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119★アルゴ

’12年、アメリカ
原題:Argo
監督:ベン・アフレック
脚本:クリス・テリオ
原作:アントニオ・J・メンデス、ジョシュア・ベアーマン
製作:グラント・ヘスロフ、ベン・アフレック、ジョージ・クルーニー
製作総指揮:デビッド・クローワンズ、ニーナ・ウォラルスキー他
撮影:ロドリゴ・プリエト
音楽:アレクサンドル・デプラ
キャスト:ベン・アフレック、アラン・アーキン、ブライアン・クランストン、ジョン・グッドマン、ケリー・ビシェ、カイル・チャンドラー、ロリー・コクレーン、クリストファー・デナム、
テイト・ドノバン、クレア・デュバル



『ゴーン・ベイビー・ゴーン』、『ザ・タウン』に続く、ベン・アフレック監督作。私にとってはすでに安心して見られる監督レベル。

でもこれが、なかなか感想を考える上で、難しい映画だった。この作品は、自らが扱っている問題に対する政治的見解を、全く感じさせないように作っているからだ。これを是とするか非とするかで、この作品に対する印象がガラっと変わってしまいそう。自分の政治的意見を反映させない映画が作りたいということであれば、それはそれでいいのだろうか。映画が政治の右より、もしくは左よりかという政治的意見によって判断すべきでない…と、いうのは『ハート・ロッカー』で町山氏がそう言っていたのだが。映画を批評するのはかなり窮屈なことだとしか言えない。でも、「娯楽に徹するべき」という考えは、その考えこそが逆に「映画的に右寄り」なんじゃない?映画に社会を反映させることが出来るのに、そこに自分の意見を盛り込むことが出来るのに、それはハリウッドだってずっとやって来たことなのに、「芸術作品を作りたい訳ではなく、単に娯楽作を作りたいから、政治的意見は無しにするべき」?。これでいいのかなあ?

ハート・ロッカー』の話に戻ると、町山に言わせれば、キャスリン・ビグローは本来はリベラルな考え方で、それを最後の曲、アル・ジュールゲンセンが作った音楽を使うということで表明した。だが歌詞が思い切り戦争に反対するものだったので、それと分からないよう歌詞を取り払ったのだと言う。保守派の感情を害さないために。だから、町山に言わせれば、キャスリン・ビグローの意見はその歌詞の無い曲に表れているのだとするんですね。私からしてみれば、リベラルもしくは保守派と、どちらの意見も逆なでしないように中庸を取るよう注意深く作った、こう言えると思う。この作品もまさにそうで、政治的意見を反映させず、単に娯楽にお気楽に見ることを、徹していた。私は、こうしたことを正直、どう考えるべきか、未だに分からない。面白い映画ならそれでいい、と単に阿呆になって楽しむのが娯楽映画なのか。それとも、作品のテーマを感じながら感情を揺さぶられながら、時に考えを改めさせられたり、今まで気づかなかったことに気付かされたり。優れた作品には、「カタルシス」を得ることが出来る。大きな素晴らしい作品では、それが映画を見る喜びにも繋がるぐらいの大事なポイントにも成り得る。映画作品において、自分のテーマや奇譚ない意見を述べずに、単に「娯楽なのだからこれでいいのだ」と高をくくるべきなのかなあ…。

答えが出ないので、この作品について。歴史上、事実の影に葬られていたCIAの作戦を描いたサスペンス。事実を元にしているお陰で、「え、映画作戦?そんな馬鹿馬鹿しい作戦が上手く行くの?」などと、本気で心配したりハラハラしながら見ることは出来ないのがネックではある。でも、この作戦を遂行するために1からクリエイトしていく、その過程を楽しむことは出来る。それに、「どこかで誰かしらドジを踏みそう」と、冷や汗をかくことの出来る瞬間もちゃんとある。ただ、時々あざとくて、「この辺りで上手くいかなくなって、この辺でクリアするだろう」というのが読めてしまったりもする。でも、「やりたいことが上手くいかずにハラハラさせるためのテクニック」、これだけで全編持たせた作品だ。だから、そこを評価するなら、ちゃんと出来の良い作品だと思う。

この映画の楽しい部分だけを挙げ連ねるなら、一番楽しかったのは、映画プロデューサーが瞬時に状況を判断して、キレの良い返しを見せる、その台詞の魅力。「さすが映画人ならではの切り返しの早さ!」ここがとても楽しい。私は主にアラン・アーキンとジョン・グッドマンの二人にハマり、彼らの出番がもっと欲しいぐらいだった。もう一度見るならここだけでもいいから見たいぐらい。『最後の猿の惑星』の特殊メイクのジョン・チェンバースが殊勲賞をもらったのも、嬉しい。

この作品の批判として、「事実を都合よく編集したCIAマンセー映画」と言われてしまうのも、ある種仕方がない、とも思える。実際に起こったサスペンス部分を面白く描くことには充分成功している一方で、それ以上でも以下でもないから。だから、「単に娯楽の軽い作品」としては、充分イケているけれど、単に上手いこと映像化しました、で終わってしまう。

 

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コメント(4件)

  1. 私はもうちょっと辛らつで、『アルゴ』は、技術的な拙さから、娯楽作としても大きく失敗してるのではという感想を持ちました。
    言われているような、政治的なスタンスや描写の浅はかさというのは、ベン・アフレックの浅さがそのまま出てしまっているという感じでしたね。
    私は作家中心主義的な考えなので、たとえエンタメでもくだらないコメディでも、作家の知性や深い洞察が必要だと考えます。
    作品を見る行為は、受け手と作り手との対話ですので、作り手の考えが浅く魅力がなければ、面白いことを言おうと、そのときちょっと愉快なだけで。対話そのものに興味がなくなってしまいます。
    『ハート・ロッカー』が「中庸を取るよう注意深く作った」というお話、すごく分かります。

    町山氏の指摘するテーマ自体も、やはりあくまでアメリカ国内における「中庸」がベースになってますよね。そのへんがビグローの限界だったのかなと感じました。

  2. k.onoderaさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました!

    onoderaさんは、娯楽としても失敗と思われましたかー。ほう。

    私は、登場人物の思惑が上手くいくのか、どうなのかを見せるという、サスペンスを見せる部分においては、なかなかに成功していたのではと思ったのですが、それもあまり評価出来ないと思われましたかー。ふむ。

    うーん、私はうっすらとではありますけれども、映画のテイストとして「サスペンス部分があまり好きでない」タイプの方が中には居るのかな、と思っています。そういう方がこの作品をあまり評価してないのではないか、と。

    >私は作家中心主義的な考えなので、たとえエンタメでもくだらないコメディでも、作家の知性や深い洞察が必要だと考えます。

    なるほど。ベン・アフレック監督の知性の欠如。私は、観客の顔色を見てのことで、臆病だからと思ったのですが、初めから表明しようという考えが無い方が的確かもしれません。
    おっしゃる通り、町山氏の意見も「アメリカを中心にした場合」という条件付けをしてのことですね。そこがビグローの限界、という言葉にハッとしました。




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