11★ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

’11年、アメリカ
原題:Extremely Loud and Incredibly Close
監督: スティーブン・ダルドリー
脚本: エリック・ロス
製作: スコット・ルーディン
製作総指揮: セリア・コスタス、マーク・ロイバル、ノーラ・スキナー
原作: ジョナサン・サフラン・フォア
撮影: クリス・メンゲス
音楽: アレクサンドル・デプラ
キャスト: トム・ハンクス、サンドラ・ブロック、トーマス・ホーン、マックス・フォン・シドー、ビオラ・デイビス、ジョン・グッドマン、ジェフリー・ライト、ジェームズ・ガンドルフィーニ、ゾーイ・コールドウェル



911についての物語はいくつも作られてきたけれど、この作品が自分にとってはベスト1になった。今後日本においても311の物語が語られ始めるだろう。でも震災について描かれるなら、この作品のように、繊細だが心に静かに感動を呼び起こす、それでいて決して忘れられなくなるような、佳作であるといいな。

トム・ハンクスにサンドラ・ブロックが出て来る作品と聞いたら、アメリカの良識層にとっては「この映画を見たい」と思わせる作品なのかもしれない。しかし実際は、彼らの映画ではなくて、堂々とした演技で魅了する主役の少年、オスカー役を演じたトーマス・ホーン君の映画になっていた。立派に。そこがまず素晴らしい。私も例に漏れず、彼に夢中になった。こういう目をした少年には、リバー・フェニックス以来必ずと言っていいほど心を奪われることになっている。私は。

付け足すなら、「スティーブン・ダルドリー監督作品」でなかったなら、食指を動かされなかったかもしれない。デビュー作の『リトル・ダンサー』以来、全ての作品がアカデミー賞ノミネートに登るという快挙を成し遂げているようで、この作品もとうとう感嘆すべき4度目のノミネートを果たしたそうだ。私にとっては『めぐりあう時間たち』が一番好きだけれど(そんな人は珍しいかもしれないけれど)、この作品も同じくらい気に入ってしまった。いやあ、ガッツリ心を掴まれました。私が審査員なら今年のオスカーは、この作品に票を入れたいな。

それにしてもこの作品は、全てが完璧、無駄が全く無いと言っていいような演出の素晴らしい作品だった。ただセンチメンタリズムに訴えかけるような甘さはないところもいい。自然と子供の気持になって、少年の寂しさにひどく共感してしまう。少年のパパは本当に素晴らしい人で、彼の喪失はとても埋められそうにない。だからこそ彼がそこから立ち直ることを本気で望んだ。

間借り人が出てくる辺りから、少年のリズムが少し変わっていく。心を閉ざしていた少年が、思わず心を開くシーンには心を動かされる。少年自身、自分の心の中の話は誰にもするつもりがなかったに違いない。普段からあんなに険しい顔をして。だからこそ、人に向かって話すことをやめた間借り人に、何故か共感してしまったのだろう。

パパがいつも少年に「ゲーム」と称して、NY中を探検させていたけれど、今度はそれを、少年は自ずから見つける。パパとの最後の数分間を埋めるため、始めたゲーム。鍵が何を見つけるのか、嫌でも気になって最後まで見入ってしまう。『サラの鍵』同様に、シリアスなヒューマンドラマの中に、少しだけミステリー的要素を上手に紡ぐところもいい。

この先ネタバレで語ります**************

 

鍵が何を示していたか?それが明らかになった内容も、私はとても好きだった。少年自身のパパが故意に仕掛けたものではなく、偶然から生じたミッシング・リンク。父親とのことで深く悩むのは、何も少年ばかりではなく、知らない誰かもまた父親が居て、また知らない葛藤を抱えている。少年によってもう少しで永遠の謎になってしまいそうだったことが明らかになる。

元々、オスカー少年のパパが、彼に何故冒険をさせたがったか、その理由を覚えている?「少年が、冒険のために知らない誰かとたくさん話すんだ。素晴らしいと思わないか?」アスペルガーのために、他人との交流を途切らせてしまいがちな少年を、パパが何とかしてコミュニケーションさせようと考えた、そのための冒険の旅だった。少年のパパは、少年が永久に心を閉ざしてしまいそうなその時に、本当に彼にとって一番大切なことを、冒険を通して教えたのだ。もちろん、それを自らに課した少年も、一緒に行ったママも、最高に素敵なのだけれど。

