても魅力的な素敵な人でした。小谷忠典監督とは懇意にされているようで、いろいろな話をしてくれました。まさに、この作品を介して知り合った縁。この作品だからこそ、いろいろな話も広がるし、魂の話がしたくなったのかもしれません。

 

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