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26★へんげ&大拳銃

’11年、日本
監督・脚本:大畑創
撮影:四宮秀俊
音楽:長嶌寛幸
特技監督:田口清隆
キャスト:森田亜紀、相澤一成、信國輝彦

これで100万円に満たない予算で作った作品だなんて。日本も、自主映画で随分面白いものが出てくるもんだなーと。つまらない作品ばかり作っている、メジャーどころの映画監督たちが見たら、戦々恐々としてしまうんじゃないか。若くて、ちゃんと才能があれば、これだけクレバーに出来るんだなあと、感心してしまった本作だった。



同時上映の『大拳銃』は2008年の作品で、上映時間31分。『へんげ』の方は、54分。こんな上映スタイルがまた魅力的に思えた。次が一体どうなるのか、全く読めない前半が特に秀逸。物語の舵取りが、手探りで進むようなこの感覚が好き。

大畑創監督のインタビューを読んで、ああやっぱり、と納得してしまったのが、子供の頃に『ザ・フライ』の影響を受けたとのこと。その上、カフカの『変身』みたいに、なんでこうなったのか全く分からない不条理感もある。自分の体が知らない内に変化していく不気味さ。『鉄男』みたいなビジュアルアプローチで、怖さが視覚的に関連づけられてしまうのではなくて、さらに何か別の怖さが湧いてくる感じがしたのだけれど、あれは一体何だったんだろう。物語が舵取り不可能さを感じさせるような、もっともっと訳の分からない感。これが楽しかった。

自分の体が変身してしまう夫の恐怖というよりむしろ、妻の取る不可解な行動がまた、物語がどこに向かうのか分からないドライブ感を打ち出してくる。夫がそれまでの人生で抱えていた暗い悩みを感じつつ、この妻にもどうやら問題があったのか、何故妻も変化していくんだろうと、見ている我々はなんだか混乱してくる。この辺が特に好きだった。

ただ、以降ネタバレで話させてもらうと*************








個人的には、最後、大怪獣に変化してしまうところで、それはそれはガッカリしてしまった。また日本人の好きな、怪獣ネタかー!と。何故日本人は、ゴジラやらウルトラマンやら、ガンダムやら何から何まで、わけも分からずでっかく変身して ぐわーっとなって、それで喜んじゃうんだろう。自分には、凡人でつまらない自分がヒーローものに憧れるというその気持ちを、単なる「大きさ」という、極めて分かりやすいもので説明しただけの、すごく子供じみたアイディアの象徴化にしか思えないのだ。そういうものに憧れる気持ちを、子供の頃からただの一度も持ったことのない、女子だからかもしれん。

不条理な怖さという訳の分からない怖さを、説明を与えずどんどん進んでいく舵取り不可能なそれまでの不気味さ。これらも、ラストの安易な怪獣サイズ、これに何の説明も示唆も加えないことで、「もしかして、深い意味などまるでなく、ただの意味不明なジャンル遊びに過ぎなかったのか」と、意気消沈して萎みこんでしまう自分が居た。単にジャンル遊びであるなら、映画の娯楽的面白さを、ただ器用な人間が小手先で作れば出来てしまうんじゃないか。そういう危惧を感じるから余計、寂しい気持ちになってしまった。せめてもう少し、日本人的なそのビッグサイズになることの意味を、監督が自分なりに、何か面白い意味を与えることが出来ていたら、もっと面白くなったんじゃないかと思う。カメラワークなどがかなり気に入っただけに、そうしたことに知力を使わない辺りは少しガッカリしてしまった。

とは言え、映画美学校を卒業して、まだそれほど多くの時間が経っていないこの監督が、見せた手腕は相当素晴らしいものがあると思う。先日も、「恐怖バー」で、『先生を流産させる会』の内藤瑛亮さん、この作品の大畑創さん、それと『nico』という作品を撮った今泉力哉さん、プラス彼らの恩師の高橋洋(!映画美学校で講師をやっているとか。)に、『見えないほどの遠くの空を』の榎本監督も加え、自主映画について語るというUstreamを見た。『先生流産〜』、これまた大注目の作品じゃないか!こんな風にどんどん新しい自主映画が生まれ、メジャーストリームと別のところで勢いを感じさせる、恐ろしさ満載の作品たちがあること自体に、なんだかワクワクが止まらなくなってしまうのだった。

 

※ストーリー・・・
静かな住宅地に暮らす平凡な若い夫婦。彼らが抱える悩みは、夫を突発的に襲う奇妙な発作だった。その異様な病状に妻は、言い知れぬ恐怖と不安に苛まれていた。そして、妻の献身的な介護に関わらず、謎の奇病は悪化していく。遂には夫の体が変態し始め・・・

へんげ@ぴあ映画生活

 

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コメント(3件)

  1. 必ずしも、怪獣を想起はしませんでした。
    どちらかというと魔獣のイメージ。
    世界に害をなさんとする物が等身大だと大変そうで。等身大で世界とタメ張ろうとすると「AKIRA」みたいならやれるかもしれんけど、あれはあれで最終的には巨大化したしなあ。

  2. 『へんげ』をキネカ大森1で観て、これもギリ、ネタバレなしで行きますふじき★★★

    五つ星評価で【★★★大きい事はいい事だ】  
    って事で、ホラー秘宝企画で観た『へんげ』面白かったです。
    そう言えば公開館のキネカ大森さんで『スイートプールサイド』の上映 …

  3. ふじき78さんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    えーと、怪獣と魔獣の違いが、あまり良く分かっとらんです(笑)
    そうそう、『パシフィック・リム』では、怪獣とイェーガーの区別がつかなかったぐらいなので…。

    ひとまず、「大きいサイズなら何か強そう!」というものこそ、“大仏ありがたや”の精神だと思う訳ですわ(笑)。




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