3★ブリューゲルの動く絵
’11年、ポーランド、スウェーデン
原題:the Mill and the Cross
監督・脚本: レフ・マイェフスキ
撮影: レフ・マイェフスキ、アダム・シコラ
音楽: ヨゼフ・スカルツェク
キャスト: ルトガー・ハウアー、シャーロット・ランプリング、マイケル・ヨーク
これが今年一発目の映画だったけれど、残念ながら撃沈。
いや、やりたいことはすごい分かるんですよね。最新のCG技術、3Dエフェクトを用い、「いかにも絵画の中に入り込んだ」と思わせるような別世界。124cm×170cmという、ブリューゲルの巨大な16世紀の絵画「十字架を背負うキリスト」。聖書の中の世界をデジタル技術でもって、再現したかったのだろう。・・・という気持ちは十分に伝わってくるんですよ。フランドル地方の牧歌的な人々を舞台に、キリストが生きたその時代、そののどかな世界とは裏腹に行われていた残虐な兵士たちの行為、キリストが十字架に架けられるまでの物語・・・。
その気負いをこの映画がちゃんと実現できていたら、どんなにか面白い試みになったことだろう!ところが実際は、他に類を見ないとても残念な仕上がり。絵のような世界をCG技術で作り上げようとするところで、かえって強調される「作り物」感。惨めなまでに陳腐だった。何十年も昔のハリウッドが使ったような背景絵画を、最新技術で作っているだけという座りの悪さ。邦題にあるような「動く絵」を強調したいがために、いったんフレームを決めたら、不自然なほどに動かないカメラ。かといって感動するような「これぞ!」というフレームの魔力は一切感じられない。「絵が動く」喜びの代わりにあるのは、単に普通の映像よりよっぽど面白みのない代物だった。ただただ悲しかった。才能って大切なものなんですね。絵っぽさを強調しているがために、自然の美しさも感じられない。「絵の世界観を映像で表現する」には、他の全ての映像が成しているような、そこに息づく自然の鼓動を描写するだけで良かったのかもしれない。なんだか途方もなく遠回りをして、結果何もかもが誤算だったのでは・・。壮大に膨れ上がる構想だけが素晴らしく、全てが空虚だった。醜い。何もかも。
音楽がかかり、人々が急に踊りだす。ただそれだけのシーンに感動を禁じえない映画好きの方も要るだろう。それがこの映画ほど不器用に描かれているのを初めて見た。なんて間が悪いんだろう。「ラスト、人々が踊りだすだけで映画的な感動を呼び起こす」というよくあるパターンを、狙ってはみたけど思いきり空振り。人々が踊る姿を見るだけで、今まで私は心が躍る思いをした、この映画を見るまでは。それは映画の魔力に騙されていたのかもしれない。映画のマジックが解ける瞬間を目の当たりにしてしまったようだ。ここまでバツの悪い作品を、ユーロスペースで見たのは初めてかもしれない。しかも、正月早々のことである。
※ストーリー・・・
ブリューゲルの傑作として知られる『十字架を担うキリスト』。キリストと群衆を描いた、この壮大な絵の中の世界にカメラは入っていく。そこに描かれた人々は、どんな日常生活をおくり、何を考えていたのか? ブリューゲルが、この絵に込めた思いを紐解いていく・・・
・ブリューゲルの動く絵@ぴあ映画生活