11★ものすごくうるさくて、ありえないほど近い
- 2012年02月21日 18:50
- 映画:ヒューマンドラマ
- サンドラ・ブロック, スティーブン・ダルドリー, トム・ハンクス, トーマス・ホーン
’11年、アメリカ
原題:Extremely Loud and Incredibly Close
監督: スティーブン・ダルドリー
脚本: エリック・ロス
製作: スコット・ルーディン
製作総指揮: セリア・コスタス、マーク・ロイバル、ノーラ・スキナー
原作: ジョナサン・サフラン・フォア
撮影: クリス・メンゲス
音楽: アレクサンドル・デプラ
キャスト: トム・ハンクス、サンドラ・ブロック、トーマス・ホーン、マックス・フォン・シドー、ビオラ・デイビス、ジョン・グッドマン、ジェフリー・ライト、ジェームズ・ガンドルフィーニ、ゾーイ・コールドウェル
911についての物語はいくつも作られてきたけれど、この作品が自分にとってはベスト1になった。今後日本においても311の物語が語られ始めるだろう。でも震災について描かれるなら、この作品のように、繊細だが心に静かに感動を呼び起こす、それでいて決して忘れられなくなるような、佳作であるといいな。
トム・ハンクスにサンドラ・ブロックが出て来る作品と聞いたら、アメリカの良識層にとっては「この映画を見たい」と思わせる作品なのかもしれない。しかし実際は、彼らの映画ではなくて、堂々とした演技で魅了する主役の少年、オスカー役を演じたトーマス・ホーン君の映画になっていた。立派に。そこがまず素晴らしい。私も例に漏れず、彼に夢中になった。こういう目をした少年には、リバー・フェニックス以来必ずと言っていいほど心を奪われることになっている。私は。
付け足すなら、「スティーブン・ダルドリー監督作品」でなかったなら、食指を動かされなかったかもしれない。デビュー作の『リトル・ダンサー』以来、全ての作品がアカデミー賞ノミネートに登るという快挙を成し遂げているようで、この作品もとうとう感嘆すべき4度目のノミネートを果たしたそうだ。私にとっては『めぐりあう時間たち』が一番好きだけれど(そんな人は珍しいかもしれないけれど)、この作品も同じくらい気に入ってしまった。いやあ、ガッツリ心を掴まれました。私が審査員なら今年のオスカーは、この作品に票を入れたいな。
それにしてもこの作品は、全てが完璧、無駄が全く無いと言っていいような演出の素晴らしい作品だった。ただセンチメンタリズムに訴えかけるような甘さはないところもいい。自然と子供の気持になって、少年の寂しさにひどく共感してしまう。少年のパパは本当に素晴らしい人で、彼の喪失はとても埋められそうにない。だからこそ彼がそこから立ち直ることを本気で望んだ。
間借り人が出てくる辺りから、少年のリズムが少し変わっていく。心を閉ざしていた少年が、思わず心を開くシーンには心を動かされる。少年自身、自分の心の中の話は誰にもするつもりがなかったに違いない。普段からあんなに険しい顔をして。だからこそ、人に向かって話すことをやめた間借り人に、何故か共感してしまったのだろう。
パパがいつも少年に「ゲーム」と称して、NY中を探検させていたけれど、今度はそれを、少年は自ずから見つける。パパとの最後の数分間を埋めるため、始めたゲーム。鍵が何を見つけるのか、嫌でも気になって最後まで見入ってしまう。『サラの鍵』同様に、シリアスなヒューマンドラマの中に、少しだけミステリー的要素を上手に紡ぐところもいい。
この先ネタバレで語ります**************
鍵が何を示していたか?それが明らかになった内容も、私はとても好きだった。少年自身のパパが故意に仕掛けたものではなく、偶然から生じたミッシング・リンク。父親とのことで深く悩むのは、何も少年ばかりではなく、知らない誰かもまた父親が居て、また知らない葛藤を抱えている。少年によってもう少しで永遠の謎になってしまいそうだったことが明らかになる。
元々、オスカー少年のパパが、彼に何故冒険をさせたがったか、その理由を覚えている?「少年が、冒険のために知らない誰かとたくさん話すんだ。素晴らしいと思わないか?」アスペルガーのために、他人との交流を途切らせてしまいがちな少年を、パパが何とかしてコミュニケーションさせようと考えた、そのための冒険の旅だった。少年のパパは、少年が永久に心を閉ざしてしまいそうなその時に、本当に彼にとって一番大切なことを、冒険を通して教えたのだ。もちろん、それを自らに課した少年も、一緒に行ったママも、最高に素敵なのだけれど。
大事な宝物を、観客も発見するかのような、素晴らしい物語だった。
※ストーリー・・・
9.11アメリカ同時多発テロ発生。この事件で父を失った少年オスカーは、父の死を受け入れられずに日々を過ごしていた。そんなある日、父の部屋で鍵を見つける。オスカーは鍵に父とのつながりを見出し、父の遺した最後のメッセージを探しに街へ出かけることに・・・
・ものすごくうるさくて、ありえないほど近い@ぴあ映画生活