大事な宝物を、観客も発見するかのような、素晴らしい物語だった。

 

※ストーリー・・・
9.11アメリカ同時多発テロ発生。この事件で父を失った少年オスカーは、父の死を受け入れられずに日々を過ごしていた。そんなある日、父の部屋で鍵を見つける。オスカーは鍵に父とのつながりを見出し、父の遺した最後のメッセージを探しに街へ出かけることに・・・

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い@ぴあ映画生活

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  • http://lets-go-with-multicolor.blogspot.com/ amu

    とらねこさん、こんにちは。
    私もこの作品とても気に入りました。
    じんわりと静かででも確実に何か胸に訴えるものがありました。

    オスカーを演じたトーマスくん、本当に素晴らしかったですね。

    そしてオスカーがあんなにまっすぐに育ったのもお父さんの壮大さとお母さんの愛情があったからこそ、のびのびと育ったのかもしれませんね。

    偶然から生じたミッシング・リンク。まさにその通りでしたね。
    意図的ではなかったにしろ、結果お父さんの願いは叶ったことになる。
    久しぶりにやっぱり映画っていいなって思いました。

  • http://twitter.com/noraneko285 ノラネコの呑んで観るシネマ

    最後お母さんの告白で泣いてしまいましたよ。
    残された人々の痛くて、優しい物語でした。
    しかしこれ原作既読者にはかなり評判悪いんですよね。
    原作読んでるかどうかでここまで賛否が分かれる映画は久しぶりなんで、ちょっと読んでみたくなりました。

  • とらねこ@管理人

    amuさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました!
    これ、アメリカではどんな評判なのでしょうか?私は、とても良かったです。トーマス君も本当に素晴らしかったですよね。ああいう憂いの表情が似合う子ってたまらない。これぐらいの年の少年がもう好きで。。
     お父さんも本当に素晴らしかったけれど、お母さんもすごく温かくて良かったですよね。アスペルガーなのにこんなにのびのびと育ててもらえて、彼が羨ましくなるぐらい。
     お父さんの願いが叶ったことになる。本当にそうだと思います。少年が自らの力でブランコを翔べる日がいつか来る・・。あのさりげないラストがまた素晴らしかったですよね!

  • とらねこ@管理人

    ノラネコさんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    原作を読んだ人に評判が悪いんですか?私、それ知らなかったです。いやー、最近は本当に人の意見を読まなくなっちゃって。。いけないですね。私も原作を先に読んでしまったりすると、映画を時として楽しめなかったりしますが、映画自体が良くできていれば、それでいいだろう〜なんて思うんですけど。どうなんでしょう?スティーブン・ダルドリーの手腕はとても良かったと私は思いますが。。
     少なくても、『めぐりあう時間たち』に関して言えば、ヴァージニア・ウルフの著作を読んでいたからこそ、楽しめる作品になっていました♪

  • SGA屋伍一

    こんばんばん。スティーブン・ダルドリー監督作品は初鑑賞でした。フィルモグラフィーざっと見てみたけど、少年の目線で描かれたお話が得意分野なのかな
    「間借り人」が手伝ってくれることで、あるいは鍵の持ち主が見つかったところで少年のトラウマが解決されるのかと思ったらさにあらず。でもそんな風にすんなり思い通りにことがはこばないからこそ、ラストの感動が深いものになった気がするっす
    鍵穴を探すことでお父さんのメッセージを得ようとする・・・というとこは『ヒューゴ』も同じでちょっと驚いた。とらねこさんは『ヒューゴ』は観たかな?

  • とらねこ@管理人

    SGA屋伍一さんへ

    こんばんは〜♪コメントありがとうございました。
    少年の目線で描かれた物語が得意、という訳でもないんじゃないかな?それってリトル・ダンサーだけなんじゃないかと。割と丁寧に、物語構築に凝る才人、という感じでは。
    私も間借り人がすごく良かったな。鍵の持ち主のエピソードもすごく好きだった。あれがイマイチと言っている人も居たけど、私はあの話が好きなんだけどな。

    そうそう、ヒューゴは似てるよね。実はヒューゴは今日見たんだ。正直イマイチだったな。私のTLでは、公開後すごく評判が悪かったんだけど、それも納得という感じ!

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