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97★天と地の間のどこか

’12年、トルコ
原題:Araf – Somewhere in Between
監督:イェシム・ウスタオール
撮影監督:ミヒャエル・ハモン
音楽:マルク・マルデル
キャスト:ネスリハン・アタギュル、バルシュ・ハジュハン、オズジャン・デニズ、ニハル・ヤルチュン、ウルガズ・コジャテュルク



私がこれまでのところ目にしたトルコ映画は、静謐でドッシリとした重厚なものが多い。ジリジリと人物の内面を炙り出すような濃密なカメラワークは、時に痛くて、苦しくなるほど美しくて、とにかく忘れられない経験になる。見る方も覚悟が必要だ。トルコ映画を見る時は、それなりの覚悟をしてから見ることにしているのだけれど、今回はTIFF疲れのため、もうちょっとでパスしてしまうところだった。でも今年のTIFF最後の夜だったので、この作品とじっくり向き合うことにした。結果、見て良かった。

タイトルのトルコ語「Araf」は翻訳してみると、「煉獄」という意味のようだ。邦題もとても良くて、「Somewhere in Between」のinをちゃんと訳している。トルコの片田舎の、人々に忘れられたような場所で遠くを思う、ヒロインの憂いを含んだ美しい目が、とても印象的。あの道路は、イスタンブールと首都アンカラを結ぶ主要道路とのことだった。これもまた別の「国道20号線」。そこへ行けば何もかもが変わると人々が信じている場所へと、繋がっている道路。トルコだけじゃない、きっと世界中何処にでも、国道20号線は存在している。

主人公はいつも雨粒の当たる窓の向こうを見つめていて、「窓」に映る何かを期待して待ち続けている。目の前にある現実には目を向けないけれど、「窓」の向こうからやってくる見知らぬ男を、まるで“未来”ー自分を変えてくれる存在と信じ受け入れてしまう。
決して希望の見えないラストではないところも良かった。少女時代との決別は、大人にならざるを得ない状況になって初めて、迎えるもの。これは女性として実感出来るものだった。田舎の少女は皆こうやって大人になるものなのかも。

 

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コメント(4件)

  1. トルコ映画、確かにそうですね。重たいものが多いです。
    それだけ複雑な社会情勢なんだと思います。


    これ、今年のTIFFのオーラスだったんですが、とにかく眠くて(眠くなってばかりですいませんw)。ところどころ記憶なしでしたが、どうにか把握はできました。
    いきなりあのクライマックスの絵はちょっと萎えてしまいました。作りものだってわかってはいるんだけど。
    で、最後がとってもあっさりと落ち付いてしまったのも何となく残念な雰囲気で。
    幸せなのはいいんだけどね。え、そこに行くの??じゃあ最初からいけばいいのにって。
    ただそこで遠回りしてしまうのが若さなんだとは思いました。

  2. rose_chocolatさんへ


    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    私もこの作品でTIFFが最後でした。これはなかなかの佳作でした!これは良かった。


    あっさり落ち着いたとは思えなかったですよ。彼女は子供を病院で突然出産しますが、死産して、あんなことになり・・。その時、心神喪失まで起こしてましたね。
    彼女が家で同居する年上の親戚の話が好対照を成していますね。ここがとても実は重要でした。親戚の女性も同じように昔、男関係で取り返しのつかない間違いを起こした。彼女は一生悔いることになります。
    主人公の女性は、職場で一緒だった男性と結局一緒になる決意をしますが、彼は彼女のことでやけになり犯罪を犯し、牢屋の中・・。

    女の人は、若い頃に犯した過ちで一生引きずっていかなければいけない罪を背負うこともありますよね。彼女もまたそう。
    こんな思いまでした彼女が、牢にいる彼とゴールインすることを決めたこと、この部分は映画の中で突然の出来事のように描かれていますが、彼女の気持ちはすべて映像で表現されていましたから、「簡単に決断を下した」と私には思えませんでしたよ。
    まさにAraf。人生はすなわち煉獄の中で、何とか生きていく道を模索した結果、彼女が選んだものだったと思えました。
    こんなに苦しいものなのだろうか、こんな思いをして生きていくところなのだ、と感慨深かったです。私には納得が行く重さのあるラストでした。




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